重力を味方につける

身体を評価する基準の一つに重力を正しく受けられる状態になっているか、はとても重要な観点だと思います。
整体で治すスキルを身につける為にあらゆるテクニックを習得すると思うのですが、どんなテクニックも何を評価して、何に対して行うのか、対象とする状態をきちんと把握できていなければ効果は最大化されないでしょう。
力学など物理の勉強が好きな人からしたら今回の話しは当たり前かと思いますが、治療のテクニックばかり磨いて来た人からするともしかしたら盲点かも知れない。
この考えに至ったのは、治す事の前提に「なぜ壊れるのか」に着目した時だった。人とはどういう性質の生き物で普通に生活するにはどんな条件が満たされていないといけないのか、いろいろと調べていた。
その中でも最初に目をつけたのが、我々の身体活動の中でももっとも優れていて高度な機能の二足歩行である。
歩行は健常者からすると当たり前すぎて、なぜ二足歩行でなければいけないのかまで掘り下げない人が多いと思う。
ぎっくり腰で歩くのがやっとです、、、みたいな人が来院したとしてこの人は健常者かどうかと考えると私からすると全然健常者だと思う。
勿論、物凄い痛みを訴えてるし辛いのは重々承知の上ですが、事実痛みながらも歩いて来れたという時点でとっても健康な人だ。
なぜかと言うと、立てる、歩けるという状態は重力を受け答えできている証拠なので抗重力筋は使えているし、脳が損傷してる事なんてほぼない。
しかし、強いて言うなら重力の受け方が悪い状態なので頭の位置を高く出来るよう姿勢を誘導してあげるだけでスムーズに歩けるようになる。
これは重力という目には見えない外力(刺激)を治療家が見えているか、その視点を持っているか、によってできる対応であって、全くもってその視点がない治療家には思いもつかないやり方なのである。
こういうテーマに置いてのプロフェッショナルは脳卒中リハビリの専門家であり、理学療法士や作業療法士の方などはこの観点を持ってる事が多い。
私も、この辺の疑問を掘り下げている時は理学療法士の方の書籍や脳卒中リハビリを専門としているセラピストの論文などから学ばせて頂いた。
それにそもそもなぜ二足歩行なのか、類人猿の歴史をたどり始めると時間がいくらあっても足りない。
ただ、治療家として正しい歩き方を指導するのに患者様から「先生なんで正しく歩けると痛みが出にくいのですか?」と聞かれた場合「それは…バランスが良いからなんです!」なんて答えでは説得力がないので、せめて「重力を上手く受けられるようになるからですよ」なんて言えると専門家らしいのではないでしょうか。
重力は我々の身体に常に降り注いでる外力なので、それに抵抗する事が身体の機能を維持する最大の刺激なのである。
一度そんな視点で普段の患者様の動きを見てみると新しいアプローチが生まれるかも知れませんね。

ではまた。



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