運用レポート2020.9.12

週間為替市況

寄り付きからドルは買われた、その後も堅調な日経平均株価を横目にドル円は底堅かったが、欧州時間に入ると、
ジョンソン英首相が声明で「EU との自由貿易協定(FTA)交渉は 10 月 15 日までに結論を出す必要がある」「10 月 15 日までに合意に至らない場合、英国と EU はそれ(FTA 合意が無いということ)を受け入れ前進する必要がある」と方針を発した。
こちらを受け英国と EU のFTA 交渉決裂への警戒感からポンドやユーロが売られたが、ドル円への影響は一時的となり結果としてドル高を誘った
またこの日は米国がレイバーデーで祝日のため夜間の値動きは限定的となった。


英首相を襲う「三つの脅威」、通商合意なき離脱なら-ゴールドマン ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-08/QGAF10T0AFB601?srnd=cojp-v2


英、通商合意なき離脱に備え法案準備-北アイルランド経由輸出入巡り ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-08/QGB5GJT1UM0Z01?srnd=cojp-v2

翌火曜日
日中ドル円は底堅く推移していたが、欧州時間に株が大きく崩れた
英製薬大手のアストラゼネカと英オックスフォード大学が開発中の新型コロナウイルスワクチンで問題があり、治験を一 時中止すると報道。また、米国が連休明けで早出組の仕掛け売りの様で、主要ハイテク株に大きく利益確定売りが入り、それに伴いドル円も再び 105 円台まで下落

アストラゼカ、ワクチン被験者に脊椎炎症 ‐ロイター
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-astrazeneca-idJPKBN260339


また、前日に引き続き英国と EU のFTA 交渉に先行き不透明感が広がりポンドもユーロも売られた
GBPUSD は一時 1.2980 台まで下落。
7 月 30 日以来の安値となり、9 月スタートして 10 日以下で先月 8 月の上昇分をすべて帳消しにした

ポンド大幅続落、合意なき離脱再浮上でマイナス金利時期の観測前倒し ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-08/QGC7EKDWLU6Y01?srnd=cojp-v2


NY ダウはこの日 1000 ドル近く下落し、好調過ぎた株式市場の調整を伺わせる動きとなった
また、ソフトバンクグループが非常に大きく米ハイテク株のオプション取引を行っていることが報道されている

コラム:ソフトバンクG、米ハイテク株投資の中に見える「本性」 ‐ロイター
https://jp.reuters.com/article/softbank-investment-breakingviews-idJPKBN25Z0EB


ソフトバンクGに株主が情報要求、オプション取引の責任者は誰か-報道 ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-09/QGEC62T0G1KY01?srnd=cojp-v2

水曜日
この日の為替市場は調整色の強い動きとなった
寄り付きからドルもユーロもポンドも売られたが、売られ過ぎを嫌気してかファンダメンタルか欧州を中心にポジティブな報道が相次いだ
週明けから続いている英国と EU の FTA 交渉について EU 筋から「英国の国内市場法案を受けて、EU は交渉停止を求めていない」と報道

情報BOX:EU離脱協定無効化する英の国内市場法案、主な論点 ‐ロイター
https://jp.reuters.com/article/brexit-uk-bill-idJPKBN2610XP


また、翌日に ECB の政策金利・声明発表を控え「ECB 当局者の中には経済見通しに自信を深めている者もいる」と報道。この所、売られ過ぎ感のあったユーロやポンドが急速に持ち直した。
更に、前日のリスクオフの一因となった英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンの治験一時中止について、英フィナンシャルタイムスが「同社は治験を来週にも再開する可能性」と報じた

結局この諸々の報道を受け市場は一気にリスクオンとなった株価は大幅反発。
NY ダウは 1000 ドル弱上昇し、ドル円は 105 円後半から 106 円前半まで戻した
EURUSD も 1.17 ドル後半から 1.18 ドル前半まで反発
ただ、どのシンボルも今週ここまでの高値を超えることはできなかった

