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前後の作品を踏まえた上でのDQMJ2Pの総評

概要

Dragon Quest Monsters Joker 2 Professional(DQMJ2P、J2P)はDQMシリーズの中でも特異な人気を持つ作品である。DQMシリーズの動画を専門的に投稿するYouTuberの1人であるゆっくりたっぴいを代表するコンテンツが同作の勝ち抜きバトルであることは論を俟たず、動画に触発されて挑戦する人が複数人観測されている程である。DQMJ2Pは流通数が少なく、また各種配信も終わりモンスターを全ては揃えることも出来なくなった本作の事情を鑑みれば、これは異様なことである。勝ち抜きバトルは本作が初出であり難易度が高かったとはいえ、やり込みゲーマーの需要だけで本作の任期は説明出来ることではない。実際、現在(2023年)の大学生くらいの世代にはJ2Pに愛着を持っている人が散見されている。そこで、本稿ではJ2Pの魅力が何に由来するか、前後のDQM作品と比較しつつ論じる。

過去作品を踏まえた完成品としてのJ2P

J2Pは3DSで発売されたDQMとしてはDQMJ(J1)、J2に続く3作品目であり、J2にモンスターやスキル、特技や特性のみならず、マップやストーリーまでも追加し、また様々な変更が加えられた拡張改変版である。J2自体がJ1とは物語の舞台や時代等は異なるものの、モンスター育成等のシステム面ではJ1を素直に継承した上でボリュームアップすることで前作の問題点を解消していたこともあり、J1→J2→J2Pは順当な発展と言える。そして次回作のテリワンからは3DSとなり、パーティを構成するモンスター数が増える等ゲームバランスの大幅な変更があった為、J2PはJ1から始まるDSのDQMの「完成品」と見做すことが出来るであろう。

J1の問題点を解決したJ2の更なる発展

DQMJの時点で、その後のDQMシリーズの基本的なシステム、即ち、

  • 各モンスターは種族毎に異なるステータス上限と特性、耐性を持つ

  • 特技(や一部の特性、耐性)を両親から直接は引き継がず、スキルを介して継承し、レベルアップではなくスキルポイントによって習得する

  • モンスターには位階と呼ばれる強さ、若しくはレア度の序列が与えられ、それと系統によって配合で生まれてくる種族が基本的には決まる

というものは既に完成していた。これは今日では当たり前であるが、当時としては非常に型破りで衝撃的であった。というのも、それ以前のDQMは

  • どのモンスターのどの能力も最大値は999(DQM1の素早さは511、賢さは255であったが、種族間で差が無いことには変わりない)

  • 特技はレベルアップで覚えるが、何を覚えるのかは自身と両親の種族、両親が実際に覚えていたものによって決まる

  • 耐性は基本的に種族固有であるが、両親から引き継ぎ、高めることが可能

  • 特殊配合のパターンに当て嵌まらない場合には、両親の系統のみによって子の種族が決まる(両親のモンスターとしての序列は無関係)

というシステムが基本的に採用されていたからである(一部キャラバンハートには該当しない条項はあるが)。

これだけ抜本的な変革を齎し、その後2017年のDQMJ3P、2020年のイルルカSPまで続くDQMのスタンダードを早くも2006年に打ち立てたDQMJ、これは今でこそ偉大な始祖という扱いを受けているが、当時は賛否両論であった。というのも、システムの根幹は完成していたとはいえ、システムの楽しさを十分引き出すのに必要な構成要素のボリュームが不足していたからである。ボリュームがシステムを活かす上で必須であることは、例えば、タイプがノーマル、炎、水、草の4つしかなく、複合タイプのポケモンが存在せずに単タイプのみのポケモンを考えてみれば分かるであろう。タイプ相性の優劣関係は既にあり現在実際に存在するより複雑なポケモンで発見された戦術もその多くは転用可能であろうが、この過度に単純化されたものだけしか知らなかったとして、それが本質的には面白いものであると気付くのは難しい。DQMJは流石に「4タイプのみのポケモン」よりは遥かにボリュームがあるが(「4タイプのみのポケモン」はボリュームがシステムに必要であることを理解する為に作った極端な概念である為)、それでも過去作と比べてボリュームに欠けていたことは確かである。DQMJのボリューム不足は次のように指摘することが出来る。

