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南日本新聞コラム/第4回


鹿児島の地元紙「南日本新聞」にてコラム欄「南点」で連載を担当することとなりました。2020年7〜12月の半年間、隔週・水曜日に掲載されます。南日本新聞を購読している方はぜひご覧いただければと思いますし、こちらのnoteでも掲載内容全文を転載いたします。

第4回/枠がないEメールの魅力

1998年公開の映画「ユー・ガット・メール」はインターネット黎明期、Eメールから生まれる恋愛のすれ違いと喜びを描く。20年たった今も、Eメールはビジネスで連絡する上での重要ツールだ。枠が決められた会員制交流サイト(SNS)やアプリと違い、メールアドレスという、広大なネット空間での住所を持てば、世界中とつながれる。

公開したアドレスに仕事の依頼や作品の感想をもらうのは、面識のない相手からでもワクワクする。世界に放ったメッセージが認知され、反応が届くのはネットの醍醐味だ。そんな中、近年は文字によるコミュニケーション手段も多様化している。

話題の瑛人「香水」は、歌詞の冒頭から「LINE」が登場する。ラインなどのメッセージングアプリは短い文章やスタンプが中心で、話し言葉のようなテンポで言葉が行き交う。ファイルの共有もスムーズで、仕事においてもスピード感の必要な仕事や、複数人でやりとりを行うプロジェクトではとても便利だ。一方、情報漏えいやアプリ自体がある日突然使えなくなってしまうリスクもある。くだけた表現がビジネスではふさわしくない場面もあるだろうし、友人・家族間であっても誤解が生じたり他者を傷つけてしまったりする事例も聞く。依存症の問題にも注意したい。

さまざまなツールが生まれていく中、Eメールは今後どうなるだろうか。手紙や電話、FAXのように連絡手段の第一線から退くかもしれない。だが私は即応のやりとりばかりだと気疲れするタイプなので、機能がシンプルで飾り気ないところが好ましく、国籍も飛び越えた自由にコミュニケーションをもたらしてくれる点に大きな可能性を感じるのだ。

目的に応じ通信ツールを使い分ける時代である。あくまで連絡の手段と捉えて振り回されないようにし、扱う言葉に責任を持つよう意識すべきことは手紙の時代から変わらないだろう。

(2020年8月19日 南日本新聞掲載)

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