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核燃料の再処理は即刻中止・撤退すべき|【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中51

 当連載で東海再処理施設(注1)を取り上げるのは4回目(注2)です。大きく2つに分けて書きます。

 1、ガラス固化再開の準備と施設のリスク対策

 東海再処理施設で真っ先に説明すべきことは、高放射性廃液(注3)の安定化(ガラス固化)の再開準備状況でしょう。

 原子力規制委員会で本年3月25日に開催された第74回東海再処理施設安全監視チーム会合(以下、「74回チーム会合」と略)での原研機構の説明によると、高線量エリアでの機器解体や片づけ等を行う遠隔操作の治具であるBSM(両腕型マニプレーター/注4)の不具合は今年2月までに解消されたそうです(注5/同会合の「資料1―1」)。

 又、ガラス溶融炉3号炉の運転条件確認試験は今年1月までに終了しました。得られたデータを基に、運転を再開した際の管理指標の見直しを進めるとのことです(同資料より)。

 更に「朗報」が有ります。

 東海再処理施設では20の安全対策工事(注6)の内、今年3月末までに16の工事が完了したとのことです(注7)。

 継続している4つの工事も、2025年3月までに完了見込みとのこと。自然災害に対する安全性は、施工前に比べれば確実に高まっていると言えるでしょう。

 「朗報」と、カッコつきにしたのには訳が有ります。

 東海再処理施設の基準津波・地震動等は別掲の通りですが、東海再処理施設はウェットサイト(注8)として安全対策を実施しているのです。

 私は、リソース(人材・資機材・予算・時間)の配分の観点から、「ウェットサイトでもやむを得ない」と考えています。

 ドライサイトにすると、11㍍以上の津波に対応した防潮堤を設置するなど、工事が大規模・長期化します。

 リソースには限りがありますから、ドライサイトにして、相対的に大規模な工事に割くより「本来、進めるべき事」(=放射性物質の安定化や敷地外搬出)に優先配分した方が合理的でしょう。

 ですが、これは私の考えです。

 東海再処理施設は、ずば抜けて大きな潜在的リスクを有し、廃止措置も長期間(現時点での見込みでも約70年間)に及ぶのですから、安全対策の前提として、ウェットサイトか、ドライサイトか、立地自治体の住民を含む日本国全体で議論し、決定されるべきでした。(「国全体での議論の欠落」に関しては「国民の責任」が大きいと考えていますが、長くなるので、本稿では踏み込みません)

 2、ガラス固化に必要な部材・資材の供給が途絶えかねない現状

 74回チーム会合では、廃液のガラス固化体製造に関するリスク要因も説明されました。この中で特に重要なものが2つありました。同会合の資料1―1の19・20頁から要約します(傍点筆者)。

 「ガラス固化体の製造に必要なガラス原料は国内メーカー一社のみが製造しており、撤退リスクが高い。メーカーの体制維持を図ることを目的に、ガラス固化体製造の有無に関わらず、ガラス原料を毎年発注する」

 「ガラス溶融炉の製作に必要な接液レンガ(K3レンガ)は海外メーカー一社のみが製造しており、撤退リスクが高い。4号炉が必要になった際に備えて先行手配しつつ、代替品の開発等を継続する」

 これらの説明は重にして大です。東海再処理施設のみならず、再処理事業全体に関わります。

 メーカーの撤退リスクが現実のものになれば、東海再処理施設や六ヶ所再処理工場(日本原燃)に貯留されている高放射性廃液が安定化(ガラス固化)できず、廃液のまま置きっ放しになりかねません。

 貯槽が劣化した際に廃液をどのように移し替えるのか、漏洩リスクが高いまま、絶対に漏洩させない管理・監視が出来るのか(「絶対」は、まさに「神話」であり、有り得ません)、考え出すと、放射性廃棄物という悪夢に憑りつかれるかのような思いに囚われます。

 再処理や原発利活用に関する意見は様々あろうかと思いますが、廃液のガラス固化に必要な部材・資材の供給が途絶えかねないことが分かったのですから、リスク管理として「現状以上に、高放射性廃液を増やさない」ことを早急に決めるべきです。具体的には、再処理事業の中止、六ヶ所再処理工場の建設中止でしょう。

 最終処分どころか、安定化の見通しも不透明なまま、漏洩リスクの高い高放射性廃液の管理を次世代・次々世代に一方的に引き継ぐのは、リスク管理の面からも倫理面からも絶対に認めてはいけません。

 最後に、見出しから外れることをご容赦下さい。

 フクイチの「処理水」希釈放出(投棄)は、5月7日に累計で5回目が終了しました。これまでに放出された水量・放射能量は別掲の通りです。放出量は今後も追っていきます。


 注1 正式名称は「核燃料サイクル工学研究所」内の「再処理廃止措置技術開発センター」。2018年6月以降、廃止措置中。所管しているのは「国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構」(原研機構)。所在地は茨城県那珂郡東海村村松。

 注2 第25回(22年4月号)

 第35回(23年2月号)

 第47回(24年2月号)

 注3 放射能量は約300京ベクレル。主な含有核種は連載35回を参照。

 注4 Bilateral Servo Manipulator[バイテラル・サーボ・マニプレーター]の略。

 注5 

 注6 地震・津波・竜巻・火災対策等を目的とした工事。

 注7 

 注8 津波が敷地内に流入することを前提としたもの。津波を流入させないことを前提とする考え方は「ドライサイト」。 商用発電用原発はドライサイトとして安全対策(防潮堤の設置等)を講じている。

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