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余談

君のなんでもないことが知りたい。それだけだった。

心は層になっていて、信念や価値観みたいな大事なこと教えてもらう時は1番奥の層を見たような気がして特別な感覚を覚えるんだけど、そんな宝石を貰うみたいなことよりも、コンビニで買ったアイスを一口貰うようなことの方が嬉しかったりする。

足の形を比べたりしたこと、ポトフは意外と作るのが簡単なこと、ひんやりと冷たいは全然違うこと、連載終わってから大人買いしようと思ってる漫画がなかなか終わらないこと、食パンの味はちゃんと値段に比例するらしいこと、バイト先の変な人が意外と人当たり良くて驚いたこと、テレビっ子じゃなかったこと、髪を切りたくないこと、変な名前のプレイリスト、恥ずかしい位置のにきび、いつも味の薄いスープ、支離滅裂な一昨日の夢の話、よく分かんない姿勢の寝落ち、意味不明な寝言、起き抜けの声。

どうでもいいことはこぼれる。大事なところにしまっとくようなもんじゃないから、ていうかしまっておけないから、その瞬間にだけ巻き起こるような気もする。こぼれたそばから消えていくような気もする。だからずっと見てなきゃいけないんだね。近くにいなきゃいけないんだね。小さいあなたのかけらみたいなのがキラキラこぼれる瞬間がたまらなく愛おしい。

きみがぼんやりしててもこぼれてくる言葉と体全部。君が生きてきた証そのもの。けれど寄り添うのをやめたら途端に何も見えなくなる。ずっと触っていなきゃ、触ってる感覚も覚えてられないくらい不確かな物体。いつか全部忘れちゃうかな。忘れた頃にはすごく大切だったような、でもどうでもいいような気がするのかな。まるであれだ、余談みたいだ。

君になんでもないことを話したい、もう響かない。

YOJHO

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