  1. 色違いの多さによる実質的なモンスターの少なさ
    モンスターの総数は210種類でDQM1の215、キャラバンハートの200種類と比べて一見遜色ないように見えるが、色違いのモンスターの多さ、それに伴う定番モンスターのリストラにより、体感的に少なく感じる。過去作にも色違いのモンスターはいたが、バブルスライムとはぐれメタル、溶岩魔人と氷河魔人のような、明らかに個性が異なるものに限られており、デンデン竜とドラゴンバゲージ、プークプックとコサックシープのような、個性の違いが薄くDQ本編での出現時期の違いによる強さの上下関係しか見いだせない色違いモンスターの登場は本作が初である。DQMJ初登場のモンスターであっても、デザートデーモンやメタルカイザー等、既存モンスターをアレンジしただけの詰まらない外見のものが目立つ。

  2. 低ランクモンスターの弱さによる育てる価値あるモンスターの少なさ
    DQMJでは各モンスターに位階という一意の番号が振られ、これの大小がモンスターの序列を表し、その高低によってF~SSのランクが設定されている。そして低ランクモンスターのステータス上限は高ランクモンスターのそれと比べて著しく低い。従来作ではどんなモンスターであれ鍛えれば強くすることが出来るというのがDQMの特徴であり魅力であったのに、一部のモンスターしか強くすることが出来なくなった。

  3. 特性や耐性の設定の少なさ
    DQMに特性が実装されたのはDQMJが初であるが、低ランクモンスターを中心に特性を1つも割り振られていないモンスターが多く存在していた。一部の強特性を除き特性の価値が低かったと言えるであろう。特性を与えられたモンスターであってもその数は1つか2つのみではあったが、この点は後のDQM作品と比較すると物足りないものの、ポケモンは1個体につき1つしか特性を持たないことを考えると、当時としては瑕疵には当たらないであろう。
    より問題なのは耐性の設定の少なさで、DQMJではモンスターの耐性が種族毎に最大でも3項目までしか設定されていなかった。例えばフレイムなら(1)メラ系吸収(2)ヒャド系弱点(3)炎ブレス系吸収の3項目が設定され、それ以外の耐性は全て普通である。メラと炎ブレスと火炎、ヒャドと吹雪ブレスのような似たような属性が別物として扱われているDQMJにおいて、これはフレイムに火炎は効き、吹雪ブレスは弱点ではない等の非直感的な挙動を生み出している。そもそも、属性が27もあるのに3項目分しか最大でも設定されていないというのが無理がある。弱点を突くことも耐性で被ダメージを減らしたり状態異常になる確率を下げることも、どちらも殆ど起きないのであるから。従来作品では全モンスターの全耐性が丁寧に設定されていたのと比較すると、凄まじく劣化しているとしか評し得ない。過去作には配合による耐性上げもあり属性攻撃の価値が(特に対戦において)極めて低く物理偏重であるという問題があったとはいえ、この調整は極端に過ぎるし、手抜きであろう。

  4. 位階配合導入による特殊配合パターンの少なさ
    DQM1(2)では系統基本配合の$${9\times10=90}$$($${10\times11=110}$$)パターンでは215(315)種類のモンスターの半分すらカバー出来ない為、特殊配合のパターンが設定されているモンスターが大半を占めていた。そして作りたいモンスターが全然作れず系統基本配合ばかりになってしまうということを防ぐ為、1つのモンスターを作る特殊配合のパターンが大量に用意されてもいた。これにより、プレイヤーが特殊配合のパターンを探す楽しみがあり、覚えるにつれて効率的な配合をどんどん行えるようになるという上達の楽しみがあった。
    対して位階配合が導入されたDQMJでは大部分のモンスターは位階配合で生まれるようになった。即ち、親と同じ系統という範囲内で図鑑番号順に生まれるモンスターが変わっていくということである。今までが複雑ネットワークの経路探索であったのにDQMJで単なる階段上りになったのは、配合の楽しみを損なったと(その当時では)評価せざるを得ない。位階配合では作れない高ランクモンスターを中心に特殊配合が設定されたものもいるが、特殊配合のパターンは1種類のみであるのが殆どである。

