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すずのきらめき ~ 草

おそらく金工・工芸にご興味ある方にお読みいただいているとおもうのですが、金属のきらめき→「草」ときいてピンとこられた方がいらしたら、かなりの工芸ツウでしょう。今回はそんな草のおはなしです。

木賊(とくさ)

辞書で調べると、『トクサ。北海道から本州中部にかけての山間の湿地に自生するが、観賞用などの目的で栽培されることも多い。表皮細胞の細胞壁にプラントオパールと呼ばれるケイ酸が蓄積して硬化し、砥石に似て茎でものを研ぐことができることから、砥草と呼ばれる』とありました。

木賊はサンドペーパーと同じように研磨材として研ぐ・磨くことのできる非常に便利な天然素材です。推測でしかないんですが、茶庭、露地によく植えられているのは、茶道具のお手入れをするためかも知れませんね。


木賊を使った研磨材の作り方

1)成長の止まる時期(秋以降)に採取し、陰干ししておきます。適度なサイズでカットして保管するのも良いかと思います。

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2)使う分の木賊を水に漬けて弾性を戻します。水が染み込み、弾性が戻ると色が変わるのがわかります。

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左側がある程度染み込んで弾性が戻ってきたところです。数時間は必要で、肉厚のものは意外と染み込み難いため、余裕をもって1日ぐらい付けておいても良いかと思います。


3)節をハサミで切り落とし、繊維に沿って縦方向にハサミを入れて木賊を開きます。

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4)内側についている薄皮と繊維をスプーンなどを使って丁寧に取り除きます。透明になるまで処理を続けてください。

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手荒にすると必要なところまでちぎれたり割れたりします。個体差があるので、肉厚のあるものや、もともと薄いものなどある、丁寧に進めていくのが良いですね。


5)キッチンペーパーなどに挟み、押し花を作るようにある程度、圧力を加えながら乾燥させると完成です。

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内側の繊維が無くなると丸く戻ろうとする力は減るが、そのままにしておくと自然乾燥で丸くなっていきます。でも、水を加えるとすぐに柔らかくなるので大丈夫。

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これは両面テープを使って木片に付けた状態です。当て木など添えてサンドペーパーを用いるように磨くことができます。ちなみに、薄いシート状にしなくても、乾燥させた木賊をそのまま使っても研磨できます。


乾燥し過ぎると割れやすいです。もし丸まって保存してしまっても、水分を加えると柔らかくなります。


道具から知る錫師のしごと


手仕事の次世代を担う若者たち、工芸の世界に興味をもつ方々にものづくり現場の空気感をお伝えするとともに、先人たちから受け継がれてきた知恵と工夫を書き残してゆきます。ぜひご支援ください。