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南日本新聞コラム/第7回

鹿児島の地元紙「南日本新聞」にてコラム欄「南点」で連載を担当することとなりました。2020年7〜12月の半年間、隔週・水曜日に掲載されます。南日本新聞を購読している方はぜひご覧いただければと思いますし、こちらのnoteでも掲載内容全文を転載いたします。

第6回/移ろう「顔」の役割

2025年の大阪・関西万博のロゴマークが発表された。万博のテーマ「いのちの輝き」が、赤い円と目玉の組み合わせで表現された異色のロゴは、発表直後から賛否の声や二次創作がネットに溢れ話題となっている。キャラクターのとしての魅力もあり、開幕までの盛り上がりを大いに演出してくれそうだ。ロゴは20年東京五輪でも公募で決定され、類似作の問題も含め注目を集めた。

ロゴは企業やお店、行政、企画の個性を表す「顔」として、ブランドづくりに広く用いられている。受け手とつながる入り口でもあり、内包するコンセプトや狙いを1つの図柄で表現する究極のグラフィックデザインといえる。一見見ただけで「あのブランドだ」と認知できるのは強みだ。

鹿児島県内でも印象的なロゴを見ることができる。赤と青の線を交差させて桜島の形にした「マグマシティ鹿児島市」は行政の堅いイメージを変えたし、黒ぢょかをあしらった「薩摩焼酎」は芋焼酎ブランド確立に貢献し定着した。「桜島・錦江湾ジオパーク」は、桜島や錦江湾に目口を付けたキャタクターにより、ワクワクする世界観が伝わる。奄美群島を巡る遊歩道「世界自然遺産 奄美トレイル」のシンボルマークは、大樹を道に見立てたデザイン。21年度の全線開通が待ち遠しくなる。

優れたロゴは時代のトレンドや役割の変化に合わせてアップデートされている。「ナイキ」「スターバックス」のように変更が成功している例もある一方、「GAP」は批判の声が集まり数日で元に戻った。いま使用しているロゴが適切かどうか、定期的な検証が必要だろう。ロゴの完成がゴールではなく、出来上がってからの運用こそが大事なのである。

ロゴ作成の流れはデザイナーによって異なり、土台となるコンセプトをめぐって発注者との意思疎通も大切だ。デザインの背景にも思いをはせてみると楽しい。

(2020年9月16日 南日本新聞掲載)

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