さて、これらDQMJの問題点であるが、その大部分がDQMJ2で解決の糸口が見え始め、J2Pで完全な解決を迎えている。J2P以降のテリワンやイルルカでは解決策が改良されより洗練されてはいるのだが、しかしJ2Pで解決されたというのも確かであり、これこそがJ2、並びにJ2Pが高い評価を受けた理由であろう。J2Pまでにそれぞれ、以下のように問題は解消されている。

  1. モンスターの大量追加
    モンスター総数がJ2で311種類まで増え、J1でのかさ増し込みでも十分なモンスターの量を提供するようになった。DQMシリーズ定番の人気モンスターも多々復活した(神竜やデュラン、わたぼう、キングレオやローズバトラー、ゴールデンゴーレム等)。この時点でほぼ解決していたが、J2Pでは更に増え421種類となった。J2時点ではナンバリング最新作のDQ9のモンスターが追加し切れていなかったのを追加したり(エルギオスや帝国三将等)、DQM旧作からの復活(虹孔雀やワルぼう等)であったり、充実度は高い。

  2. 低ランクモンスターの最強化
    低ランクモンスターを進化配合により高ランクモンスター相当まで鍛えられるようになった。例えばFランクのスライムであれば、レベルを上げたスライム同士の配合でCランクの強スライム、レベルを上げた強スライム同士の配合でSランクの最強スライムとなる。ステータス上限や特性の個数、耐性等もSランクとして見劣りしない水準まで強くなる。J2時点では進化配合に対応しているのはFランクモンスター7種類のみであったが、J2PではAランク以下の全モンスターの最強化が可能となり、全モンスターがSランク相当の強さを持つようになった。これにより、DQMJのようにステータス上限や所持する特性等モンスター毎の差異や個性を残しつつ、キャラバンハートまでのように全モンスターが強くなれるようになったと言える。

  3. 特性や耐性の設定の充実
    J2でモンスターの特性や耐性の設定が充実し始め、J2Pでそれが完全に全モンスターに及ぶようになった。J2の段階でモンスターは特性を最大4つ持ち、特性も3項目以下に限定されないようになったものの、まだ全てのモンスターがその恩恵に与れた訳ではなかった(例えばマドハンドやリザードキッズは特性を持たず、最強スライムは耐性が炎ブレス反射の1項目のみである)。J2Pになり、最強化したモンスターや元々Sランク以上だったモンスターは全て特性を丁度4つ平等に持つようになり、系統共通耐性(一部例外はあるが、例えばスライム系であれば全員マヌーサやハックは無効、デインやマホトーン、ダウンは半減、ドルマ、マホトラ、ボミエは弱点)が設定され、どのモンスターも耐性に数多くの項目が並ぶようになった。まだ最強化していないAランク以下のモンスターであっても特性を2つは持っており、本格的な育成に入る前、ストーリー攻略段階の冒険であっても特性が重要なシステムとなっている(例えばイオ系のコツとイオブレイクを持つシャイニングに地響き、ヒャド系のコツと吹雪ブレスブレイクを持つブリザードに鉄砲水を使わせることがストーリー攻略法としてYoutubeで紹介されていたりする、下の動画参照)。

  4. 特殊配合のパターンの追加
    モンスターと配合パターンの追加により、後の作品程ではないが、配合の自由度と楽しみが増している。

このようにJ2及びJ2Pに至ることで、DQMJが持っていた多くの不満点を解消していることが分かる。

J2既プレイを前提にしたやり込みする人向けの調整

J2からJ2Pの変化としてはモンスターやスキル、特技等の追加、配合パターンやフィールドの出現モンスターの変化、追加マップや追加ストーリーの存在が挙げられるが、タイトルのProfessionalの文字通り、それらの調整は全体的にJ2既プレイのやや上級者向け仕様になっている。そのことが分かるのが、J2とJ2Pでフィールドで画面を映すカメラの角度が変化していることである。

J2PではJ2と比べてカメラの角度が少し水平に近くなり、足元は見え難いものの遠くまで見えるようになっている。カメラ角度の変更が分かり易いのが飛行船すぐの倒木を滑り降りる場面で、J2では木の断面が画面に映らないのに対しJ2Pでは映ってしまう。

