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【畠山理仁】選挙古今東西①

選挙を取材し続ける理由

「選挙は最高のドラマである」

 これが20年以上にわたって選挙を取材してきた私の持論だ。

 選挙の基本は「勝てば天国、負ければ地獄」。だから候補者も支援者も血眼になって当選を目指す。

 ドラマの登場人物は多種多様だ。スーツ姿の選挙コンサルタントもいれば、普段は何をしているのかわからないジャージ姿の人もいる。物静かな人もいれば騒々しい人もいる。若い人も年配の人もいる。

 もちろん候補者もさまざまだ。定番の選挙運動をする人もいれば、斬新すぎる選挙運動をする人もいる。なかには、まったく選挙運動をしないまま落選していく人もいる。

 「いったい、あなたがたは何のために選挙をやっているのか?」

 そんな素朴な疑問が選挙取材を続ける私の原動力になっている。

 思い起こせば、私は国内外でさまざまな選挙の取材をしてきた。

 海外の選挙でいえば、アメリカ大統領選挙、上院議員選挙、カリフォルニア州知事選挙、ロシア大統領選挙、台湾総統選挙。

 日本の選挙でいえば、衆議院議員総選挙、参議院議員選挙などの国政選挙はもちろん、全国各地の知事選挙や市長選挙、区長選挙、町長選挙などの首長選挙も見てきた。

 いまでは都道府県議会選挙、市区町村議会選挙にとどまらず、村議会の補欠選挙(無投票)にまで足を運ぶようになった。もちろん、福島県内の各種選挙も取材してきた。

 その経験から言えることがある。選挙は積極的に参加したほうが絶対に「得」だ。参加しなければ「損」をすると言っても過言ではない。

 今、日本人は収入の4割以上を税金や社会保障費として負担している。これは「国民負担率」という数字で表されるが、令和2年度の見通しは44・6%。このお金の使い道を決めていくのが政治家だ。

 幸いなことに、日本は独裁国家ではない。民主主義国家だから、有権者は自分たちの代表である政治家を選挙で選ぶことができる。18歳以上で日本国籍を有していれば、性別や学歴、収入や職業的地位に関係なく、誰もが同じ力の「1票」を持っている。実はこれはスゴイことだ。

 もっとわかりやすく言う。

 「無収入の人も年収1億円の人も平社員も社長も同じ1票しかない」

 それを誰に投じるかは有権者次第であり、1票でも多くの票を得た候補が当選する。これがルールだ。

 つまり、選挙に積極的に関わらないでスルーしていると、自分の理想とは違う社会がやってくる可能性がある。考えようによっては、かなりヤバイ。自分の収入の約4割をドブに捨てることにもなりかねない。

 今は国政選挙でも投票率5割を切る時代だ。地方選挙ではもっと低いこともある。つまり、「確実に選挙に行く人たち」の力が相対的に大きくなっている。貴重な1票を捨てている人は、あっという間に社会から切り捨てられる存在になるだろう。

 もし、「選挙はつまらない」と思っている人がいたら、ぜひ私の書いた『黙殺』を読んでほしい。全く別の世界があることに気づくはずだ。


 はたけやま・みちよし 1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大在学中より週刊誌などで取材活動開始。選挙を中心に取材しており、『黙殺 報じられない〝無頼系独立候補〟たちの戦い』(2017年、集英社、2019年11月に文庫化)で第15回開高健ノンフィクション賞受賞。

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