見出し画像

父、引退と引き換えたもの。Vol.53

第3話
房の駅の2号店ができた時だった。
会長になっていた父が
「房の駅に足湯を作りたい」と言ってきた。
自分は何、好き勝手なこと言ってたんだとおもい
聞く耳も持たず。
だって足湯作るのにもお金かかるし
維持管理コストもすごい。
草を刈るだけでも大変なのに掃除したり
と手間が多すぎる‼️


でも父は
やると言ったらやる男なのは知ってる。
どんな手を使ってでも・・・。
ココは知恵比べだ。
絶対に足湯は房の駅に作らせない。

父と次男坊の直接対決だ。

待てよ。父のことだ、
油断したらいつのまにか
作っちゃう的なことをするぞ!!
ココは厳戒態勢でいこう。
足湯を作りそうな業者さんなどにも
先に連絡をいれて
「もし会長から足湯をつくりたいと
連絡が来たらすぐ教えてください」と
先回りも万全。
水面下でコトが動くことを未然に防いでいった。


そんな折、父が急に引退をすると言い出した。
以前から決まったような話ではあったが
まだ62歳。まさか本当に引退するとは
おもってもいなかった。
兄も父が引退するなら
父に「会社には一切クチを出すなよ」的な姿勢。
そして兄が完全な代表取締役へ。
その日以来、父はまったくといって良いほど
会社に来なくなった。まったくだ。

この潔さは正直、他の経営者でも
みたことがない。


いろいろな関係者の人に言われた。
あれだけ仕事が大好きだった人が
本当にキッパリ辞めるなんて・・・
きっと寂しいよ
本当はもっとやりたかったんじゃないかな?と。
そしてもっと優しくしてあげなよと。



そしてその日が来た。
房の駅に行くと
庭で草を刈ってる農家のような
格好をした作業者がいた。
帽子を深くかぶり一生懸命、
草をむしっている。


あれ?


作業頼んでないよな?と近づくと
まさかの

父だ‼️


おお。って挨拶をすると
おおって返してきた。
汗だくだ。
どうしたの?と聞くと
「あんまやることないし
草が気になったから草むしりしてる」と。


あ、ありがとう。
あーーーー引退したのかという実感と
悲壮感すら感じる。
一瞬かわいそうだなとおもった。

一瞬だ。

その一瞬を父は見逃さなかった。
父が帽子を脱いで熱い眼差しで一言。

「足湯つくって良いか?」



ちくしょー!
ちくしょー!!
ちくしょー!!!
究極の一手だ。



良いよ‼️良いよ‼️ 良いよ‼️
そう言うしかない。
父の方が1枚も2枚も3枚もうわてだ‼️

直接対決は完敗

足湯を作るのを自分に許可させるために
引退したのかもしれない!
きっとそうだ‼️
きっと駆け引きだったんだ‼️


そしてこの足湯は本当に集客の目玉になった。
ところが後の2011年の大震災で
とまることになった。
それまでガス代がすごくコストでかかっていたので
とまったおかげでコストが大きくさがった。
そしてその足湯を壊す決断をした2011年。
震災という大きな節目だったかもしれないけど
父の足跡が少しずつ消えていくきっかけになった
出来事だったとおもう。



『諏訪聖二、どうする父さん』Vol.51-Vol.60(全10話)



父のやると言ったらどんな手を使ってでも
カタチにしていく姿は本当にカッコ良かった。
自分もちょっとはその姿
魅せれてるでしょ?
まだまだかな?
まぁそんなのどうでも良いか‼️
大器晩成型なので圧倒的に超えていくから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?