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可動域制限や痛みが改善されない原因はセラピストのハンドリングかも?を認識する

術後の後療法や保存加療にかかわらず、可動域や痛みがなかなか改善しない症例に出会ったとき、皆さんはどのように行動しますか?

解剖学や運動学的な知識を増やしても、教科書を読んでも、論文を読んでも、「なかなか状態が改善しない」ということって臨床上をとても多いですよね。改善しないだけならまだしも、逆に状態を悪化させてしまい患者さんをロストしてしまうことは、患者さん自身もセラピスト個人的にも施設としても損失です。

私自身、若き日の臨床で「自分が介入することで逆に動きが悪くなる」という事例を経験したことがあります。この苦い経験からたくさんのことを学びましたが、その中でも最も大きな学びは”問題解決できない原因はセラピストのハンドリングにある”ということです。知識があるとかないとかではありません。そもそも触れ方・動かし方が不適切であることが問題であり、気遣いないうちに問題点を拡大させていることもあります。

具体的にどんな場面があるのかを、これまで経験した症例を通じて部位別に見ていきましょう。

♦︎肩甲上腕関節の後方のtightnessの場合

上腕骨頸部骨折後にORIFを施行し、数ヶ月後に抜釘をした方がいました。その方は骨癒合はしたものの、可動域制限(挙上120-130°程度)の残存があったため、理学療法が処方されました。

私にこの患者さんの介入経験はなく、抜釘の初回のみ介入しました。状態としては、肩甲上腕関節における骨頭の後上方の制限が強く、同方向への負荷を減ずるために肩鎖関節のアライメントを崩している所見が見えました。

術後のハンドリングや肩甲上腕関節への介入が不適切であったため、肩甲上腕関節の不安定性が助長され、その不安定性に由来する関節への負荷を減ずるために肩甲帯のアライメントを崩し、肩甲骨の動きも悪くなった。この肩甲骨の動きが悪いことに、本質的なハンドリングと肩甲上腕関節の問題がブラインドされてしまい、根本解決に至らなかったのでしょう。

介入の初期から、適切なハンドリングで肩甲上腕関節への負荷を最小限にしながら介入できたのであればもっと肩の動きがスムーズだったように思います。

♦︎足関節背屈制限の場合

足関節三果骨折や脱臼骨折後→ORIF後の可動域訓練は特にハンドリングスキルの有無で結果が大きく左右します。多くの場合は背屈制限が生じたら、下腿三頭筋のストレッチや背屈時の距骨の後方すべりを誘導するといった介入をすることが多いです。

このような大きな外力が発生している足部は、ストレッチや距骨のmobilizationのみでは有効な改善に至らないことが多いです。また、数字的な可動域が改善したとしても、歩行になると歩幅が取れなかったり足部に痛みが出たります。

足部の背屈で重要なのは、セラピストは姿勢を距腿関節を介して患者さんの下肢の中心に対して正対することです。理由は、腓骨筋腱や足趾屈筋・後脛骨筋腱の弾性の影響を浮き彫りにするためです。

足部を下肢の中心に対してまっすぐ押していくと、足部の動く方向が途中から変わってしまったり、背屈の最終域まではまっすぐ動くが戻る時に向きが変わってしまう場合があります。筋や腱の弾性などに左右差があると、足部を戻すときに中間位で戻せなくなるんです。

このような細いかい反応を感知することができる、他にも気づける反応が出てきて、適切な治療介入の一助にすることができ、患者さんがよりよく改善していくことが期待できます。

♦︎膝関節屈曲制限の場合

UKAやTKA、HTOのように術前後でアライメントが大きく変化するような術後は、特にハンドリングが重要です。脛骨の操作一つとっても、重力の影響を減ずるように骨の動きを誘導するものと、重力に合わせて更なる加速を作るように押す形で操作するのでは、膝の反応は大きく変わります。

組織には粘弾性という物性があり、これは速度に依存する性質です。さらに元々のアライメントから大きく変化しているので、膝蓋腱や周囲靱帯のテンションも弾性もばらつきが大きいです。特に膝蓋腱は、内側と外側に弾性の違いを認める場合も多くあります。

これらの影響を無視して、硬いからストレッチすることや大腿四頭筋のストレッチをやっていてもなかなか変化しません。もし変化したのであれば、介入の効果とは言えないかもしれない。

ちょっとした工夫をするだけで身体は変化します。まさに北風と太陽のように必要な刺激を入力することで身体は反応します。無理やり変えようとすると反対に身体は防御してしまいます。


今回は以上になります。
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