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南日本新聞コラム/第2回

鹿児島の地元紙「南日本新聞」にてコラム欄「南点」で連載を担当することとなりました。2020年7〜12月の半年間、隔週・水曜日に掲載されます。南日本新聞を購読している方はぜひご覧いただければと思いますし、こちらのnoteでも掲載内容全文を転載いたします。

第2回/地域へいざなうガイドブック

ご当地ガイドブックが好きだ。知らない土地を訪れるたびに探してしまう。多くは無料で、空港や駅やホテル、地元のカフェなどに置かれている。カタログ的な王道のもの、歴史や食、買い物などテーマをしぼったもの、住民やコミュニティーにフォーカスしたものまでさまざまだ。

冊子タイプには雑誌のようにめくる楽しみが、見開きタイプにも広げるワクワク感がある。見つけて手に取り、旅に携行し読み込み、持ち帰る。その体験全てが旅を豊かにし、特別な思い出となりうる。作る側が内容や雰囲気に込めたのは、来訪者へ向け「こんな風に楽しんでほしい」と地域へいざなう態度表明そのものだろう。デザインやイラストレーションも重要な要素で、地域ごとの工夫が見られ、見比べる楽しみもある。

仕事で関わる機会も多い。さつま町では「温泉」に特化したガイドブックを制作し、入浴施設の紹介や温泉ソムリエの解説を盛り込んだ。和泊町では、沖永良部島へ遠島されていた頃の西郷隆盛がテーマの冊子に携わった。「歴史」という目に見えない地域の宝を物語とイラストマップで伝えた一冊で、自治体が発行する観光パンフレットの全国コンテストで入賞した。県内でも、地元局主催の「ふるさとCM大賞」のように、評価する取り組みがあれば質の向上にもつながるだろう。

個人で作れるのも良い点。地元の好きなところを勝手にまとめることもできる。実際、セオリーに捉われない内容、個人の視点が強い方が興味を引く。

一方、一過性で終わってしまう、古い情報が更新されないといった、持続性の課題もある。地域の魅力を伝える手段としてはウェブや動画、会員制交流サイト(SNS)など多様化しているため、それらとの連動性もあるとよいだろう。

まだまだ旅には慎重になる時期。コロナ収束後に向けて、しばらくは各地のガイドブックを眺めて楽しむのはいかがか。きっと新たな発見があるはずだ。

(2020年7月22日 南日本新聞掲載)

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