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工藤壮人

僕はJリーグのクラブに偏らずフラットにサッカーを見ているつもりだ。どこか固定のチームのサポーターではない。それでも、どうしても、1人のサッカー選手だけは贔屓してしまう。それは握手をしてもらった唯一の選手であり自分にとっての全てだったからだ。彼にとっては選手生命の末端のほんの先っぽの出来事に過ぎないかもしれないが自分にとっては本当に大きな、人生の中でも大切な死ぬまで忘れられない時間だったのだ。彼のキャリアハイのシーズンからJリーグを見始め彼がナビスコカップでMVPを獲得し日本代表で岡崎に代わって入り途中出場ながらゴールを決めた。エースナンバーを背負い、北島秀明の歴代最多得点記録を更新し、海外挑戦の機会を得た。これだけ輝かしいキャリア見ていた僕はなぜか誇らしかった。彼のサッカー人生のほんのわずかでしかないのに自分は彼と握手をしたという事実が僕をそういった気持ちにさせたのかもしれない。サッカー選手は1人の人間をこれだけ勇気づけてくれるのだ。本当に素晴らしい職業だと思う。
彼は2015年にアメリカへ旅立った。もっと日本で見たかったが本人の夢でもあった海外挑戦は僕にとっても嬉しかった。彼が顎を骨折してもピッチに戻ってきたことも、広島で50番を背負い残留に導いたことも、山口の選手として日立台に戻ってきた日も、所属先がなく日体大柏で練習参加していたこともオーストラリアでプレーしたシーズンも宮崎の選手として日本に帰ってきたことも、またいつか彼のプレーを生で見られることを楽しみに受験勉強を頑張っていた部分もあった。
ネットで1度も調べなくともここまで彼のキャリアをたどることができるほど僕は彼のことが好きだったし気にかけていた。僕にとって彼はサッカーにおける全てだったのだ。

おそらく今後もずっと覚えているであろう日がある。

10月21日

信じられなかったし、信じたくなかったし、あまりにも突然すぎた。「なんで彼が」という気持ちもあった。もちろん入院のことは知っていたが正直そこまでの状況だとは知らなかった。ショックのあまりほとんど彼の死に関するニュースは見ることができなかった。僕は受験でほとんどJリーグを追えておらず彼のプレーを最後に見たのはいつかはっきりと覚えていない。本当に運命は残酷だ。それでも僕にとって彼は永遠のヒーローなのだ。それだけは確かだ。

夢を、勇気を、与えてくれてありがとうございました。