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多様な人々を束ねチームの一体感を醸成する福祉サービス業(前編)

 施設内で障がい者が作業をする福祉サービスでは、一般企業よりも多くの課題に取り組む必要がある。売上獲得だけではなく、職員のモチベーションと障がい者の利用率の両方を高めねばならない。鳥取市出身の福田社長(62歳)が経営する株式会社セフニアでは、顧客、職員、障がい者の三者とどのように向き合っているのだろうか。


株式会代セフニア
代表取締役 福田等
聞き手:北村真吾/中小企業診断士
取材:2019年7月30日 掲載:旬刊政経レポート2019年9月15日号)



御社の事業内容を教えてください。

 当社は福祉サービス業をメインにいくつかの事業を展開しています。福祉サービスというと一般的にはお年寄りの介護をイメージされるかもしれません。しかし当社は高齢者ではなく、幼児から成人を対象にしています。
 具体的には、0歳から18歳までの障がいを持つお子さんに来所いただくセフニアキッズ。成人の障がい者を集めて内職作業をするセフニアワーク。自宅での生活を支援するセフニアケアステーションなどです。平成29年には、さらに重度の障がい者も利用できる生活介護も始めました。
 小さな会社ではありますが、子どもから成人になるまでずっと安心してご利用いただけるサービスを提供できていることが特徴です。


福祉サービスをする以前は何をされていましたか。

 当社は平成10年に人材派遣会社として設立されました。設立当初は、PHSや携帯電話が普及し始めたタイミングだったこともあり、家電量販店やケータイショップに販売員を派遣する事業をしていました。
 事業としては順調だったのですが、小泉政権の時期から派遣法が厳格になり、これだけでは将来的に厳しくなると危機感を持ち始めていました。加えて、大学で福祉を学んでいた私の息子が当社に戻ってくることになっていました。福祉の業界しか知らない息子を当社で活躍させるため、平成23年に新たに福祉事業をスタートしました。
 人材派遣業から福祉サービス業へと大きな事業転換です。いくら息子が福祉関係の大学を卒業するとはいえ、経営者の私が福祉の仕事をまったく知らないというわけにはいきません。そこでヘルパー免許を取るために学校に通い始めました。その時の私は56歳。周りの生徒も実習先の施設職員もみな、私より若い人ばかりです。たぶん私を「この人はリストラされたのかな。かわいそうに」と思っていたことでしょう。
 今でも人材派遣は営んでいますが、今後は福祉サービスにより注力していく予定です。


多様な事業を展開されていますね。御社が他企業から仕事を受注するセフニアワークについて詳しく聞かせてください。

 これは就労継続支援施設B型です。一般的に「就B(しゅうびー)」と呼ばれるもので、障がい者が施設に集まり内職などの作業を通じて就労に向けた訓練をする業態です。実際の作業は一般企業から施設が受注し、利用者(障がい者)はその作業工賃を受け取ることが特徴です。


セフニア1-2

近所の金属部品製造業から受注した作業の様子。作業しやすいよう現場が工夫されている。


 就Bを運営する上で重要なのは、利用者さんが作業可能で、かつ、できるだけ作業単価が高い内職を受注してくることです。せっかく施設に来ても、時給の低い仕事しかない、もしくは、そもそも仕事がないとなると当社を利用する意味がなくなってしまいますものね。利用者さんの仕事を確保するため一般企業に営業、提案することが施設には常に求められます。
 この事業が軌道に乗るまで、息子には電話帳を元に電話営業をさせるだけではなく、飛び込み営業にも行かせました。お陰さまで今では電鉄や家電量販店、日用雑貨メーカーなど大手企業から仕事が獲得できています。近所の金属部品製造業からのも受注もあります。これはお互いに顔の見える距離なので、特に安心して仕事のやり取りができます。


経営者と職員の二者だけではなく、施設を利用する障がい者も含めた三者が一体となり事業を展開せねばなりませんね。組織運営には何が求められますか。

 利用者さんは、ここに通うのが楽しいと思わないと施設に来ません。この作業がしたいと思わないと作業はしません。私たちが「施設に来なさい」「これをやりなさい」といくら命令しても説明しても、心から納得せねば彼らは絶対に動きません。
 そういう意味で、健常者に比べて障がい者は頑固なものです。彼らが楽しく納得して働ける施設になるには経営者1人のがんばりでは無理です。職員の理解と協力が求められます。当社では経営者、職員、利用者が心理的に一体感のある「垣根のない会社」であるよう心がけています。
 施設に来る子どもたちに私は、「おじいちゃん先生」と呼ばれています。社長と呼ばれるよりうれしいものです。


後編では一体感を作り出す福田社長の取り組みについてお聞きします。


(後編に続く)



株式会社セフニア
代表取締役:福田等
事業内容:福祉サービス業、人材派遣業
所在地:大阪市西区安治川2-2-13 
従業員数:30人
資本金:2000万円


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