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めくるめく季節の先へ

桜の花は儚く散って、でも木々はもう青々とした若葉を枝いっぱいに芽吹かせている。私は大学3回生になり、それなりにドタバタ駆け回ったり、ゆったりするときはそのようにしたりして過ごしている。

ここ最近は書きたいことがあるような、ないような曖昧な感じだったので、あえて文章を書かずにいました。時間ができて、書きたい事柄がひょこひょこ顔を出してきたので、またあれこれ記録していこうと思う。

おおよそ2週間ほど前から授業が始まったのだけど、そのおかげで1回生のときから仲良くしてくれている少し天然な女の子や、2回生の秋に声をかけた美しい黒髪を持つ女の子、ここではお馴染みのカッターシャツの彼、エレベーター友達の彼(彼はなんと今年度の研究室の幹事になっている。すごい)、授業をしてくれる先生方など、大学で出会った人々の顔を久しぶりに見て、思いがけずほっとした自分がいることに気が付いてしまった。

それはもう大学が私の居場所になりつつあるということなのだ。

私は、新しい環境に慣れるまでに時間がかかってしまう方だ。慣れるまでは重めのホームシックのようになってしまい、前の環境を心から恋しく思う。「つい最近までそこにあったのに、もう2度と戻れない」という事実は、何につけても私をひどくセンチメンタルな気持ちにさせ、涙を誘うのだ。逃げてしまいたかったことや思い出さえ、時間は美しく風化させてしまう。

そのくせ環境に慣れてしまえば「はやく次のステージに行きたいなあ」とわくわくしながら思うのが私のおかしなところで、人間らしいところでもあるような気がしています。

だから、たとえば中学生のときには「早く高校生になりたいなあ」と思っていたけれど、高校生になったらなったで中学校が恋しく、戻りたい場所のように思えて、けれど慣れてくればそんなことすっかり忘れて「早く大学生になりたいなあ」などと願ったりしたもの。

特に、小学校から中学校への移行はとても大変で、私は中学校最初の1年間のことをほぼ覚えていない(勉強や部活、新しい友達との格闘の日々を繰り返し、その環境に適応するまでに1年もかかったのだな、と今は思う)。

そんなこんなで、大学生になったときも最初の1年間はとても弱々しい気持ちで生活をしていた。いつもすぐにいっぱいいっぱいになってしまうので、最初は出会うことすべてを楽しむ余裕がないのだ。

でも、大学で会えるひとびとを見てほっこりするというのは、きっと私がこの環境をある程度自分のものにしたという証拠になるのだろう。

これからもきっと、環境が変わるごとに私はそれを繰り返していく。慣れるまではがんばりすぎないで、美味しいゼリーとかアイスとか、可愛らしいハンカチやよい匂いのハンドクリームなどをちょこちょこ自分に与えたりして、うまいことやっていきたい。そしてそれを他者にもすすめたいと思う。

そういえば、この春ついに大学の研究室の役員が私たちの年代へ回ってきてしまい、私は晴れて名簿係になった。研究室に所属する学生と教員みんなに自分のプロフィールを書いてもらい、それを冊子にするという役割だ。

授業はより専門的に、そして演習的になり、こなす課題も卒論のそれに近いものになっていく。あいかわらず授業では小説を読み、古文を読み、ということをしている。今期読むものは、村上春樹、古井由吉、谷崎潤一郎、永井荷風の小説のいくらか、それ以前のものだと滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』、『大和物語』なども読むことになっている。

これはまだ完成していない文章としてnoteに保存してあるけれど、たとえ本をいくら読んだとしても、一生の間に読める数はきっと決まっているだろうと思う。そのようなことを考えるとき、私は少し学者たちの気持ちに近づき、自分が携えている知的探求心を確認できる。

全部は無理だとしても、人生を歩む、その時々に出会う何らかの作品、ひとびと、出来事と、そこから得た経験を積み重ねて、世界にたった1人だけの、むかし子どもだった大人になりたい。

のんびりしているばかりにはないけれど、風の温度を感じたり、季節を告げる色彩を見つめたり、そういうことを忘れないでいる私でいたいな。こうありたい、こうしたい、というのはぼんやりしているから、目標実現のためには「〜する」という語尾の方がいい、というような話を聞いたことがあるけど、私の「こうありたい」は願いなので、それでいいかなと思っている。

もう社会に出て働き始めている同級生たちも多くいるけれど、私はあと2年間、思いきり勉強させていただきます。そしてまた、仕事を始めて生活が身体になじむまでの最初の数年間、いっぱいいっぱいの私がこの文章で少しでも救われますように。

もう少し書きたいことがあったような気がするけれど、今夜はこのあたりで。みなさん、ゴールデンウィークを心待ちにゆっくりいきましょうね。

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