見出し画像

5月25日。世界中が拳を突き上げた事件から1年。/1年目の「ジョージ・フロイドさん事件」と100年目の「タルサ人種虐殺」 Part.1

2020年5月25日、アメリカ北部のミネソタ州ミネアポリスで、世界中を戦慄させたあの事件が起こりました。当時46歳の黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警察官デレク・ショービンによって首根っこを押さえつけられ、亡くなった忌まわしい出来事です。絞殺事件から早1年。また、続く5月31日は、米国史上最悪の黒人虐殺事件として知られる「タルサ人種虐殺」から100年目の節目を迎えます。今回から2回にわたって『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』の著者、藤田正さんに2つの重大事件について語ってもらいます。

「ようやく、息ができる(I can Breath.)」。アメリカは、本当に変わったのか?

――いま、ツイッター上では、 #GeorgeFloydRewind という新しいハッシュタグとともに、新しい動画がアップされ話題になっています。

藤田 このハッシュタグだけど、『犬の力』(初出2005年/日本版は角川文庫、2009年)などの犯罪ミステリー作品で知られるドン・ウィンズロウ氏が発したものです。彼はブラックじゃないけど、ジョージ・フロイドさんに対する殺人のような警察官による暴力・犯罪行為を見逃すわけにはいかないと、同名の短い動画を拡散した。そして、これが実に良くできている。ぜひご覧になってほしい。

#BlackLivesMatter がスタートしたのは2013年。この言葉を軸にして多様な人々が献身的に、そして独自に行動している。そんな行動の一つだろうね。でもこれほどに反差別を訴えても、悲劇は連日のように発生している。ぼくは人間って、根本的に壊れた生き物じゃないか?とすら思うね。

ほんの一例だけど、今、全米メディアで話題になっているのが、ロナルド・グリーンさんという黒人男性の死です。2019年5月10日にルイジアナ州で、交通事故で亡くなったとされたグリーンさんだけど、丸2年後の今になって公開された警官のボディカム映像(一部)は、ほんとうに凄まじい暴力行為を記録している。ジョージ・フロイドさんへの首絞め殺人以上かもしれない。御遺族は快楽殺人だと言ってるね。ルイジアナ州の警察は、出回った映像は正式なルートで公表されたものではないと言っているけど、それすなわち警察関係者からのリーク情報ってことでしょ。あまりにもヒドイから関係者の誰かが画像データをメディアに渡したってことだよね。

※閲覧注意/ジョージ・フロイド氏ほか、警察によって殺された黒人の方々の事件を捉えた映像が含まれています。
ウィンズロウ氏は、「この国で白人の警察官が黒人を処刑し続けている間、私は耐えることができません」とコメント。この狂気を止めるために、1. 警察組合の廃止 2. 法執行機関の限定的免責を廃止 3.有罪判決を受けた警察官に自分の年金で裁判所の判決を支払わせる、という3つの解決策を提案している。

――ジョージ・フロイドさん殺害事件は、ちょうど1年前の5月25日に起こりました。近くにいた女子高生がスマホで一部始終を撮影していたことで全世界に拡散されました。そして2021年4月20日にショーヴィン元警察官に有罪評決が下された。

藤田 有罪って、まさに驚きの評決です。これまでこのnoteでも話をしましたが、警官がぼくら有色人種へ悪質極まりない行為をしたとしても、歴史的に有罪になるなんて、まずなかった。今回、ショーヴィンに有罪判決が出たというのは、まさにブラック・ライヴズ・マター運動の成果でしょ。1991年のロドニー・キング氏暴行事件から、翌1992年のいわゆる「ロス暴動」の経緯をみても、「白人・警察官」は罪に問われない……その常識を覆したのがショーヴィンへの判決です。

――「ようやく、息ができる(I can breath.)」。BBCの記事には、裁判の行方を見守った人々のそうしたコメントも紹介されていました。
※I can breath.はフロイドさんが最期に発した言葉、I  can't breath.に掛けている

藤田 状況を甘く見てはいけません。ショーヴィンへ、実際にどれほどの量刑が下されるかはこれからだし、そして、こいつの殺人を周囲にいて「遂行させた」あとの3人の元警察官(全員免職・5月7日に起訴)の処遇がどうなるのか、忘れずに追いかける必要があります。『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』では、こういうアメリカ史の暗部にも触れています。

――そういった点で、原点ともいうべき事件が「タルサ人種虐殺」ですね。

藤田 そう! ちょうど100年前の悲劇です。書籍の最後に触れたけど、この事件はあまりに規模が大きくて、ゆえに広く語られることが少なかった。ジョージ・フロイド氏の殺人、そしてブラック・ライヴズ・マター運動はこの秘められた大虐殺に光を当てたんです。そして地元のミュージシャンが立ち上がってアルバムと映像を作った。これはnoteのPart.2に語りましょう!

――よろしくおねがします! コロナのパンデミックでは、アジア系アメリカ人の状況もシビアですね。

藤田 地元民が武装までしてパトロールしているって、つまりアメリカは空恐ろしいほどの銃社会だからということ。自由の国・アメリカとは表向きであって、裏を返せば「暴力支配の国・アメリカ」ってことでしょ。日本のメディアでは報道されることは少ないけど、マジに暴力的かつ人種差別的な我々アジア系へのヘイト行為は今も頻繁に発生しています。

――「タルサ人種虐殺」は、こういった現代の人種差別~ブラック・ライヴズ・マター運動をベースにしながら、次回、語っていきたいと思います。

George Floyd Memorial Events
ジョージ・フロイドさんを偲び、その遺志を継ぐために、ジョージ・フロイド記念財団は、5月23日から25日まで、地域に密着した一連のイベントが開催されます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?