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【政経東北】「帰還困難区域」政策の問題点―巻頭言2023.2

 国は原発事故に伴い設定された帰還困難区域のうち、「特定復興再生拠点区域」(以下、復興拠点)から外れたエリアを「特定帰還居住区域」(仮称)として設定し、住民が戻って生活できるように環境整備をする方針を固めた。1月上旬から中旬にかけ、地元紙、全国紙、テレビニュースなどで報じられた。

 帰還困難区域は文字通り、戻って生活をすることが難しい区域である。放射線量が高いことがその要因だ。ただ、地元からの要望を受け、同区域のうち比較的放射線量が低いところを復興拠点として定め、除染・環境整備を行い、避難指示を解除して居住できるように制度化した。すでに、大熊、双葉、葛尾3町村で復興拠点の避難指示が解除された。今年春までに富岡、浪江、飯舘3町村の復興拠点も解除される予定。ただ、復興拠点の面積は約27平方㌔で、帰還困難区域全体の約8%しかない。

 一方、それ以外で帰還困難区域の大部分を占めるエリアは「2020年代の避難指示解除を目指す」といった大まかな方針は示されていたが、具体的なことは決まっていなかった。それが今回、方針が示されたということだ。各報道を見ると、復興拠点と同様、地元自治体が計画を定め、それが国に認められれば除染やインフラ整備などが行われる。そのうえで放射線量などの要件を満たせば避難指示解除となる流れのようだ。

 ここで問題になるのが2つ。1つは放射線量が高いところに住民を戻すのが正しいのかということ。もっとも、対象住民(特に年配の人)の中には、「どんな状況であれ戻りたい」という人も一定数おり、それは当然尊重されるべき。

 ただ、そこで2つ目の問題が出てくる。それは帰還困難区域の除染・環境整備は全額国費で行われていること。国は、①東電は帰還困難区域の住民に十分な賠償を行ったこと、②帰還困難区域の復興は「まちづくり」の観点から実施すること――の主に2点から、除染費用などは東電に求めないことを決めている。原因者である東電の責任(負担)で環境回復させるのであれば別だが、そうせず国費(税金)で行うとなれば話は変わってくる。利用者が少ないところに、多額の税金をつぎ込むことになり、本来であれば大きな批判に晒されることになる。ただ、原発事故という特殊事情があるため、そうなりにくい。だからと言って、それが許されることにはならない。

 原因者である東電の責任(負担)で環境回復させる、あるいは恩恵を受ける人に見合った財政投資にとどめる、そのどちらかしかない。それが大原則だ。
(末永)

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