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相撲中継に映る裁着袴(たっつけばかま)の人達は一体?

来週から大相撲9月場所が始まります。
今場所もコロナの影響で人数制限を設けたり、力士への声援も禁止の中、コロナ前とは違う雰囲気の中ですすむ大相撲の本場所。

満員御礼で盛況だった館内に響き渡る贔屓力士への掛け声、金星を挙げた一番への歓声、裁着袴(たっつけばかま)を身に着けた出方さんが縦横無尽に走り回り、番頭さんの指示する声が威勢よく響き渡るお茶屋通り。どれも懐かしく感じます。


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さて、ここで問題です。
この館内を駆け回る出方さん。狭い桟敷席の通路を相撲観戦の邪魔にならぬよう絶妙の間でお客様のもとへ行き、迅速且つ、丁寧に御用聞きをする。
力士や行司同様、取り組み前に神経を研ぎ澄ましている姿は相撲中継では、頻繁に映り込みコロナ前までには相撲ファンにとってはお馴染みの光景でしたが、一体どこに所属する人たちなのでしょう。

① 相撲協会

② 相撲部屋

③ 相撲案内所

④ お茶屋さん

答えは③④の相撲案内所とお茶屋さん!
実は相撲案内所とお茶屋さんは同義語。
相撲観戦のお世話をするお茶屋さんは江戸勧進相撲の客の中から席や食事の世話をするものが現れたという「桟敷方」といわれるものに端を発し、その後「相撲茶屋」「相撲案内所」と名前をかえてきました。
その名残で今も「お茶屋さん」とよばれ20軒あるお茶屋さんは「高砂屋」や「四ツ万」などそれぞれの屋号で呼ばれております。

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大相撲の歴史とともに歩んできた「お茶屋さん」の経営者は相撲関係者血縁がほとんどです。
1 番 高砂家 
店主は元横綱 常陸山(五代 出羽海親方)の裔
4 番 吉可和 
店主は元関脇 寺尾(二十代 錣山親方)の叔母
12 番 四ツ万 
店主は元横綱 佐田の山(十二代 境川親方)の義母

200年以上続いてきた「お茶屋さん」もあり、巷でいう老舗と同様代々店を守るために企業努力を続けてきた風格や威厳があります。

相撲部屋というのは相撲協会に所属しますが、このお茶屋さんというのは「国技館サービス」という会社の一部であり、相撲協会とは全く違う組織となります。

では、相撲協会とは全く関係のない組織かというとそうではなく、戦時中は相撲部屋に食糧を贈ったり、相撲衰退期も身銭を切って相撲の席を買い取るなどして相撲界を裏方で支えてきました。

店主をはじめ、そこに努める番頭さん、出方さんも代々仕えてきた人が多く、相撲に対する愛情が深く、粋や伝統を感じながら観戦できる相撲ならではの制度となっております。

このお茶屋さんですが、もちろん席にお茶を出すだけではありません。席までのご案内、お土産の手配、今日の取り組みの見どころを教えてくれるなど相撲観戦を楽しむためのいわばコンシェルジュのようなものです。

●お茶屋さんでチケットを買うメリット

①良い席が抑えられる! 

②江戸情緒、大相撲の伝統を感じられる!

③入口からお席までご案内! 

④荷物を預かってくれる! 

⑤食べ物や飲み物を席まで運んでくれる!

⑥オリジナルのお土産をつけてもらえる。   

⑦事前に言えば請求書での精算も可能。

「お茶屋さん」、実は新型コロナの感染が広がってからはほとんど営業ができておりません。感染対策のため国技館館内の人数を最小限にする動きや、観戦中の飲食が出来なくなってしまった関係でお茶屋さんも営業ができなくなってしまっておりそこに努めていいた出方さんたちも仕事を失っている状態のようです。

粋人墨客を相手にする商売ですから、そのお世話をする相撲茶屋の出方さんは、誠実さはもちろん、諧謔もいえる粋でいなせな対応が評価されます。

国技館内で新しく入った出方は「若い衆、新弟子」と呼ばれ、兄弟子たちから厳しい指導(からかい)をうけます。
上下関係は相撲部屋さながらで、1日でも先に入った者は兄弟子となり、業界でのルール、いろはを教え込まれます。

お茶屋さん中でおかみさんや番頭さん、兄弟子達との普段のやり取りや会話で育まれた「粋」が大相撲興行を盛り上げ、縁の下で支えてきました。

今後、コロナの感染がどう落ち着くか、大相撲のあり方がどうかわるかわかりませんが、縦横無尽に走り回る出方さんの姿というひとつの相撲文化が早く戻ってくるといいですね。

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