主人公が倒木を滑る場面(J2)
主人公が倒木を滑る場面(J2P)

カメラ角度の変更があったことは実証されたとして、これが何故上級者向けの調整だと解釈出来るのか。それはゲームをクリア後も長く遊ぶには便利、J2未プレイだったりクリアして終わりなら不便な仕様だからである。カメラ角度が変わって遠くまで見えることは、戦いたい、仲間にしたいモンスターを探す上で有利である。反面、足元が見え難い為、下り坂や下り梯子がよく見えず、下画面の地図を適宜確認しなければ移動出来る方向が分からなくなることがある。J2を既プレイ、或いはJ2Pを長時間やり込めばマップは覚えるのでこの不都合は解消されるものの、初心者にはやや取っ付き難い。厄介な地形の一例を以下に示す。

一見この先に何もない崖に見えるが……
近付くと!マークがあり
崖を下れることが判明する

このカメラ角度変更はJ2Pの追加マップ故にJ2で予習が出来ず、かつ高低差の大きいピピッ島では痛感することになるであろう。当然ながら、マップの視認性は以降の作品では改善されている。

その他、J2P要素のうち上級者向けのものとしては、追加ボスのヒヒュドラード、スラ・ブラスター、強化されたエスタークの強さも挙げられる。J2Pを今でもやっているプレイヤーは上級者であり、イルルカやJ3、J3P等以降のDQMでは対策が必要なボスが段々と一般化してきたこともあり、対策を練ることで普通に勝てるから「弱い」と評価する風潮があるように感じられるが、配合を繰り返して高ランクモンスターでパーティを固め、レベルを上げるという「普通」のやり方では突破が厳しいボスというのは、DQMでは彼等が初めてである(単なるレベル上げによるゴリ押しが通用しないボスは、DQ本編を含めればDQ9で既出ではある)。

ヒヒュドラードの強さを検討してみよう。使う特技は魔神斬り、仁王斬り、ドルマドン、オーロラブレス、獣王激烈掌、雄たけびで、裏ボスとしては後の作品とそれ程変わらず、彼固有の行動等は無い。1ターンの行動回数も2~3回でこれも同様。それに加えヒヒュドラードに挑む前にJ2裏ボスのオムド・ロレスは倒しているので、光溢れる地でメタルキング狩りも出来るようになっている。そしてRTA走者のような極めたプレイヤーはほぼバルザック単騎で倒してしまう。要素を列挙すると、一見あまり強そうに見えない。

しかし、よくよく考えてみるとそうではないことが分かる。使う特技がテリワン以降の裏ボス連中も使うようなものばかりというのは、パーティメンバーが最大4匹に拡張し、バランス調整の為ステータス上限(特にHP)が上昇したテリワン以降の戦力で戦うような相手と、インフレ前のJ2P戦力で戦わなければならないということである。ヒヒュドラードに挑む前にメタル狩りでしっかりレベル上げすることが前提の強さであって、テリワンやイルルカの裏ボスのようにメタル狩り前に挑む強さにはなっていない。オーロラブレスや獣王激烈掌による全体300弱のダメージの痛みは、テリワンやイルルカとJ2Pではその重さが明らかに異なる。AI2~3回行動も、1ターンに複数回行動出来るモンスターが少なく、最大3匹でしかパーティを組めないJ2Pでは味方側と手数がほぼ同じで、複数回行動する4匹パーティを組んで手数ではボス側に勝るテリワン以降と同列には扱えない。バルザック単騎で倒せるというのも、確かに奇跡のメイスを装備したバルザックは破壊力抜群で通常攻撃と同時に回復もするからタフでもあるが、ヒヒュドラードの猛攻に耐えられるのはバルザックに回復特技を覚えさせ、様々なアイテムも駆使した上でのことであり、何度もJ2Pをやり込んで知識や経験を得ているのが前提である。単にバルザックのパワーで押し通すのはオムド・ロレスまでは通用するが、ヒヒュドラードには無理である。ヒヒュドラードより強いスラ・ブラスターやエスタークであれば尚更であろう。尤も、何れもメタル身代わり(+スカラ+会心封じ)で突破可能であり、ボス毎に異なるパーティや戦術を用意する必要が無いという意味では、J3Pのボスよりは遥かに楽であると今となっては言える。

