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父を2度と父として呼ばない理由 Vol.16


退職が決まり、同時進行で休みの日に房の駅の準備をすることがはじまった。


兄である株式会社諏訪商店 専務との約束。

・兄からの約束は3つ。
卸先さまには迷惑をかけないこと。
地元に恩返しができるようなお店にすること。
諏訪商店の商品を扱うこと。

・自分から兄への約束は1つ。
やるなら口出しは一切しないこと。


そして自分自身との約束。
数ヶ月前に諏訪商店との訣別をしたのに 前職の社長との約束を破った償い?を込めた。
父のことを2度と父として呼ばず、社長と呼ぶこと。
兄のことを2度と兄として呼ばず、専務と呼ぶこと。


このとき以来 私生活でも
父を父として呼んだことは1度もない。
兄を兄として呼んだことも1度もない。


父である社長にタメ口だったこと、兄である専務にタメ口なのは親子や兄弟だからじゃない。甘えた気持ちはゼロだったしそんななめた理由でそんなことはしない。なんで?って理由は話すと長いから省略するけど 前職の社長への敬意を込めて決めた。


父が創業した会社に入社するという甘えた気持ちは一切なかった。もし失敗したら2度と諏訪家の敷居をまたがないとおもっていたし、スタッフ全員を敵にまわしてでも自分のやりたいことを貫く覚悟が決まっていた。


約束は1度破ると破りグセがつくから
2度と破らないように「約束」を背水の陣にした。


そして実務へ。
都内のハンバーガーショップで休みの日と
仕事がおわった深夜0:00過ぎから毎日、やるべきことを書き出していった。ハンバーガーショップの店長が眉間にシワを寄せる自分に笑いながら水を持ってきてくれて話し相手になってくれた。


白紙の図面にやりたいことと、やらなきゃいけないこと、やるべきことを書き込んでいく。


店の名前は?
大きさは?
トイレは何個?
その根拠は?
男子トイレ?女子トイレ?
赤ちゃんのおむつ台? 
トイレットペーパーは何個必要?
陳列台の大きさは?
素材は?
色は?カタチは?高さは?
照明ライトは?
明るさは?明かりの色は?
冷蔵庫は?種類は?サイズは?色は?
設定温度は?
水道は?壁の色は?
レジ袋は?大きさは?素材は?色は?
デザインは?
商品は?レジはどこに頼む?!
スタッフの募集は?!
なんでさ!
トイレのカタチだけでも1000種類はあるよ!
色も入れたら4000種類!
終わりのみえない戦いがはじまった。


ゼロからはじまる。
ゼロからはじめる。
ゼロからつくる。


その膨大な量に先がまったくみえなかった。


そして自分の実力不足が露呈していく。
あの店はダメだな〜
あの店はセンスがないな〜
あの店は雰囲気が良くないな〜って
散々 見下してみてきたのに
いざ自分がその立場に立ったとき
床の色 陳列台の高さですら根拠をもって決められない。
自分が評論家だということを毎日 毎時間 毎分
毎秒 突きつけられる。相談できる相手もいない。


人生ではじめて怖いとおもった。


やらなきゃいけないことを考えなきゃいけないのに
やりたいことばかりが頭を駆け巡る。
・千葉県産だけで揃える野菜と果物
地元の野菜を生産者から直接 仕入れて売ることを決めた。夏には大根やにんじんがなくなるけどそれでも千葉県産だけにしようと決めた。
・千葉県産にこだわった加工食品の商品開発
加工品は当時は外国産ばかりだった。商品の開発の仕方もよくわからないし、時間がなかったから いつか必ずオール千葉県産にするんだと言う意味を込めて「ちば どっさり うまいもの」と書き残した。


農家の知り合いなんて1人もいない。
誰も知らないけど生産者開拓!
何も知らないけど商品開発!
売場づくりしか知らないけど店舗づくり!
こんな自分がスタッフ教育なんて絶対むり!
大工さんの知り合いなんていない!
店の備品関係の業者さんなんて1社も知らない!


図面には大きく店名が「ドライブイン諏訪商店」と書かれていた。この名前をなんとかしないと未来がないのだけがわかっていた笑。


諏訪聖二 房の駅を立ち上げるまで
あと4ヶ月。


もし今、もう1度 この頃に戻れたら自分は絶対、もう1度、房の駅を立ち上げるという選択をするだろう。裏切りもそうだけどゾッとするほどの無謀。ゾッとするほどの過酷。ふりかえるだけでもめまいがする。
でも この過程がなければ今いる仲間たちが手に入らないのなら何度でも 自分は自分の全てを捧げる。
今の仲間たちに感謝なんて1ミリもしてないけどな!笑

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