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意見は水を飲ませるように。【『葉隠』読解のための序章】

 三島由紀夫氏の一件から極論で語られることの多い武士道の精神ですが、起源に立ち返ると、武士道とは大和心の集大成ともいえる実践的で均衡のとれた見事な教訓であったことが分かります。

 最も有名な武士道の秘伝書『葉隠』。

 全11巻から成る原著の読解は至難の業で幾度も挫折を経験しましたが、調べると易しい現代語訳や要点を抜粋した書物があることに気付きます。千数百もある『葉隠』に記された教訓を網羅するというよりも、心の琴線に触れた言葉を掘り下げるように、考察を進めてみようと私は考えました。

 もし、僅かでも武士道や葉隠に興味を抱いてくださる方がいらっしゃったら、それは日本国再生の希望です。なんて大袈裟な物言いをしなくとも、葉隠に記された武士道の精神は日常生活に即役立つ実践的なものばかりですから、少しばかり触れてみてはいかがでしょうか。

 参ります。

水を飲ませるように意見すべし。

『葉隠』より引用(現代語訳)


 人に意見するのは難しいことです。たとえ立派に見える主君(組織のリーダー、上司、教師、目上の者)も間違えることがあります。人間ならば、長所もあれば短所もあるでしょう。

 誰かに意見して欠点を改めさせるのは大切なことですが、極めて難しい試みです。ただ指摘するだけでは相手は受け入れ難く、自己満足で終わります。何の役にも立たないばかりか、「恥をかかせて悪口を言っているのと同じ(引用・現代語訳)」です。

 では、どうすればよいか。

 『葉隠』では「水を飲ませるように意見せよ」と説きます。意見は相手が受け入れて初めて価値が生まれるもの。そのためには下準備が必要です。例えば普段から親密になっておいて自分の言葉を相手が信頼しやすい土壌を作ること。相手の感情に配慮して会話が自然に成立するように振る舞い、タイミングを見極めます。そうして別れの挨拶など何気ない瞬間に、意見を直接言わずに、たとえ話や自分の欠点を話すような形で伝えて相手が自然と思い当たるようにするのがよい、と書かれています。

 ちょうど喉が渇いたときに水を飲むように、自ずと受け入れやすい機を狙って述べるのが「意見」の真髄であると云います。


めんどくせぇ!!!


と思いますが、なかなかどうして含蓄のある教訓です。求めていないときに善意で押し付けられる物品ほど迷惑なものはありません。ましてやそれが自分にとって好ましくない意見ならば、簡単には受け入れられないのが人情です。

 そうした人間の(特に主君たる地位のある者、組織の運営に関わるような者の)心理を巧みに読み取り実践に耐え得る「教え」に組み替えて文章化したところに、大いなる価値が宿ります。

 『葉隠』読解のための序章。

 初回はここで締めさせていただきます。

 シリーズ化するかどうかは未定です。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の魂に刻まれた武士道が、混迷の世を切り拓く道標となりますように。



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#私よく分からないけれど
#そんなウツケモノに仕えても未来はないので
#さっさと謀叛して離れるか殺すかしたらいいよ
#それができないなら死ぬまで主君に仕えることさ
#ついて行く漢を間違えたら死ぬんだよ人間は
#それは昔も今も変わらない
#社会の影に隠れて分かりにくくなってるだけなの


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