そしてJ2P最大の高難度要素にして、YouTuberの恰好のやり込みの対象ともなっているのが、J2Pで初登場した勝ち抜きバトルである。テリワン以降では本作の難度の高さを受けて様々な緩和措置が取られるが、本作では途中に休憩を全く挟めない過酷なものとなっている。詳細は以下の動画等を参照。尤も、連勝記録を競い合う数人のヤバい人がいるからコンテンツ、ある種の見世物として成り立っているだけで、普通の人が遊んで楽しい要素かと言われるとそれは否定するしかないのだが。

未来作品へ至る途中経過としてのJ2P

J2Pの後にはDQMがリリースされるハードが3DSに変わり、テリワン、イルルカと続くが、それらの作品ではJ2Pが解決した諸問題がより洗練された形で解決されている。先ずはそれらについて記述する。尚、J3(P)はストーリーこそJ1、J2(P)から繋がっているものの、登場モンスター等の要素やシステムに大幅な変更があり、単純な過去作の拡張という路線ではないので、J2Pを主題とする本稿ではあまり触れないものとする。また、J2(P)が新しく生んでしまった問題に対する解決についても記述する。

J1の問題点に対するJ2P以上に洗練された解決策

J1で問題だったことが、J1で導入されたシステムの洗練によって有機的に結合して解決されたのがテリワン、イルルカである。

テリワンには609(スマホ移植のテリワンSPでは659)、イルルカには803(イルルカSPでは903)種類ものモンスターが登場するが、これだけの数のモンスターが登場出来るのは位階配合という仕組みのお陰である。というのも、DQM1、2のような特殊配合を多くのモンスターに多くのパターンで割り当てる仕組みの場合、モンスター数$${N}$$に対し実装すべき特殊配合のパターンが$${N^2}$$のスケールで増大する為、モンスター追加に伴って急速に開発コストが増加してしまう。4体配合というシステムまで導入されている現在では尚更である。DQMJ当時は配合の面白さを損なっていた位階配合であるが、テリワンやイルルカに至って、その利点を発揮し始めたと言える。特にイルルカSPともなると(色違いを同一視した場合)DQ本編に登場したモンスターの大多数を網羅するようになり、モンスターは十分以上に豊富になったと言える。モンスターの増加に伴って特技、特性、スキルも大幅に増えていることは言うまでもないし、スキルが増えれば耐性の上げ方の方法も増す。

特殊配合のパターンも作品を経るにつれて増加し、配合ルートを考える楽しみも増してきており、ストーリー序盤のモンスターだけからSSランクモンスターを配合する動画が制作される程である(動画はイルルカSPのものであるが、同じことは3DS版のイルルカでも可能である。一部、リセットを繰り返し性別が万能のモンスターを作らなければならないという手間は増えるが)。

好きなモンスターを育てたいということに関しても、J2Pの進化配合より発展したシステムとしてテリワンでは究極配合、イルルカでは新生配合が登場している。見栄えという面では、進化配合ではSランクにしかならなかったところ、究極配合や新生配合ではSSランクにまで上昇する。実質の面では、究極配合や新生配合は元々がSランク以上のモンスターに対しても可能となり、加えて特性に自由度が生じるようになった。究極配合では追加する特性を幾つかの選択肢の中から選ぶことが出来、新生配合では特性を1つ任意のものに交換することが出来る。これにより、同じ「究極(新生)配合されたモンスター」であってもそれぞれ特性が異なり、より個性ある育成が行えるようになっている。「好きなモンスターを強くする」というものから「好きなモンスターを好きな方面に強くする」というものへ発展したと言える。

J2(P)で新たに生じた問題に対する解決

J2PはJ1の複数の問題点を解消した良いゲームであるが、J1の時には無かった新しい問題を生み出してもいた。それらが後継作品でどう解決されたか述べていく。

J2Pの問題点として第一に挙げられるのが配信限定モンスターの増加と配合チャートの巨大複雑化、そして配合チャートへの配信限定モンスターの組み込みである。J2Pの配合の終着点であるヒヒュドラードまでの配合の流れを図にすると、以下のようになる。