翌木曜日
この日は前日から報道されていた通り、ECB の政策金利・声明発表で前回 6 月のモノより改善されているとの期待から日中からユーロやポンドが買われ、結果としてドル円は売られた
ECB の内容は、政策金利はマイナス 0.5%で据え置き
「パンデミック緊急資産購入プログラム(PEPP)を 1.35 兆ユーロで維持」
「PPEP は少なくとも 2021 年 6 月末まで継続」
「政策金利はインフレ目標に近づくまで現水準かそれ以下に」


2022 年までの GDP 及びHICP 見通し
「2020 年 GDP 見通しは-8.0%(6 月予測-8.7%)」
「2021 年 GDP 見通しは+5.0%(6 月予測+5.2%)」
「2022 年 GDP 見通しは+3.2%(6 月予測+3.3%)」
「2020 年HICP 見通しは+0.3%(6 月予測+0.3%)」
「2021 年HICP 見通しは+1.0%(6 月予測+0.8%)」
「2022 年HICP 見通しは+1.3%(6 月予測+1.3%)」といった内容
そして注目されていたユーロ高への言及について、金融政策発表後のラガルド総裁の会見は意外な内容となった


「ECB はユーロ相場のインフレへの影響を慎重に判断する」
「ユーロの上昇については話し合ったが、ECB は為替には目標(ターゲット)はない」
「ユーロを注意深く監視する必要がある」
「我々の使命は価格の安定」
「ユーロの上昇が価格に悪影響を与える、これについては広範囲で話し合った」


ラガルド総裁、ECBはユーロ相場を注視-警戒感は示さず ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-10/QGG1NET0AFB401?srnd=cojp-v2


現在のユーロ高について「お咎め無し」といった内容で市場は大いに驚いた
EURUSD は急騰。EURUSD は先週以来となる 1.19 ドル台まで上昇した

ところがこのままでは終わらなかった。
週始めから燻っている英国と EU のFTA 交渉の先行きに暗雲が立ち込める

英、EU離脱協定違反の撤回要求拒否-「通商合意なき離脱」に現実味 ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-11/QGGOIBDWLU6R01?srnd=cojp-v2


EU が英国に対し国内市場法案の月内撤回を求めたが、それに対し英国は「英国議会には主権があり、国際条約に抵触する法律も可決はできる」と反論
ほぼ交渉決裂ともとれる内容だけに市場は動揺を隠せなかった
GBPUSD は一気に 1.27 ドル台まで下落、月初めに 1.34 ドルだったことを考えると実に約 800pips 以上の下落となった当然ユーロも煽りを受け、ECB&ラガルド会見での上昇分はすべて戻しEURUSD は 1.18 ドル台前半まで下落した
当然株価も無傷ではなく米主要株価指数も下落

米国株に関しては米上院で共和党の新型コロナウイルスの追加経済対策法案動議の否決されたことも大きく売りを誘った。結局終わってみればECB のポジティブな内容とは真逆のリスクオフな一日となった。


そして週末の金曜日
この日は前日までの動きの激しさから一転為替市場に大きな動意は見られなかった
ドル円はほぼ横ばい一日の値幅がたったの約 15pips という動きとなり、106 円台をキープして引けた
NY タイムに発表された米消費者物価指数が予想前月比 0.3%増のところ 0.4%増と予想を上回ったが、ドル円にも株価にも然程の影響は無かった

米消費者物価、8 月は前月比+0.4% 中古車価格の伸び寄与 ‐ロイター
https://jp.reuters.com/article/us-aug-ppi-edges-up-idJPKBN26229K


前日までよく動いていたユーロやポンドも然程の動きとはならず
ヴァシリャウスカス ECB 理事が「最近のユーロの上昇は歴史的に例外ではない」と発言
こちらを受け一時ユーロが買われたが NY タイムに入ると強い米消費者物価指数でドル買いとなり上昇幅を縮めたポンドも弱含んでいるものの、節目となる 200 日移動平均線の手前で足踏みとなった
株式市場は日経平均株価こそ強かったが、米主要三指数は振るわず。やはり調整色の強い動きとなっている

