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安定する肩の外旋操作〜前腕への気配りとセラピストの姿勢〜

外旋は痛みが出やすく過緊張を引き起こしやすいため、介入に難渋することが多いですが、ちょっとした気配りで外旋時の動かしにくさは解消することができます。

外旋の適切操作スキルは、治療効果を大きく伸ばすことができるために肩の治療を行うセラピストにとっては重要です。操作スキルを身につけて、臨床力を高めてきましょう。

今回の内容は、特に痛みがまだ残存している時期や術後など、急性期や急性期を脱しきれていない時期に有効です。


♦︎開始肢位は肩甲骨に合わせる

ハンドリングにおいては、開始する際の肢位が非常に重要です。開始ポジションが不適切だと、次の動作がずっと取りにくくなります。反対に、治療時に開始肢位への注意を集中することで、関節の動きは大きく改善されます。外旋操作における開始肢位のキーポイントは、関節窩の向きとセラピストの身体の傾きを一致させることです。

関節窩の方向に対して胸骨の傾きを合わせる

セラピストの姿勢と患者さんの相対関係が変わることは、動きが加わることです。相対関係が崩れると、ゼロスタートではなく、プラスもしくはマイナススタートになります。

健全な関節であれば、この多少の相対関係の崩れは吸収することができます。しかし、急性期にある関節はセラピストの相対関係すらも敏感に感じります。動きを作りたい場合は、介入対象の関節とセラピストの相対関係をニュートラルにすることでゼロスタートができます。

♦︎前腕も3点支持でバランスをとる

肩のハンドリングを行うにあたり、前腕への配慮はかなり疎かにされています。肩は肩、肘は肘、前腕は前腕というふうに"関節ごと"にバラバラに考えると上手くいきません。

前腕の3つの支持点の探し方

前腕に配慮するとは、3点支持でバランスをとることです。前腕は肩とは離れていますが、上腕骨との関係で考えると、連結しています。つまり前腕の位置が変化すると、上腕骨の遠位端に力が発生します。剛体である長管骨の遠位が動けば、自ずと近位端も動く。つまり、肩関節に影響を及ぼすことにあります。

外旋操作で肩甲上腕関節に不安定性な動きが発生すると、前腕を3点支持している各ポイントが圧のバランスの変化を感じます。上腕骨を支えることも3点で支持することが重要ではありますが、前腕のバランスが崩れるとこの動きが上腕骨を通して肩甲上腕関節に伝わってしまうので、注意が必要です。

♦︎姿勢に注意しながら体を傾ける

外旋操作の開始肢位と上腕および前腕の支持が整ったら、実際に動かしていきます。特に急性期で痛みが強い場合や、恐怖や不安で緊張が抜けない場合は、手で操作を行わずに、セラピストの身体を傾けることで行います。

セラピストの体を傾けることで外旋を引き起こす

より、効果的な操作を行う上で、さらに2つの重要な点を追加します。
・体を傾ける時に猫背にならない
・外旋位から戻す時にも3点支持が崩れないようにする

それぞれを臨床的に納得感を持って実践できるように解説します。

体を傾ける時に猫背にならない

外旋操作中に集中すると、だんだん猫背になってくることがあります。猫背になると上腕の持ち手の部分も下に垂れてしまい、上腕骨頭が関節窩に対して後方に偏位させてしまいます。

外旋ではただでさえ骨頭の安定化に気を遣うのに、セラピストの姿勢が崩れているせいでさらに骨頭に不安定性を与えてしまい、肩甲上腕関節を安定化させることができません。

外旋位から戻す時にも3点支持が崩れないように

可動域の訓練や評価は、「どれだけ動くか」が焦点されることが圧倒的に多いです。臨床的には「たくさん動かそう」という意識で操作すると、逆に上手くいきません。

どれだけ動くかに重きをおいた介入になると、最終域まで到達したら、そこで手元への集中が切れてしまいます。

戻す時は傾けた体を戻すように意識する

よく経験しませんか?患者さんから「戻す時が痛い」という言葉。セラピストは外旋させたら(外旋にかかわらず全ての操作)、最初の肢位まで戻すまでが評価と考えてください。骨頭を取り巻く関節包は、伸張された時の張力で骨頭の位置を戻したり安定化させます。その張力が解除される時の反応も重量な情報です。

前腕の3点支持を意識していると、帰りの操作時点で崩れたりすることもあります。上腕を3点支持は崩れていないのに、前腕の3点のバランスが崩れることもあります。上腕と前腕の2つの分節の関係を追っていくことでより安定した、より状態の改善に直結する外旋操作が可能になります。

♦︎これまでの内容を動作で解説


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