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映画の物語作成のとっかかりとなるフォーマット

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フィクションの物語を考える際に、全く手元にアイデアがゼロの場合、「どこからどう考えればいいのか?」というのは非常に問題になります。

最近、映画の企画を複数(しかも割とハイペースで)提出しなければならなかったため、穴埋め式で物語の土台を作れるフォーマットを自分なりに作りました。こちらです。

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小さくて見づらいと思いますが、上段の横軸は以下のように書いてます。

・主人公の宿命
・迫り来る危機
・想定される最悪の事態
・主人公の求めるもの
・メインのプロット
・課題
・解決策

脚本家を目指されている方や、または鑑賞した映画の構造を分析したい方などのお役に立てるかと思い、以下に各要素について解説していきます。

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◼️主人公の宿命
  =事件に遭遇する主人公は、元々どんな人物だったのか?

映画の物語構造を極端に単純に表すと、こんな感じになります。

「主人公の設定」x「出来事」=「変化」

上記の「変化」がどれぐらい大きく且つ魅力的になるかが、物語の面白さを左右する非常に重要なキーになります。そしてその「変化」はまさに「主人公の設定」と「出来事」の組み合わせの妙によって生み出される訳です。

『スターウォーズ』を例にとってみましょう。

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”主人公(ルーク・スカイウォーカー)は、自分がジェダイの血をひいている事に気付いていない「未自覚のジェダイ」である”というのが、『スターウォーズ』における「主人公の宿命」になります。

では例えばこれが「天才的な配管工」という宿命だったらどうなるでしょう?
悪役であるダース・ベイダーとの戦いまで持って行こうと思ったら(しかも勝とうと思ったら)かなり理屈付けに非常に苦労しそうな感じがしますし、『スターウォーズ』が持つ神話的な構造も全く別物に変化してしまいます。

これはこれでなんか面白くなりそうな感じはしますが、やはり『スターウォーズ』の主人公は「未自覚のジェダイ」という宿命を負っている方が、物語のスケールが宇宙サイズになっていくのも自然な感じがします。

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◼️迫り来る危機
  =何が主人公を襲ってくる?

さて、ここから物語が動き出します。


安寧の中にいた主人公(何か物足りない不幸な状態であっても”安定”はしているのです)を、何かが襲ってくるのです。それは、具体的な物、例えば隕石(『アルマゲドン』)である場合もあれば、病気による死である場合もあれば(『ブレイキング・バッド』)、誰か人、例えば好きでもない婚約者(『タイタニック』)なんて場合もあります。

とにかく、主人公は動き出さなければ、その危機から脱する事はできません。
しかし、そうは言っても、行動は起こさずに何とかやり過ごそうとするのが人間です。事実、多くの映画では、ただ危機が襲いかかってきたからといって、すぐには主人公は動き出さないのが一般的です。

そんな時に必要になるのが、「これは動き出さないといよいよマズイな!」と主人公に痛感させる事。主人公に決意を促す必要があります。そこで出てくるのが次の項目。

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◼️想定される最悪の事態
  =危機をほうっておくと、どうなってしまう?

これは『アルマゲドン』の例が一番わかりやすいですね。

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地球滅亡。
主人公はNASA職員や軍人でも何でもなく、ただの石油掘削会社の社長です。なのでいきなり「ちょっと宇宙に行って隕石爆発してきて」なんて言われても「は?なんで俺が?っざけんな」という心情になるのは理解できます。
しかし、彼が行かなければ・・・地球は滅亡してしまうのです。
そりゃ行くしかありません。

こうして、戦う事を嫌がる主人公についに「よし、戦おう」と決断させるのが、この「想定される最悪の事態」というわけです。

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◼️主人公の求めるもの

これは単に「想定される最悪の事態」を反転させたものになる場合もあるし、そうでない場合も多いです。

基本的には、外部的な危機を解決するパターン(『アルマゲドン』)と、外部的な危機の解決を通した内面的な成長や克服(『英国王のスピーチ』)であるパターンに分かれます。

これをわざわざ独立した要素にしているのは、まさにその「内面的な成長や克服」が、主人公を動き出させるキッカケになる場合があるからです。これをきちんと書いておかないと物語の本質を見失ってしまう事があるので、「想定される最悪の事態」の反転でしかない場合も含めて、わざわざこのセクションについてちゃんと確認しておくのです。

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◼️メインのプロット
=主人公の主なミッションは何?

