私のお守り
私の本棚には一冊の小さな詩集が刺さっている。まだ1ページも読んだことはない。ビジネスバッグ一つで上京した際、パソコンと替えのカッターシャツ以外の唯一の私物がこの詩集だった。
私は今の会社に入る前、古い友人と共にある事業を運営していた。企業として未熟だった私たちはまだまだ利益を求める段階には程遠く、食い扶持を稼ぐために毎日必死だった。
生きるためではなく、利益を出すための健全な苦しみへ変わっていった頃、私はこの事業を離れることになった。
そして私が上京する前夜、彼から餞別として渡されたのがこの詩集だった。
「ありがとう。でも多分私、詩集は読まないよ」と言うと彼はこう言った。
「今はそうかもね。でも詩が必要になるのは本当に辛くなった時だと思う。
本当に大変な目に遭っている時に、詩がセイジロウを支えてくれるかもしれない。もし必要とするときが来なかったらそれはそれでいいと思う。」
今も私の心に強く残り続けるお守りのような言葉だった。
幸いなことにまだ私はこの詩集を必要とするような状況にはなっていない。でも、もし何か辛いことがこの先あったとしても、「私には詩集があるからな」と思えるので何も心配はしていない。私には、見るだけで力が湧いてくるような心強い詩集があるのだ。
所要時間13分
頂いたお金でグミを買います。グミを食べると人に優しくなれます。私を優しい人間にしてくれてありがとうございます。