見出し画像

夜道に溶ける

 遠くの音が聞こえます。
 それは静寂の所為でしょうか。
 それも理由のひとつかもしれません。

 闇が色を隠すように、余分なものが剥がれ落ちて溶けていくのは、夕暮れの向こう側にある世界。

 科学的に説明するとしたら、それは空気の温度と音の速さの関係に過ぎなくて、昼と夜では音の屈折方向が変化するからです。昼の音は太陽に誘われるまま上昇して消えていく幻。夜の音は何処までも地表の近くを彷徨う迷子。

 だから、

 心の声をあげるなら、きっと夜の方がいい。

 どうか遠くまで響いて と祈りながら、

 誰そ彼の視界に呟いた声を、月影の水面が揺れるまで抱いて、夜風を胸一杯に溜めてから、

 助けて、と叫ぶ。


 何を? わからない。
 誰を? わからない。

 零れる感情に名前をつけることも叶わないまま、ただ衝動を持て余して溢れる涙。

 貴方が其処にいることが嬉しくて、寂しくて、唯伝えたい一言を、精一杯の掠れた声で、叫ぶ。


 ありがとう。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方はひとりではないということを、忘れないように。



#眠れない夜に
#今こんな気分

ご支援いただいたものは全て人の幸せに還元いたします。