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もう後悔はしない

 A様は、男性で麻痺がありましたが、ご自身で身の回りのことをしておられました。初めは寡黙な方だという印象がありましたが、少しずつお話ができるようになり嬉しく思っていました。

 その後、ご状態が急変し病院へ入院することとなりました。そして清華苑へ帰ってくることなくそのままお亡くなりになられました。その方のことをほんの少ししか知ることができていないのにお別れになり「もっとああしておけば」と後悔ばかりでした。

 月日が経ち、新たに入所されてきたB様の担当となりました。B様は、女性で認知症があり、耳が遠い方でしたが、いつも笑顔を見せて下さる方でした。もう後悔のないようにしたいとできるだけ多くの関りを持つよう心掛けました。

 B様とたくさんお話した中で印象に残っているのは「とりあえず笑顔でおったらええのよ~。誰も嫌な思いはしないでしょ~」と仰っていたことです。その後、B様は入院することになりました。入院前日少しお話することができ、この時もB様は笑顔でした。まさかこれが最後の会話になるとはこの時は思ってもいませんでした。

 数日後、B様の訃報を聞いても実感がなかったのか、不思議と涙は出ませんでした。入院中の様子を見に行かれた看護主任から「意識が朦朧としている中だったけど、私の姿を見たらB様はニコッと笑っていたよ。きっと制服を見て清華苑の人だってわかったんだと思う。」という話を聞きました。

 B様は、身体が辛い状態でも笑顔でいたんだ、ちゃんと私たちのこと覚えていたんだと思うと、お亡くなりになった実感が一気に沸き涙が止まらなくなりました。後悔がないと言ったら嘘になりますが、自分が出来ることは全う出来たのではないかと思います。

これからも関わる全てのご利用者へ今回の学びを活かしていきたいと思います。

特別養護老人ホーム 清華苑
川口琴音

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