来週以降、FOMC、日銀金融政策決定会合と重要イベントが待っており、各市場は中央銀行の出方を伺う動きになると思われる。

取引レポート

EURUSD 下方向にブレイクせず…

EURUSD 日足

EURUSD 日足

先週レポートで、EURUSD の戻りを待ってショート
という戦略で挑んだが、戻りどころか週明け早々から下げ始めた
こんなに早くから下げ始めたら大した下落にならないのでは?と思ったが案の定、ECB 高官の発言一発で反転。その後、ECB とラガルド総裁の会見で1.19ドル回帰となった
ラガルド総裁会見で、ようやく目標とする 1.19 ドル台まで戻したので思い切ってショート

GBPUSD リテール売買動向

GBPUSD リテール売買動向

GBPUSD は月曜日の急落を受け逆張りのロングが急増した

先週レポートで同時に GBPUSD と Gold も対 EURUSD のボリュームの 50%でショートとしたが、上記の通りリテールのポンドロング急増を見て戦略を変更。GBPUSD のショートを決行。
結局今週の主役はポンドだったため、こちらがバカ当たり。
EURUSD とGold の利益も中々のものだったが、暴れ馬ポンドで大きく稼いだ結果となった

また、今週は株価指数でも勝負した
EURUSD で大きく取るスタンバイをしていたが、前述している様に週明けからの下落で EURUSD 熱も冷め、より調整が入りそうな株価指数をショート
以前からこのレポートで触れている通り、NY タイムの高いところを売り浴びせるという戦略と取った
水曜日こそアストラゼネカの治験再開ニュースで踏まれたが、根気よくマーチンゲール方式でショートを仕込んで木曜日の深夜に全ポジション利益確定。
やはりボラのある場所で勝負するに限る


NY ダウ CFD 一時間足

NY ダウ CFD 一時間足

アストラゼネカの治験中止&再開報道は絶好の売り場提供となった


来週は水曜日の FOMC を皮切りに、日銀、BOE と為替が動く材料も多いシッカリ分析して静と動のメリハリのあるトレードを心掛けたい

来週からの戦略

月始からお伝えしているがこの 3 週目以降が 9 月の本番
おそらくだが、来週前半と来週末の風景は一転していると思われる
相場の動きと来週のイベント、そして売買動向を見るに大きく動く材料は揃っているこういう時は方向の予測も大事だが、それなりのシナリオを準備して挑みたい

やはり注目したいのは、EURUSD は「いつ」下がるのかGBPUSD はどこまで戻すか
上記 2 点
私はEURUSD も GBPUSD も下落するという予測を変える必要は無いと思っている

CFTC EUR 先物投機筋 NOP

CFTC EUR 先物投機筋 NOP

やはりまだまだロングが多い
あの程度の下落でこの積み上げられたロングの調整とは言い難いだろう事実ロングの減少を確認できない

また、ECB や昨日もユーロ高容認発言が相次いだが、1.20 どころか 1.19 ドル台まで上げ切らなかった買い方も弾切れか?

EURUSD リテール売買動向

EURUSD リテール売買動向

ECB 後の急落を見てロング減少傾向に向いてしまったが、この先は如何か? 経験上、このユーロ高容認発言は怪しい
連発度合いも非常に怪しい
お上はすぐに手のひらを反すという経験は山ほどしてきた
リテールのロングが再増加(ショートの減少)するのを待ちたい


CFTC GBP 先物投機筋 NOP

CFTC GBP 先物投機筋 NOP

シカゴ投機筋もシッカリ捕まっている、やはり期待できる

GBPUSD 日足シカゴ投機筋もシッカリ捕まっている、やはり期待できる

GBPUSD 日足

GBPUSD 日足

強いトレンドは下方向へブレイクした
ただ、目前に長期では重要となる 200 日移動平均線など主要 MA が控えている
3 月のコロナショックの際の様に一発で抜くにはそれなりのキッカケが必要だろう
木曜日の日本時間の夕方に BOE(英中央銀行)の金融政策発表がある、どうしても期待してしまう

