骨盤の回旋評価〜アライメントと安定性を分ける〜
身体にトラブルがある場合、骨盤の回旋偏位が頻繁に見られます。骨盤、特に仙腸関節や恥骨結合は、荷重伝達において重要な役割を担いうため、骨盤の回旋偏位を評価することは、臨床的に非常に有効です。
骨盤を評価するには、アライメントと安定性という2つ視点から見る必要があります。
♦︎原因にも結果にもなる骨盤の向き
骨盤の回旋は、腰痛をはじめとする様々の症状の原因になり得ます。骨盤の回旋を修正により主訴を再現する動作の痛みが軽減される場合は、骨盤の回旋が原因となり、愁訴が結果という解釈になります。
一方で、骨盤の回旋を是正が逆に症状の悪化を招く場合もあります。その場合は、その痛みを出さないように骨盤を回旋することで逃がしていたと言う解釈になります。
なので、「骨盤の回旋偏位=悪いこと」という決めつけは危険になります。しかし、観察のみで骨盤の回旋が原因なのか結果なのかを判断することは難しい場合がのみ事実です。試験的に修正してみてもし悪化するのであれば、一度元に戻して改めて考える必要があります。
いずれにしても、骨盤の回旋偏位を判断して修正できることは、患者さんの状態把握をする上で非常に有用です。
♦︎殿筋の緊張は骨盤が不安定にあることを示唆
具体的な手法を解説する前に、骨盤の荷重伝達機能とその関係性を「殿筋の緊張」という文脈で見ていきます。
大殿筋や中殿筋、梨状筋などは過緊張を起こしやすく、その緊張が「悪」と判断されて、リラクゼーションが選択される場合が多いです。しかし、特にトレーニングや得意的な使用をしていないにも関わらず、緊張が上がっている場合は注意が必要です。
殿筋群は大腿骨と骨盤(仙骨や腸骨)を連結するものですが、重力下で活動する場合、大腿骨に対して骨盤を位置をコントロールする機能があると考えることもできます。
つまり、殿筋群が過緊張していることは、骨盤帯をアライメントに不都合があり、安定性を担保するための苦肉の策であるパターンがあります。
♦︎骨盤が向いている方向を確認する方法
ここまで解説したものを踏まえて、具体的な骨盤の評価方法を解説します。まずは、骨盤の向きを確認する方法から始めて行きます。具体的なステップを👇の画像で示します。
順番に詳細を見ていきます。
①セラピストが骨盤に対して正体する
患者さんの身体の評価では、セラピストの固有感覚をセンサーにします。セラピストの最初の姿勢が重要になるため、患者さんに触れる前に自分自身の身体が真っ直ぐになっているかを確認します。
具体的には患者さんの骨盤に対して、自らの胸骨を真っ直ぐに向けるように意識します。その後、自らの胸骨の向きを自動運動として左右に変えてみます。ポイントが頸部や骨盤は回旋させずに胸骨のみを回旋させることです。
自分の身体位置が正中にあれば、胸骨の回旋に左右差が生まれることがありません。もし、どちらかの回旋に固さを感じるのであれば、自分自身の骨盤の位置や身体の向きなどを改めて確認してみてください。
②骨盤のランドマークを触れて向きを判断する
自分自身の身体が正中化したら次にランドマークを触れていきます。ここでは、ASISを例に方法を解説します。まずは👇の画像をご覧ください。
ASISを触れるときは、肩や肘の角度も左右で統一します。セラピストの姿勢は正中化しているので、上肢の角度を統一することでASISを触れる指は空間的にほぼ同じ位置にあることにあります。
この時にASISと触れている指の位置関係や圧の深さのバランスが異なると、骨盤帯に変異があると判断できます。
③体幹の回旋などを使って骨盤の反応を確認する
骨盤の向きASISを触れながらセラピストの体幹を動かすことで骨盤の反応も確認することができます。
ASISを触れている指の圧や位置はそのままに胸骨を回旋させたり側屈させたりすると触れいている骨盤に対してベクトルを入力することができます。その時の指に返ってくる反応で骨盤が動く許容度などを確認することができます。
骨盤帯の変化は、仙腸関節やL5/Sでのもの、前額面や水平面上での変化など部位も方向も様々なので、ASIS以外の部位をランドマークにしたりセラピストの身体を動かす方向を変化させながら、今現在の骨盤の状態を確認していきます。
例えば、左右の圧のバランスが違うと👇のような感覚を得ることができます。
圧のバランスに違いを感じなくても、胸郭を回旋させると一方の指は何も感じないのにもう片方の指には皮膚がズレるような感覚(触れているランドマーク部分の動きが少ない)を得ることもあります。
状況によって必要な操作や得られる感覚はまちまちですが、自分の身体を基準として変化を追っていくことが重要です。
♦︎骨盤の安定性は殿筋の緊張変化で評価する
これまで解説したのは、骨盤の回旋偏位の有無や動きのキャパシティについてでした。前述した通り、骨盤の向いている方向だけではその良し悪しを判断することはできません。
そこで、もう一つの評価指標として骨盤アライメントと殿筋の緊張変化を紹介します。👇でその概要をご確認ください。
それぞれ順番に解説します。
①骨盤を左右から圧迫し筋緊張を確認
殿筋群の緊張を左右から触れて確認します。大殿筋や中殿筋、あるいは梨状筋などがその対象です。
左右を比較して、筋緊張の左右のバランスをとらえます。
②胸骨の回旋で圧迫のベクトルを変える
左右の筋緊張を確認して左右があったとしましょう。その触れている位置から自らの胸骨を回旋させるようにして圧迫のベクトルの左右の位置を修正します。イメージは👇の画像です。
このように左右から入力するベクトルを位置を前後にズラすことで、骨盤内部で回旋する力を発生させます。左右どちらも確認しておくと良いです。
③殿筋の緊張バランスが揃うと安定化
ベクトルの位置を修正した時に、左右で異なっていた殿筋の筋緊張が一致した場合、その方向が骨盤としての安定化が図れている方向になります。
♦︎これまでの内容を動画で解説
今回の内容を動画解説します。
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