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骨頭の上方偏位の評価〜安静時の場合〜

肩のトラブルの代表例として、インピンジメント症候群があります。この症候群の原因としては、骨頭が上方に偏位し、第2肩関節に圧迫が生じることが知られています。

この知識は広く知られており、養成校でも学ぶ内容です。しかし、「骨頭が上方に偏位している」という状態をどのように明確に判断すればよいのでしょうか。この判断方法について、ここで整理していきましょう。

インピンジメントの原因となる上方偏位には、2種類のパターンがあります。これを理解することが、具体的な判断方法を解説する上での前提条件です。

1️⃣ 安静時からすでに骨頭が上方に偏位している状態
2️⃣ 安静時は適切な位置にあるが、動かす際に上方に偏位する状態

今回は、1️⃣の状態の有無を判断する方法に焦点を当てて解説します(2️⃣の解説は別途行います)。


♦︎上方の関節包の張力を利用する

関節窩と骨頭の位置関係を判断するためには、関節包の張力を利用する方法が効果的です。以下の画像をご覧ください。

関節包が伸ばされて張力が発生すると、その反作用として戻る力が生じます。この力は骨頭を反対方向に押し返す効果を持ちます。

具体的に上方関節包に適用すると、上方関節包の伸張は骨頭を下方に押し下げる力を生むことになります。このため、上方関節包を伸ばすには、肩を内転させる動作が必要です。つまり、肩を内転させることで、上方関節包が伸張され、骨頭は下方に押し返されるわけです。

肩の中間位を作った際に肩甲骨が挙上する代償反応が現れたり、痛みや緊張が感じられたりするなど、不快感や違和感がある場合、肩を内転させた時にこれらの反応や違和感が消失すると、関節窩に対して骨頭が上方に偏位していると判断できます。

♦︎具体的なハンドリング方法

それでは、セラピストが具体的にどのようなハンドリングを行うべきかを見ていきましょう。まずは、以下の画像をご覧ください。

挙上30-40°の設定

👆の画像は、挙上30-40度位で保持する直前を示しています。この肢位では、上下の関節包の張力に差がないため、骨頭が上方に偏位している場合には、肩甲骨の挙上や周囲筋の過緊張などの代償が発生します。

挙上15-20°程度の設定

挙上角度を15-20度程度に変化させていくと、相対的に上方の関節包の張力が高まり、骨頭が下方に押し出されるベクトルが発生します。初期設定である安静時に骨頭が上方に偏位していれば、上方の関節包の張力がそれを中和し、骨頭が中間に戻ります。

挙上30-40度程度での保持時に見られた代償が、内転させることで解消される場合、骨頭が上方に偏位していると判断できます。

♦︎よりハンドリングの精度を高める方法

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