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柔道大会当日~そんなんで戦えるの?~自己嫌悪

大会直前ホテル

ホテルには、集合時間の1時間30分前に帰ってきました。
集合前に帰れるなんて優秀でしょう。

上司と鉢合わせしてなんとか吐きそうになりながら朝飯を食べ終わりました。
よくばれなかったな。というか、あえて言わなかったのでしょう。
監督に高級クラブに連れていかれたことを知っていますし、おそらくその後も繰り出したな?と容易にわかる事でしょう。
あと若いし。

何も聞かないでいてくれてあろりがとう。

自室に帰り気が抜けました。
しかし、今寝たら一生起きられない、起きない自信がある。
だからまずシャワーでこの酒臭とシンナー臭と死臭を取りたい。
当時ゾンビの様でした。
まさか札幌の大会にきて、堕落するとは・・・情けない。

水を飲みまくりとコンビニで買っておいたウコンを2本ほど飲んでとりあえず集合時間だったのでロビーへ・・
チェックアウトしハイエースできたえーるへ・・・
他のメンツはシャキッとしています。さすがだな 慣れているわ。
私のゾンビ感で昨日何があったのか大体察しがついたのでしょう。
あえて何も言いませんが、みんなにやにやしています。

着いたゾきたえーる


きたえーる、札幌市豊平区にある大きなスポーツ施設です。
初大会ですからどんなことになっているかまったく想像つかず、しかし、きたえーるの駐車場にはスーツをきた整理係の警察官がいました。
案内されて半地下へ降りると、一面警察車両だらけ、中から各警察署の代表選手がぞろぞろ・・・おお大会の雰囲気でているね!!

雰囲気に当てられ一時的に元気になりました。

車を降りて、大会の受付へ
きたえーるメインアリーナが大会会場、その観客席は自由席であたりを見渡すと「○○警察署常勝」「○○署ファイト」など弾幕がそれぞれ設置されていて気持ちが上がりました。
ちなみにうちの警察署は、そんなものないです。

荷物を置き、メインアリーナの畳の上に集合、準備体操から打ち込みと流れるように進みます。
いつものように体操の掛け声は私が担当です。
「はじめまーす、いち、に・・・」すると監督が「おい飲まれてるんじゃねーよ」「声出せ!!」たしかに飲まれていました。
酒にも飲まれ、大会会場の雰囲気にも飲まれ、そこから大声で掛け声をかけました。

そこから開会式までしばらく時間があったので、周囲をきょろきょろしていたらりらほら同期がいました。
「おー、元気だった?てかゾンビかよ」
「昨日やりすぎてね」「お前もか」
など、新人枠の同期連中もなかなかやってきた模様
しかし、札幌の警察署にいた連中は、通常通り宿泊もなく淡々と訓練してきていて、札幌は地方のお遊びと違って本気度が違いました。

地方の警察署は、ガチ目の人もいますがこの宿泊目当てで選手に立候補する人もちらほら、それはお遊びだと言われますね。
それから、単身赴任で札幌に家があり、家族をおいてきている人にはありがたいですよね。

同期と久しぶりにあってよっと打ち込みするかとなり個人訓練へ
二日酔いだし頭痛いし 打ち込みをするも同期から今日の負けは決定だね、お前からオーラは感じない、代わりに酒くささを感じる。
余裕だね、とさんざんコケにされました。

悔しいですが、自己管理の甘さを指摘されて何も言えませんでした。

ちなみに、一応選手には選ばれており、5人中次鋒を任されています。

大会本部からの放送で、観客席にいた全警察官が畳の上へ集合し、本部長(いつも代理の総務課長あたり)が来るからリハーサルを実施していざ本番へ

全員集合柔道部


柔道する警察官が畳の上に集合、しかも全道の・・
なかなか迫力のある絵でした。
気持ちはまだ切れていません、むしろやってやるぜと気持ち上昇中でした。
警察学校の術科教養部の教官連中が見えました。
こういったときはやはり彼らが出てくるのか。
教官「きょーつけー、大会会長に敬礼」「直れ」
教官の出番はこれでおしまい。
ほう、この役をやれるのに誇りを感じているのね。

開会式は淡々と終了し、1回戦第1試合を戦う警察署が畳に残り他は観客席へ移動しました。
畳は全部で4マス敷かれていて 一会場から四会場までありました。

我々は第三試合の一で会場なのです。

そこそこ準備して観客席から傍観していると、なかなか応援に熱が入り盛り上がっているではありませんか。

ここで試合をするのか、緊張してきました。

移動するぞとメインアリーナの畳以外の板の間の端っこに集まり
準備体操・・なんかい準備体操するんだい。

さあ始まりました。

さあ、はじまりました。
我々と対するのは札幌の警察署
気合が違います。

先方開始、一瞬で足払いをくらい負けてしまいました。
まじか・・もう順番じゃん

次鋒 「おい負けんなよ、後がないぞ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
正面に礼、お互いに礼
・・・はじめ

やー おー
お互い気合を入れ互いに組み合います。
力がつええよ

相手の顔も必死ですし、私の顔もたぶんひどいことになっていたでしょう。

30秒もしないうちに、相手の袖をつかんでいた腕に力が入らなくなってきました。
30秒全力で握ればそうなります。
「力を抜け」「リラックス」「間合いきれ」
周囲のアドバイスはもはや耳に届きません。

いつもの動きはできていません。硬すぎて相手を力で抑える事しかできないのです。

1分もしないで息が荒くなり、すでに酸欠ぎみ
何もしていないのに
額から汗は吹き出し、両手の力はどんどんなくなる、脚も動かない
相手は札幌の警察署で昨日までガンガン訓練していているので動きが違います。
振り回そうとしていますが、私も振り回されないように胴着にしがみついて、ドタドタと畳を動きます。

必殺の内股がさく裂!?

相手は足払いで私のすねを叩いて削ってきます。
このやろう、私はイラっとして、得意の内股を仕掛けました。
相手の足と足の間の内股に、得意の黄金の右足を差し込みました。
私は勢いよく相手の胴着の奥襟と右袖をタイミングよく自身の前に引き倒すように前のめりに体制を持っていきました。
すると相手の体重がふっと軽くなりました。
相手の奥襟と袖は持っている、右足も相手の内股に刺さっている
決まった!!・・・・
と思った瞬間
相手の左足がするっと逃げて前のめりになった私の前に相手の体が割り込んできました。
そのまま成すすべもなく、チョンと押されれば私は前に倒れる状態で、背負い投げをくらいました。
ふっと体が浮かんで、次の瞬間にはまぶしい天井の照明を見ていました。
・・・・
「イッポン!!」

それまで

柔らかい畳

負けました。きたえーるの畳はとても柔らかく素材のよいものを使っていて、投げられても体は痛くなく、それだけが救いでした。

私の初大会は終了しました。

チームも結局、4対1で負け

優勝が決定するまで、私は観客席の自分の椅子で泥のように寝ました。
初大会を前日の自己管理不足でくそのような体調でいどみ、いつもの動きもできず無様に負けた悔しさを抱いて。

警察署的に一回戦負けも想定していたのでしょう。
特にお咎めもなく警察署に帰りました。

なんという無様な負け様、というか前日から負けていた。
新人のくせに調子にのって、自分が一番バカでした。

その日の夜はくやしさで涙が出ました。



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