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コーヒー飲むって言ってるやろ!

 私が2年目の時に入所されたご利用者Y様のお話をします。Y様が当苑に入所される日、私は喫茶担当をしていました。喫茶終了の時間になり、喫茶の片付けをしていた時にY様が入所でフロアに上がってこられました。

 ハットを被り、お洒落な服装をされているY様に「喫茶の用意してるって聞いたからコーヒーちょうだい」と言われ、「すみません、終了時間になってて片付けてしまいました」とY様に伝えると「コーヒー飲むって言ってるやろ!」と怒られ、その後暫く無視されるようになりました。

 ここでコミュケーションを諦めてしまったらY様との関係が築けないと思い、無視をされても毎日話し掛けるようにしていました。その後Y様は、徐々にレベルダウンし、ターミナルケアに入り、静養室に移動しました。

 退勤前にY様のお顔を見に行った際、Y様は「さやちゃん、今まで楽しかったよ。ありがとうね」と満面の笑みで言われました。今まで1度も名前を呼ばれた事がなかったにも関わらず、その時初めて名前を呼んで下さり、無視されても話しかけ続けた事は無駄ではなかったということをY様が教えてくれました。

 そして日々業務に追われ、コミュケーションを取れる時間が短くても、その小さな時間の積み重ねがいつかケアに繋がり、信頼関係が築けるということも教わりました。

 業務では、時間に追われがちですが、いつ何があるか分からない介護現場では目の前にいるご利用者とコミュケーションを取れるのが今日が最後かもしれないと考えた時、今本当にするべきケアとはどういうものなのかということを日々考えていかなければいけないと改めて感じました。

 きっと天国で暖かく見守って下さっているY様にまた「何しとるんや!」と怒られないようにこれから沢山出会うご利用者が心地よく過ごせるケアをしていきたいです。

特別養護老人ホーム 清華苑
小林紗弥

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