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お前のことは一生許さない Vol.15

大事な話があると社長に伝えると
焼肉屋で待ち合わせをすることになった。


社長・・・場所選び 完全に失敗です。。。


大衆食堂みたいな感じだし
切り出すタイミングもわからないし
何より ざわついて人がいっぱいだ。


完全に場違いだけど 思い切って切り出した。
「会社を辞めさせてください」
「どういうことだ?」
「兄がお店をやりたいと言ってきたんです」
「会社を辞めさせてください」


とてつもない時間が流れた。
目の前の焼肉は焦げてなくなった。


そして1発ぶん殴られた。
後ろに吹っ飛んで 
もう1発ぶん殴られた。


胸ぐらを掴まれて 社長は何かを言いかけて飲み込んだ。店員さんが止めにはいって まるでドラマのワンシーンのようだった。血が出ているから店員さんがあたふたしてティッシュをいっぱい持ってきてくれたけど社長の拳の方がよっぽども血が出ていた。


「お前のことは一生 許さない」と一言 言って
焼肉を食べはじめた。


ざわついていた大衆食堂は
先生に怒られて静かになった生徒みたいに
シーーーーーーーーーーンとなった。


社長と1対1で食べる焼肉は人生のすべての食事で1番まずかった。きっとあの焼肉屋さんにいた人たちも
みんなそうだったとおもう🙇‍♂️



社長はいつもみたいにスーパーの未来を語りはじめた。「俺はいつかこんなスーパーをやりたいんだ。そこにお前がいると信じてた」


何年経ってもそのときの会話は一言一句 忘れない。


社長が語る未来に惚れて この会社に入社した。人生ではじめて憧れた人だった。その人の夢を一緒に叶えたいと思うようになり、男にしたいと心底おもっていた。人生で1番、男として惚れた人を裏切り、前に進むことがどれだけしんどいことか、それは想像を遥かに超える。


「すみません以外、何か言うことはないのか?」と
社長に迫られた。感謝って口では簡単に言えるけど このとき以上に感じたことはなかった。でも伝えなかった。言葉にした瞬間にいろいろな気持ちが出てくるのがわかっていたから飲み込んだ。


黙って泣きながら焼肉を一心不乱に食べ続けていたから 社長はきっと「こいつ相当焼肉好きだな❣️」っておもっていたかもしれない。今 考えたらココは下を向いて泣いていた方が良かったと反省する🙇‍♂️


『死にもの狂いで頑張ります』


この時 心の中で発した言葉が どんなときも前に突き進む 自分の原動力になった。


焼肉を食べ終わると 社長は「明日、辞表を持ってこい、俺はお前を許さないし、応援もしない」と言った。そう言ってくれたおかげで 涙がとまり、大きく背中がおされた。最後までありがとうございましたと言わなかったし言わせてもらえなかった。


焼肉屋を出るとき 社長が一言、言った。
「焼肉屋じゃなかった方が良かったな」と。


そのあと笑いながら中野の商店街を2人で歩いたのは
一生 忘れない。


諏訪聖二 房の駅を立ち上げるまで
あと5ヶ月。



別にこんな話、誰にもわかってもらいたいとも おもわないし、武勇伝にするつもりもなかったから 誰にも話したことがなかった。でも房の駅が20年たつ節目と15年前に亡くなった社長への感謝の気持ちとともにここに残すことにする。社長!時効ですよね?😬

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