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報道への評価と、汚染水の増加量―【春橋哲史】フクイチ核災害は継続中㉓

 今回の記事では、大きく二つのテーマをお伝えします。

 東京電力・福島第一原子力発電所(以後「フクイチ」と略)で起きた過酷事故は、世界最大の核災害であり、収束作業は継続中です。投じられる費用・人的資源に終わりは見えず、今もなお、放射性セシウムは建屋から放出され続けています。構内で起きていること全てが、私達の生活に密接に関わっています。

 そのような現状を社会が共有するのに、報道の果たす役割は重要です。フクイチの現状については、東電が記者会見等で説明しており(その説明が十分で明快なものなのかという疑問は有りますが、本稿では立ち入りません)、記者との質疑の中で、東電が発表から省いていたことが明らかになった例も有ります。

 東電に質問し、発表内容や明らかになった事実を伝える報道も、広い意味ではフクイチ核災害の当事者です。そういう考えから、私は、東電記者会見と原子力規制委員長記者会見へのメディア別の参加回数を年ごとに集計しています。

 「まとめ1-1・2」は、2021年の参加回数です(2020年の参加回数は、連載第13回で取り上げています/注1)。

 両方とも上位なのは共同通信くらいです。東電会見へのおしどりマコ氏の参加率は圧倒的です。組織力の有る所謂「マスコミ」と呼ばれる報道機関が、おしどり氏の後塵を拝していますが、恥ずかしくないのでしょうか? 

 原子力規制委員長の記者会見で新潟日報が上位なのは、KK(柏崎刈羽原発)に関する質問が多かったからです。新潟日報は、まさに「地元」の問題を質問しています。それに比べ、福島県内の報道機関はどうしたのでしょうか?

 「記者レクで情報を取っている」「個別取材している」という言い訳は好ましいものではないでしょう。記事化のプロセスを透明化する義務はメディアにも有りますし、質疑が見えなければ記者の力量も問題意識も見えません。

 大きなテーマの二つ目です。

 2021年のフクイチの汚染水の増加量・貯留量がまとまりました(まとめ2/東電公表の「水処理週報」に基づいて作成[注2])。

 タンク内貯留量の年間増加量は約4・7万㌧(月間平均3900㌧)で、過去最少でした。年間増加量が最も多かった2014年に比べ約4分の1です。

 色々と批判もされていますが、東電の汚染水増加抑制策は着実に効果を上げていると言えます(私は、凍土方式遮水壁は「費用対効果が悪かった」という立場ですが、本稿では立ち入りません)。

 今後、汚染水対策に関して取り組むべきは大きく二つでしょう。

 一つは、タンク用地の確保・タンクの増設です。

 増加量が減少しているとは言え、汚染水が増えるのは止められていませんから、今後もタンク貯留水は増え続けます。どんな処理を施そうとも、核災害で生じている放射性液体廃棄物ですから、環境中への放出は論外です(詳細は連載第1回を参照/注3)。地上でのタンク貯留の継続が大前提とされるべきです。

 二つ目は、建屋への地下水の流入経路と流入量の特定です。

 1~4号建屋は、2020年末までに1~3号原子炉建屋以外の建屋がドライアップ(滞留水除去・床面露出状態の維持)されましたが、地下水が恒常的に流入している箇所は見つかっていません。ということは、流入個所は最も線量が高く、最もドライアップが困難な1~3号原子炉建屋でしょう。

 より確実・合理的に地下水の流入を抑制する為にも、「(地下水の)流入経路」と「経路ごとの流入量」を特定した上での対応が望まれます。

 「超」が幾つもつくような難易度の高い課題ですが、高線量の現場であることに留意しつつ、1~3号原子炉建屋下層階の調査が進められるべきでしょう。

 注1

 本誌2021年4月号

 注2

 注3

 本誌2020年4月号

春橋哲史 1976年7月、東京都出身。2005年と10年にSF小説を出版(文芸社)。12年から金曜官邸前行動に参加。13年以降は原子力規制委員会や経産省の会議、原発関連の訴訟等を傍聴。福島第一原発を含む「核施設のリスク」を一市民として追い続けている。

*福島第一原発等の情報は春橋さんのブログ


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