ここが物語の核になります。

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一般的には、何か物語を発想する時にはこのセクションから思い付く人が多いのではないでしょうか。スティーブン・キングの発想法であるif法(「もし〜だったら?」から考える)も、このセクションの検討に当たると言えるでしょう。

さて、ここでまた冒頭の「主人公の宿命」で申し上げた事を思い出してください。物語構造を極端に単純化すると、

「主人公」x「出来事」=「変化」

になると言いました。
この「メインのプロット」は上の式における「出来事」に当たりますが、まず最初に「出来事」を思いついた場合、「主人公の宿命」は後から考える事になります。そしてここで初めて、この掛け算の解が最も大きく(or 魅力的に)なるように、「主人公」部分に代入する「宿命」を考えなければなりません
一つの考え方が、この立ち向かわなければならないミッションに対して、”最も向いていない人間はどんな人間かを考える”という方法です。この方法については以下のYouTubeでも詳しくお話をしましたので、ご興味あれば覗いてみてください。
https://youtu.be/RFdabqDgmLU

ところで、アメリカTVドラマの最高傑作の1つ『ブレイキング・バッド』は、おそらく「主人公の宿命」と「メインのプロット」が同時に発想されたのでは、と推測しています。

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高校の化学教師が、麻薬製造をする。
最高ですよね。
その大枠の設定が決まった後に、「迫り来る危機は何だ?」とか「主人公が求めるものは?」といった順で理屈付けが為されたものと、勝手に想像しています。

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◼️課題
=ミッションをクリアする上で最も壁になる事

このセクションは非常に、非常に重要です。物語がドラマとして成立するかはこのセクションにかかっていると言っても過言ではありません。
メインプロットであるミッションがすぐにクリアできてしまった場合、ドラマチックさの欠片も無いお話になってしまう事は容易に想像がつきます。つまり、主人公にとってそのミッションはとってもとっても難しいものでなくてはなりません。

「じゃあ何が原因で、ミッションクリアはそんなに難しいのか?」
これを決めるのがこのセクションです。『英国王のスピーチ』は非常に分かりやすい例です。

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実はこの課題の解決の行動こそが、映画になります。「メインのプロット」ばかりに目がいきがちですが、あくまでそれは取っ掛かりに過ぎず、この課題解決のプロセスが主人公を変化させ、成長させ、カタルシスへと導くための必要不可欠なイニシエーション(=通過儀礼)となります。

これが無かったら、もしくはそんなに高いハードルでなければ、映画は始まってすぐに終わる事になり、観客は「我々は一体何を見せられたんだ・・・?」と唖然とする事になります。そして怖いのは、たまにそういう映画があるという事実です(2時間引っ張ってはいますけども)。

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◼️解決策
=何を以って課題を解決するのか?

バディものの映画では大抵の場合、このセクションにその「バディ」が入ってきます。要は、主人公一人ではそのミッションをクリアできないので、(仲は悪い事が多いけども)手を貸すものとして、バディが現れるのです。
分かりやすいのは『ブレイキング・バッド』でしょう。

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麻薬を作るスキルはあるが、材料の調達や販路が無い。そこで元教え子で現在はジャンキー、自分でも麻薬を作っているジェシーという男の子を捕まえ、バディになってもらうのです。
※余談ですが、バディものにおいては主人公とバディは性格が正反対の2人である事がほとんどです。

では次に、バディ以外のものが「解決策」に入ってくる例として、『天使にラブソングを』を見てみましょう。

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課題:堅物のシスター達と合わない。
解決策:合唱団を自分色に染めていく。

すごい解決策ですよね(笑)

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以上、物語を0→1で発想する時のとっかかりとなるフォーマットを見てきました。


・主人公の宿命
=事件に遭遇する主人公は、元々どんな人物だったのか?

・迫り来る危機
=何が主人公を襲ってくる?

・想定される最悪の事態
=危機をほうっておくと、どうなる?

・主人公の求めるもの

・メインのプロット
=主人公の主なミッションは何?

・課題
=ミッションをクリアする上で最も壁になる事

・解決策
=何を以って課題を解決するのか?

少しでも参考になれば幸いです。

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