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ハンドリングのスキルアップに必要な7つの基本知識:その2️⃣【ハンドリングとは治療者と患者の身体が等速運動することである】

ハンドリングとは、治療者側と患者側の2つの物体が動く現象です。地球上では、"力学"という理の中で物体が動くので、ハンドリングにおいて、身体という物体が動く時にも"力学"が適応されます。

この記事では、力学を考えることがハンドリングのスキルアップに大きく貢献してくれることを解説します。力学と聞いいて「よくわかんないからもういいや」と思わないでください。難しい話を理解する必要はありません。

臨床において、もっと臨床的な介入をしたいと考えている方はぜひ確認してみてください。

それでは、本題スタートです。


経験的な知見の整理してくれた物理学者のyoutube動画

これまでの臨床でハンドリングの研鑽を続けてきて、経験的に様々な知見を得てきました。最初は小さな違和感がある程度だったものが実は重要な情報を示唆するものだったと気がつき、自分の中で解像度を上げる努力もしてきました。

そんなとき、ある物理学者がニュートン力学を開設するyoutube動画をみて、自分のハンドリングのスキルを整理できました。👇にそのリンクを貼っておくので興味ある方がぜひご覧ください。

詳細はこちらの動画をぜひ見てください。内容的にもすごく興味深く面白いです。

私が視聴して、ハンドリングと結びつけられると考えたのは以下の2点です。
・自然科学における「わかった」の考え方
・慣性の法則の本当の理解

それぞれ私なりの視点で解説します。詳細は動画を見てくださいね。

自然科学のおける「わかった」の考え方

物理学者の中では、完成された数式を使って解くことができればそれは「わかった」と考えるようです。

「なんでA=Bなの?」「じゃあ、なんでB=Cなの?」と問い始めると終わりがありません。観察されて計算した結果、明確な結果ができるのであればそれはわかっていると判断します。

ハンドリングにおいて、持ち方は動かし方の明確なエビデンスはありません。しかし、多くの人は臨床的・感覚的に「こうやった方が上手くいく」「なんとなくこうやった方がやりやすい」みたいなものがありますよね。

観察できて結果が出るのであれば、自然科学的に考え方としてはエビデンスがあると言ってもいいと思います。

慣性の法則の本当の理解

以前、学生時代に習った慣性の法則は、「動いている物体は動き続け、止まっている物体は止まり続ける」という習い方をしました。しかし、先の動画はこの表現は厳密いうと少し違っていると話されています。

2つの物体(AとB)があるとします。この2つがお互いまったく同じ速度で動き続ける(等速運動)とします。その条件であれば、どっちが動き、どっちが止まっていることを厳密に規定できないというのです。つまり、2つが条件として等しいということです。

日常生活的にイメージすると、走っている電車の中で立っているとき、その電車が等速で動いているのであれば立っている人間はその速度を感じません(これを等価というようです)。しかし、加速していたり、減速したりと速度に変化がする(加速度が発生する)と、等価の関係が崩れて中の人間も見かけの力を感じることになります。

この等価という言葉、とても重要です。次からはハンドリングと等価について解説します。

ハンドリングとは、治療者と患者の身体が等速運動すること

ハンドリングはセラピストが患者の身体を他動的に操作することです。患者の身体に防御的な緊張や筋性固定がない場合、他動操作時はセラピストの手と患者の動かされる部位が同じ速度(等速)で動いていることになります。

先ほどの物理学者の先生の話を思い出してください。等速で動いている場合は、どちらも価値として等しいのです。

つまり、等速であるハンドリング中は、セラピストの身体と患者の対象部位はお互いが動いてない関係であるともいうことができます。

等速で動いている電車の中なら立っていられるように、等速で動くセラピストの手に持たれている患者の身体も安定しているんです。セラピストの側も患者側も状態や動きが適切であれば、ハンドリング中に互いの間には変化を感じることはありません。

関節は直線運動にはならず回転運動になるので、その軌道上が外れずに上手く操作できている、かつ、患者の関節やその周囲に問題がなけれがどちらも価値が等しくなるのでセラピストの手も患者も明確な変化を感じることはないんです。

このような状態でハンドリングできている状態が理想的なハンドリングであれり、正確な情報収集に繋がります。そしてこれがハンドリングの本質であると自分が考えてきます。

操作時に手で感じる変化は加速度は発生したことを示す

等速運動を意識したハンドリングをしていると、時にセラピストと患者の身体の間に何か違和感を感じる場合があります。その場合、どちらかの身体に加速度や張力など、別の力が発生していることを示唆します。つまり等速運動から逸脱した状態です。

等速運動でスムーズに動いていたところからズレは、セラピストは側が正確な動きの軌道から外れた場合か、患者の身体に問題がある場合です。

セラピストが自分の身体の動きを振り返り、動きの軌道自体に問題がないのであればおそらくそのズレは患者さんの問題と考えることができます。逆にセラピストの軌道がズレており修正後にまた等速運動に戻るのであれば、そのズレはセラピストの問題といえます。

関節の理想的な状態は、関節が動き得るどの軌道であっても(肩関節で言えば中間位、屈曲、外旋、水平内転など)、その時のハンドリングは等速になることです。

最初の軌道では等速であっても軌道をズラした時に等速運動から逸脱する場合は、その軌道に対応した組織や関節部位に問題はあるかもしれません。関節が持っている軌道は一つではありません。それぞれの軌道で等速運動ができるかどうか、ズレがないかなどを見ていくことがハンドリングにおける情報収集で重要になります。


今回は、ハンドリングが等速運動で考えると情報収集のクォリティが上がることを解説しました。関節の状態に問題がなければセラピストと患者の身体の間は等価の関係になります。

しかし、どちらかの動きに問題がある場合、この等価の関係が崩れるので違和感やズレという感覚になって返ってきます。

セラピストは自分自身の身体操作を安定させることができれば、ハンドリング時の違和感は基本的に患者の身体の問題として考えることができます。慣れるまではセラピストの操作の問題が違和感につながることもあるため注意は必要です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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