見出し画像

南日本新聞コラム/第3回

鹿児島の地元紙「南日本新聞」にてコラム欄「南点」で連載を担当することとなりました。2020年7〜12月の半年間、隔週・水曜日に掲載されます。南日本新聞を購読している方はぜひご覧いただければと思いますし、こちらのnoteでも掲載内容全文を転載いたします。

第3回/イラストレーションの「地産地消」

広告や看板、ゲーム、商品パッケージなど、身の回りでは多くの商業イラストが利用されている。

依頼を受けてから制作するオーダーメイド的な手法に加え、近年はインターネット上で無料配布されるフリー素材、購入できるストックイラストも存在感を増している。仕組み自体は以前からあったが、クオリティーが向上し、素材数も爆発的に増えている。

前者のみで制作している私としては興味と危機感を持って意識しているが、オーダーメイドと既製品の違いのように住み分けされていくだろうし、利用者にとって選択肢が増えるのは良いことだ。しかし、イラストを活用する側の企業、行政などの倫理観や審美眼、デザイナーの力量はこれまで以上に問われることになるだろう。近頃はフリー素材を使用したデザインが乱立している節がある。予算や納期のハードルもあろうが、目的やコンセプトに合ったイラストをオーダーする価値は変わらずあると信じたい。

地元で活動するイラストレーターにも注目したい。私たちは2008年「イラストレーションを身近に」をテーマに天文館で若手のグループ展を企画した。以降も「カゴシマイラストレーターズファイル」の発行など、作り手と顧客とのローカルな接点づくりを行っている。

大手ビールの九州・沖縄限定缶には、奄美市の尚味さんが起用されたという。県内在住の篠崎理一郎さんは、地元銀行CMやネット企業のパンフレットを手がけるなど活躍中。広告素材の「地産地消」は鹿児島らしさの表現に役立ち、地域のビジネスを後押ししてくれるはずだ。

発表の場がネットに広がり、作り手も増えた。幅広い世代に「いまの表現」を楽しんでほしい。できれば、どこの誰が描いているかまで興味を持ってもらえたら。鑑賞の場は美術館だけでなく日常生活と密接し、かつてないほどイラストレーションは身近になっている。

(2020年8月5日 南日本新聞掲載)

画像1

=

南日本新聞20200701_執筆者紹介


いただいたサポートは、島暮らしの体験記やイラストレーションの制作活動に大切に活かさせていただきます。