ドル円リテール売買動向

ドル円リテール売買動向

中期的にはロング減少傾向だが、毎日増えたり減ったりしている
ドル円はこの売買動向同様揉むと思えるのだが、来週は結構イベント盛りだくさん


各国中央銀行の金融政策発表もあるが、14 日には実質総理大臣選挙になる自民党総裁選がある
その数日後に日銀の金融政策発表だ、日柄的にこの合わせ技一本という事もあり得ることは頭に置いておきたい

CFTC 円先物投機筋 NOP(円先物のため売買反転)

CFTC 円先物投機筋 NOP(円先物のため売買反転)

若干円買いが減ったが傾向変わらず


日銀の黒田総裁は安倍首相に乞われて続投した
その安倍首相に最後の花火と新首相に歓迎の花火を上げてくれるか?


CFTC US Crude Oil 先物投機筋 NOP

CFTC US Crude Oil 先物投機筋 NOP

先週レポートしたがシッカリ下げた…これはやはり…と思ってしまう

NY ダウ先物とUS Crude Oil 先物価格推移(週足)

NY ダウ先物とUS Crude Oil 先物価格推移(週足)

ウーン…この相関性と下げ余地は大きすぎて怖い原油が先か株価が先かという感じはある。
因みにコロナショックでは株式市場の大幅下落の約一か月後に原油価格の超急落となった


CFTC Nasdaq100 先物投機筋 NOP

CFTC Nasdaq100 先物投機筋 NOP

今週もかなりの調整が入ったが、投機筋は大幅な売り転となった
利食いで売りに向かったのか、下落で退場させられたのかは気になるところだ孫さんは大丈夫だろうか?
ソフトバンクG、オプション取引戦略の見直し検討-関係者 ‐Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-11/QGI5HST0G1KZ01?srnd=cojp-v2

CFTC 金先物投機筋 NOP

CFTC 金先物投機筋 NOP

調整気味だがまだまだロングが多い。1930 ドルをブレイクできずにいるここを抜けるとこちらも心配ではある

Spot Gold 日足

Spot Gold 日足

この 1930 ドルが滅法強い。ここをすっぽ抜けると数百ドル単位の大幅下落もあり得る

来週のイベント、売買動向、テクニカルと以上を分析するに
木曜日のBOE まで下手に動かない方がいい

米金融当局からの金利ガイダンス提示、予想せず-エコノミスト調査 ‐Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-11/QGGNNDDWX2PU01?srnd=cojp-v2 米財政赤字、8 月までの 11 カ月間で 3 兆ドル超 前年同期の約 3 倍 ‐ロイターhttps://jp.reuters.com/article/usa-economy-budget-idJPKBN2622V4

FOMC が大きな政策転換や追加の手が無かった場合、株式市場は失望する可能性があるその翌日の日銀はどうか?
現在日経平均株価はすこぶる強い、東京都も諸々の制限を解除し、国内要因に限ればあまり手を打つ必要は無さそうである

そしてBOE だが、ここに来て緩和が必要な事態になってきている。
年末の EU 離脱期限に加え、市況レポートで触れているが、EU とのFTA 交渉が決裂寸前予防的緩和策を取る可能性は大きい

何より、前述しているがユーロ高容認発言を繰り返すのがどうも怪しい
やはり相場は「何を言っているか」ではなく「何をやっているのか」を見なければならない


従って来週は
木曜日のBOE までにEURUSD や GBPUSD が大きな戻りを試すようなことがあれば、ショートを仕込みたい
EURUSD は 1.19 ドル前半以上、GBPUSD は 1.29 ドル後半以上への戻りを期待したい
BOE 以降に下げ始めれば後乗りでも充分対応できるため、戻りの際に仕込むショートのボリュームは通常時の半分以下で充分だと思われる。距離で稼ぐという頭でいたい
また、併せて売りたいのが、Gold と米株価指数。こちらもやはりボリュームを押さえて仕込みたい

触っていけないのが、日経平均とドル円この二つはよくわからん
そして動いてもパフォーマンスが悪い、資金と時間の効率を考えると対象から外さざるを得ないドル円は大統領選前後にチャンスがあると思うのでそれまで放置

という戦略で行きたいと思います。


今週もありがとうございました
来週もよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?