ヒヒュドラードまでの配合チャート

ここで、赤い文字で書かれているのは通信が必須のモンスター、斜体で書かれているのは通信無しでは1つのソフトで1匹しか手に入らないモンスターである。邪神レオソード、ワルぼう、バルボロス、少年レオソードが通信必須のモンスターであり、キャプテン・クロウとエスタークは1匹ずつしか仲間にならない。また、キングスペーディオは2匹必要になるが、1つのソフトでは1匹しか仲間にならず、これも通信が要求されることとなる。そして竜神王を配合で2回作らなければならないが故に配合ツリーが異様に煩雑になっていることも図から読み取れるであろう。

当然ながら、これだけの配合を行うのは並大抵の労力ではない。配合がここまで難しいとなると自分の好きなモンスターを仲間にすることが出来ないプレイヤーも多々出てくるであろう。そこで、テリワン以降の作品では配合の難度が緩和されている。

緩和策として先ず挙げられるのは、戦闘で仲間に出来る出来る高ランクモンスターの拡張である。それはフィールドで野生で出現するモンスターを増やすことだけでなく、J2Pには無かった他国マスターというシステムの導入によっても達成されている。J2Pでは配合でのみ仲間になるモンスターを直接捕まえることが出来る為、配合ツリーの深さが小さくなっている。イルルカでは加えて錬金鍵の報酬でモンスターを仲間にするという方法まで追加され、配合無しで得られるモンスターの範囲が極めて広くなっている。

配合それ自体に関しても緩和策が取られている。単に配合パターンが追加されただけではなく、悪魔の書系のモンスターの登場で4体配合が楽になり、貴重なモンスターの固有スキルの量産も可能になった。

そしてもう1つ挙げられるのが、巡り合いの扉(鍵)の導入である。巡り合いでは自分が既に仲間にしたことのあるモンスターを捕まえることが出来る為、配合が異様に難しいモンスターが複数必要になったとしても、配合で作らなければならないのは最初の1匹のみとなり、それ以降は単に捕まえるだけで良くなる。これが配合を驚異的に楽にしている。

以上3つの改良により、イルルカSPにおける配合の終着点までのチャートは次の記事に示すように、J2Pより遥かに短くなっている(マジェス・ドレアムの図で名もなき闇の王までの部分のみを見ればイルルカの、魔戦神ゼメルギアスの図を見ればテリワンの配合チャートの流れも確認出来る)。

また配信限定モンスターについても、イルルカではオンライン対戦した相手とすれ違いが行える仕様及び夢見るタマゴのお陰でプレイヤー間での二次配布が比較的容易に行えるようになっており、持っていないプレイヤーにほぼ配ることの出来ないJ2Pより便利になっている。無論、スマホ移植版であるテリワンSPとイルルカSPでは配信限定モンスターには入手方法が新しく設定されており、全てのモンスターを一人で集めることが可能となっている。

他にJ2(P)の問題点として、モンスターのサイズという概念の導入によって好きなモンスターを自由に並べられなくなったということが多々言われている。例えばゴールデンスライム、神竜、ローズバトラーの3匹でパーティを組むことは出来ない。DQMJに登場出来なかった神竜やローズバトラーがJ2(P)で折角復活したのに、DQM1当時に可能だったパーティを構築することが出来なかったりするのである。この問題はテリワン、イルルカまでは解決しないものの、DQMJ3にて縮小を含むモンスターのサイズ変更が完全に自由になったことで解決した。その仕様を引き継ぐDQMJ3P、イルルカSPにおいても可能である。

まとめ

DQMJ2PはDQMJが持つ多くの欠点を解消した良いゲームである。しかし同時に新たに問題も生じており、それらはテリワン以降の作品において漸次的に解決されている。

では、DSのインターネットサービスも終わっておりモンスターを揃えることは出来ないこのゲームを、今の時代にやる意味はあるのか。基本的には後継作品の方がより充実しており、通信サービスも提供されているので、普通のユーザーにとっては特に無いと言う他ない。しかし、DQM2やキャラバンハートと同じく「3枠パーティ制DQMの最終作」ではあるし、勝ち抜きバトルという(自己満足でしかないが)やり込み要素はある。歴史的意義ややり込みに興味があるなら遊ぶのも一考であろう。

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