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「外側上顆炎に対する一考察」#書く習慣148

日々の診療お疲れ様です。TROT(トロット)です。
今日は難渋しやすいテニス肘に関してまとめてみました。



外側上顆炎とは?

・外側上顆炎は肘関節外側部痛を主訴とする疾患である。病態としてはECRB起始部の付着部症が考えられている(*1)


疼痛出現のタイミング

・重い物を持ち上げる、雑巾を絞る、ビンの蓋を開けるといった力強い把持を必要とする動作で疼痛が出現する(*1)

・別名テニス肘とも呼ばれるがテニスと関連のない症例も多く、最も多くみられた発症原因は重量物の運搬時であるとの報告もある(*1)


雑巾絞りと外側上顆炎

雑巾絞りを分解していく。

疼痛側の手関節は掌屈するパターンと背屈するパターンが存在する


①掌屈型外側上顆炎

・伸長性疼痛、と考えられる

・回外>掌屈>尺屈の運動によって運動が構成されている


②短縮型外側上顆炎


・短縮性疼痛、と考えられる

・回内>背屈の運動によって運動が構成されている


「外側上顆炎に対する一考察#書く習慣35」より

ECRB

・肘の屈伸角度は筋長にあまり関与しない

・前腕回内位よりも回外位の方が伸長位になる

・手関節は背屈よりも掌屈位の方が伸長位となる


・(短縮位)前腕回内/背屈 ↔︎  (伸長位)前腕回外/掌屈 の反復収縮による運動が必要

手関節背屈制限による代償運動が出ていないかチェック

 → 回内筋群の過活動(回内筋群のストレッチング)

 → 肘屈筋群の過活動運動(肘屈筋のストレッチング)

前腕回内制限による代償運動が出ていないかのチェック

 → 手関節背屈筋群の過活動(背屈筋群のストレッチング)

 → 肩関節外転筋の過活動(肩外旋筋の筋力強化)

姿勢と疼痛

Thomsen時の痛みをVASで評価し、その痛みが肩関節の外旋によって疼痛変化するかを調べた文献(*2)

(*3より引用)

・姿勢により疼痛の変化がある例は12/15例

・外旋と疼痛の関係性がある例は11/15例

 →姿勢により上肢に負担が増加し、疼痛を引き起こす一つの要因となっている可能性が考えられる

・座位により疼痛が増悪する例は8/15例

 →座位姿勢が上肢にかかる負担が一番強く、不良座位での仕事等が負担になっている可能性が考えられる

・上腕骨外側上顆炎においても姿勢の関与による負担増加が考えられる

①コアスタビリティの低下や下肢の安定性低下により、不良姿勢が生じる

②不良姿勢により、上部体幹部、大胸筋、大円筋の負担が増大し、外旋角度が低下

③肩甲骨周囲の緊張増加により、2関節筋(上腕二頭筋、上腕三頭筋)の緊張が増大し、肘関節の単関節筋の収縮が入りづらくなる

④更に多関節筋が優位な状態になると、肘関節の安定化は得られず、靭帯や筋への負担が増加することにつながる

⑤以上のストレスを受け疼痛に繋がったと考えられる

「上腕骨外側上顆炎と肩関節可動域の関係」より

・外側上顆炎患者の46.3%が患側の肩関節 ROM 制限を認めていた

・肩関節 ROM 制限の内訳として屈曲 4名(12.5%)、外転 5名(15.6%)、外旋 5名(15.6%)、内旋 31名(96.8%)と肩関節内旋制限の症例が多かった

・J. H. Ab bot tは「 上腕骨外側上顆炎患者の患側の肩関節外旋角度は健側と比較して有意に低値、肩関節内旋角度も健側よりも低値」と報告している

・今回の調査では、肩ROM制限が上腕骨外側上顆炎の原因なのか結果なのか不明だが、

①はじめに肩関節回旋制限がある場合、肩関節回旋制限を肘関節で代償することで負担がかかり上腕骨外側上顆炎が生じやすいのではないかと思われた

②はじめに上腕骨外側上顆炎がある場合、運動時の肘関節痛を肩関節回旋で代償することで回旋筋群の緊張が促進され、肩 ROM 制限に繋がったのではないかと思われた

参考文献


*1:ECRLの機能に着目し運動療法を実施した上腕骨外側上顆炎の一例

*2:上腕骨外側上顆炎に対する姿勢からの1考察


*3:上腕骨外側上顆炎の診断におけるThomsenテストとは?


*4:上腕骨外側上顆炎と肩関節可動域の関係