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名前

名前というのはその人にとってどういった価値観を持つのでしょうか。
ただ単に個人を識別するためなど色々と感じるところはあるかと思います。

介護の仕事をするまで、名前に対して特に考えたことがありませんでした。名前を呼ぶのが当たり前、呼んでもらうのが当たり前、といったことが普通でした。

しかし、ご利用者と日々を過ごしていく内に名前の大切さを考えるようになりました。特養には、100名を超える利用者さんが生活しており、入職した当時は、顔と名前を一致させ、覚えることに四苦八苦していました。

ご利用者と接する時に名前を呼んで接することは相手に対しての敬意を払う事の一つだと思っています。しかし、私自身を振り返ると自分の名前をご利用者に教えることはありませんでした。理由として、自己紹介をする気恥ずかしさと教えても忘れてしまったら、と想像したときの寂しさがあったからです。

ご利用者のA様は言葉がはっきりと話せないのですが、ある時、私に何かと一生懸命伝えようとしていました。耳を近づけると「お名前は?」と言っているように聞こえました。私が聞き返すと、うんうんと頷きます。その瞬間、名前を呼び合うことによって信頼関係が深める事を改めて実感しました。

A様は、今でも、言葉を振り絞り、私の名前を呼んでくれます。
私もA様の名前を呼び、一緒にお話をしています。

特別養護老人ホーム 清華苑
小川俊亮


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