マヨネーズ、ドレッシング、そして努力
凝る
15年ほど前だったか、マヨネーズとドレッシングに凝ったことがあります。
マヨネーズに凝ったのは、パリのモンパルナスにあるレストランで、茹で卵のマヨネーズかけ(oeuf mayo)に感動したのがきっかけでした。そのマヨネーズは、味は濃厚なのに、舌触りが実に軽やかだったのです。いくらでも食べられる。
よし!自分で、こんなマヨネーズをつくろう、そう思いました。
しかし失敗しました。
そもそも固まりません。
もちろんちゃんとボールの水滴は紙でふきました。
しかしダメでした。
2か月ぐらい、毎週、週末の昼に頑張りました。
それでもダメでした。
僕は努力が嫌いなので、諦めました。
ドレッシングに凝ったのは、バルサミコ酢の蔓延に義憤を抱いたのがきっかけでした。
パリのボンマルシェデパートの近くに、昔ながらのレストランがありました。
誕生日とか、特別な日にしばしば訪れました。僕の教え子たちがパリに遊びに来たときも、一緒に行きました。彼女らが、お年を召したウエイターさんに、「綺麗なブルーの目ですね」と言って、ウエイターさんが照れていたのが可笑しかった―。そんな思い出もあります。
そしてサラダにはフレンチドレッシングがかけられており、これが素晴らしかった。
ところが、シェフがかわったのか、オーナーがかわったのか、とにかくこのレストランは、名前以外の全てが、スタッフの顔ぶれも含めて、かわってしまいました。ドレッシングはフレンチドレッシングをやめて、オリーブオイルとバルサミコ酢を混ぜたものとなりました。
べつにバルサミコ酢が嫌いなわけではありません。しかしある意味、醤油みたいに、万能すぎるところがある。そして当時は、日本でもフランスでも、バルサミコ酢が流行でした。僕は、なんか、安直なものを感じました。
仕方がないので、我が家で、爽やかで、甘くて、溌溂とした、ドレッシングを作ってやろうと思いました。
しかし失敗しました。
味見の段階で満足しても、いざ野菜にかけて食べてみると、味が違うのです。
これはむずかしい!そう思いました。
同じドレッシングで、キュウリさんとトマトさんを両方とも、満足させなければならない。
そこがうまくいきません。
数か月ほど頑張ってもうまくいかず、僕は努力が嫌いなので、諦めました。
努力不足?才能不足?
ひとには持って生まれた才能というものがあります。
才能がなければ、どれだけ努力しても無駄です。
努力し続けることから生じるリスクをも考慮に入れるべきでしょう。
努力しても結果がかんばしくないとき、
第1に気づくのは時間の浪費です。
ある目標のために努力した時間を、別の目標のために割いていたら、どうであったか。
第2に気づくのは人格に生じる変化です。
大抵の場合、視野が狭くなり、頭が固くなります。
「熱中」と「努力」は違うのです。
プラモデルが好きな少年は、制作に熱中しているのであって、努力しているのではありません。
疲れや飽きを知らずに、時間が経つのを忘れて、いつまでもやり続けることができるのが熱中です。
めちゃうまドレッシングの、チョーかんたんレシピ
つまり大切なのは、時間の問題、そして優先順位の問題です。
それに、さがしものは忘れたころに見つかるかもしれない。
実際、2か月ほど前のことでした。
たまたま、とってもかんたんにできるドレッシングのレシピに、インターネットで偶然、出会ったのです。
お酢、大匙2杯。
オリーブオイル、大匙2杯。
砂糖、小匙2杯。
実を言うと、このレシピはアレンジがしやすく、そこがまた楽しい。
おろしたニンニクを加えたり、レモン汁を使ったりしても、OK。
そのときどきの気分に合わせて、自由に、サラダの可能性をひろげられます。
いやあ、10年以上前に諦めたはずのことが、たまたま、できました。
嬉しいものです。
要するに、時間を味方につける。
それだけのこと。
そのうち、日本でも、上等なマヨネーズが発売されることもあるでしょう。
食品メーカーの「企業努力」ならぬ「企業熱中」に期待しましょう。
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