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【春橋哲史】フクイチ事故は継続中⑨―煽られず、とにかくタンク増設を

煽られず、とにかくタンク増設を

 東京電力・福島第一原子力発電所(以後「フクイチ」と略)では、放射性液体廃棄物(以後「汚染水」と略)が発生し続けており、貯留タンクの確保が不可欠です。

 汚染水の今後の扱いについて、経産省は「現行計画以上の(タンク)増設余地は限定的」「2022年夏頃にタンクが満杯」とのメッセージを繰り返し発し(※1/2頁)、東電も「国から(中略)基本的な方針が示されるものと認識しており、当社は、それを踏まえ、(中略)適切に対応し(後略)」(※2/35頁)を繰り返して、主体的に動こうとしていません。

※1
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/pdf/1008_sankou1.pdf

※2
https://www.nsr.go.jp/data/000334475.pdf

 一時は「(政府が)10月27日にも海洋放出決定へ」との報道も相次ぎました。私は、これは世論の反応を見る為の観測気球的なリークであった可能性も有ると思っているので、本稿で深入りはしません。

 寧ろ重要なのは、経産省・東電が大前提としている「タンクの増設余地は限定的」「22年夏頃にタンクが満杯」という条件が、本当に動かし難いものなのかという点です。

 本年10月22日時点のタンク設置容量・運用容量・貯留量は「まとめ1・2」の通りです(※3)。

※3 主として、

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/osensuitaisakuteam/2020/10/1-3.pdf

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/osensuitaisakuteam/2020/10/3-1-1.pdf

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/150326/150326_01_1_03.pdf

等に基づいて作成

現行のタンク設置計画では「20年12月末までに約137万t容量を確保」となっており、それ以降の増設計画は公表されていません。

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 ですが、私が東電の公表資料を基に、タンクエリア別に調べたところ、「複数のエリアで、フランジ(ボルト締め)タンク解体後の跡地利用計画が未公表」であることが確認できました(「まとめ3」を参照/※3)。これはブログにもアップしました(10月18日付/※4)。 

※4
http://plaza.rakuten.co.jp/haruhasi/diary/202010180000/?scid=we_blg_tw01

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 偶然にも、山本拓衆議院議員(自由民主党/北陸信越ブロック/当選8回)も同じことを調べたようで、ご自身のWebサイトにアップしています(10月30日付)。

因みに、私は山本議員とは全く面識がありません。自民党の国会議員と、部分的にせよ一致するとは思っていませんでした(苦笑)。

 又、まとめには含めていませんが、タンク内貯留水の増加量は減少傾向です。タンク内貯留水は、一時期、約1・5万t/月のペースで増加していましたが、2017年から減少に転じ、今年は約5000t/月に抑制できる可能性が高くなっています。

 今年は降雨量が少ないことに助けられている側面もありますが、これまでに実施されている複合的な「汚染水の増加抑制策」が効果を発揮しているようです。

 「(タンクの)増設余地は限定的」「22年夏頃に満杯」という経産省・東電の説明は、せいぜい「その可能性も有る」程度のもので、確定的とまでは言えません。

 私は、経産省・東電が、「環境中への放出(=海洋への希釈排水)已む無し」という結論に世論を誘導(≒誤導)しようとしているのではないかと疑っています。

 跡地利用計画が未公表のタンクエリアが有るのですから、先ずは、その活用の可能性を最大限に追求すべきです。

 経産省が頻繁に引用するALPS小委員会の報告書にも、「出来るだけタンクを設置するためには、(中略)敷地全体を徹底的に有効活用すべき」と書かれています(※6/13頁)。経産省は報告書を都合よくつまみ食いしています。

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/pdf/1008_sankou2.pdf

 放射性物質は、いったん環境中に放出されれば回収できないのです。経産省・東電の「誤導」とも呼べる発信に煽られたり、のせられてはなりません。

 フクイチの汚染水の今後の扱いについて、冷静な検証・議論の時間を確保する為にも、今はとにかく「タンク増設」を求めるべきです。

 そもそも、安全神話という誤れる前提で核発電の利活用を推進してきたのは経産省です。その経産省が、今度は、汚染水の扱いについて約9年間を空費した揚げ句、必ずしも確定的でない見通しに基づいて、煽り紛いのメッセージを発信しているのです。経産省は、世を惑わす行為を繰り返していると言えます。

 最後に報道関係の皆様へ。

 公表資料を自らの責任で確認せず、経産省・東電のメッセージを検証無しに拡散するのも、世を惑わす行為です。今すぐにやめて下さい。


春橋哲史

 1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。


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