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家族の絆

 コロナ禍の今、感染終息が見通せない中、面会が制限される状況が長期化して大切なご家族との時間を過ごすことも困難になっています。中でも、看取り期のご家族にとって次第に老衰していく姿と向き合うことは、やがて別れの時を迎え、少しずつ受け入れるために大切な時間です。

 面会が制限される状況下、看取りをさせて頂いたご利用者のF様にお別れの時が迫ったことを長女様にお伝えするとすぐに来苑され、F様の傍に座ってじっと見つめて数時間を過ごして帰られました。思うように面会できないこの状況で、ご家族は傍に居たい、手を握りたい、声をかけたい、とつらい思いをされていたことがうかがえました。

 私は、長女様がF様に何かしてあげたいと思っておられると感じ、
「職員がお手伝いしますから、お風呂で背中を流して、気持ち良くしてあげませんか」
とお声掛けをしました。すると長女様は、
「是非させて下さい。家にいた頃から背中を流そうかと何度も言ったことがあったけれど、大丈夫と言って一度もさせてくれなかったので、今日初めてできます」
と話されました。

 長女様にとって初めてのお母様の入浴介助をF様が入所された時からの馴染みの介護員や看護師がお手伝いしました。マスク越しの長女様のお顔は終始笑顔で、F様を見つめ、声をかける様子に、お母様に対する強い思いと家族の大切さについて考えさせられました。長女様がシャワーを掛けて声をかけた瞬間には両目をパッチリ開眼され、長女様による初めてのお風呂のお世話は、感動の瞬間となりました。

 F様と長女様の触れ合いの時間が持てたと共に、職員の心も洗われ温まる時間となりました。この機会を与えてくださったF様と長女様に感謝します。

老人保健施設 清華苑養力センター
看護師 富田博子


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