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清風堂のおすすめ vol.2 (2023/9/16)

こんにちは。清風堂書店の谷垣です。
無事にvol.2を配信できてほっとしております。


 さて、今回は「これから出る本」がメインとなります。毎日、書店には大量の注文書FAXが届きます(注1)。そのなかから私が気になったものをいくつか取り上げ、ご紹介していきます。参考にしていただけると嬉しいです。その前に、いま当店でいちばん売れているフェアをご紹介します。

(注1)「この時代にFAX⁈」と驚かれるかもしれませんが、出版・書店業界ではあたりまえの光景です。最近は、タブレットを片手に営業にいらっしゃる出版社も増えていますが、紙の方がなにかと便利なことも多いのです。

『ようびの器』フェア

カウンター前にて『ようびの器』(青幻舎)を展開しています。

いま展開中のフェアのなかでいちばん売れています。

「工芸店 ようび」は1970年に大阪で創業。店主・眞木啓子さんの器作りや料理への見識、顧客との交流など、すべてがつまった一冊です。柔らかく味わいある表紙絵に、手触りのよい紙。装丁も美しいです。初めて本書を手に取ったときは、喜びでいっぱいになりました。

ぜひ手にとってご覧いただきたいです。

丁寧な説明や写真とともに、器づかいの大切さやコツがたくさん掲載されています。毎日1ページずつゆっくりと、器の美しさや奥深さはもちろんのこと、日々の暮らしや食べることの大切さに気づかされます。

素晴らしい本に出会えて、こうして紹介することができて幸せです。この機会にぜひ手に取ってご覧ください。

「工芸店 ようび」は新御堂筋に面した曽根崎ビルの1階にございます。当店のご近所さんです。ぜひ店舗にも足を運んでみてください。(徳網)

これから出る本

10月発売の新刊情報です。今回ご紹介するのは6点。

①『マルクス解体』斎藤幸平/講談社

 10下旬頃の発売。マツダケンさんの装画がかっこいい…。『大洪水の前に』(堀之内出版)の装画もとてもすばらしかったですよね。今回の新刊は、斎藤幸平さんの研究の集大成となるようです。当店はサイン本が入荷予定。お楽しみに。

②『日没』桐野夏生/岩波書店

 10月中旬頃の発売。岩波現代文庫から出るというのも珍しいですね。筆者はふだん小説を読まないのですが、これはいま読んでおかないといけない、いや、読まざるをえないのではと感じています。

③『根っからの悪人っているの?』坂上香/創元社

 10月中旬頃の発売。「あいだで考える」シリーズの第5冊目です。本書は映画『プリズン・サークル』を題材に、著者と10代の若者が「サークル(円座になって自らを語りあう対話)」を行った記録。それにしても、タイトルのネーミングセンスが毎回素晴らしいですね。

④『関西フォークとその時代』瀬崎啓二/青弓社

 10月下旬頃の発売。なぜ関西で誕生したフォークソングが全国で支持されたのか。その背景には、ベトナム反戦運動や学生運動に参加する若者と、それを支える文化人という構図があったようです。私は「堺ブルース・フェスティバル」に演奏者として参加したことがあるのですが、そこではじめて大阪とブルースには深いかかわりがあることを知りました(こんな記事もあります)。フォークソングもまた同時期に、関西に根を下ろしていたんですね。

⑤『WORKSIGHT 21号 ー詩のことばー』

10月中旬頃の発売。まだ詳細が公開されていませんが、楽しみな特集です。当店でも7月のイベントにお越しいただいた、民俗学研究者・畑中章宏さんの論考も掲載予定だとか。

⑥『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』論創社

 10月下旬頃の発売。森達也さんによる編著です。バレにくいやり方でこっそりと、行政が弱者を排除しようとするのはなぜなのか。11人の執筆者がていねいに解説します。

 あえて言いますが、こっそりと排除しようとする<せせこましさ>というか、その陰湿さこそが「弱者」の発想ではないかと私はおもいます。人は弱いから群れたがる。それがマジョリティではないかと。

そのほかフェア情報

①ブルーロックいちばんエゴい県

『東京リベンジャーズ』に続き、『ブルーロック』でも始まりました。シリーズ一冊につき、特製47都道府県イラストカードを一枚ランダムで配布しています。色紙やポスターが当たるキャンペーンも実施中。

②葬送のフリーレン・スタンプラリー

 10月にアニメ放送が決定。それにあわせて、魔導書型ミニノート(全8種)がもらえるフェアが始まりました。お買い上げ後に、ミニノートにスタンプを押してください。スタンプは全6種類。店舗によって置かれている種類が異なるので、コンプリートするには何軒かまわる必要があります。

【コラム】文学フリマ大阪に行ってきました

 そもそも文学にあまり馴染みがないのですが、はじめて足を運んでみました。どういう方々が出展されているのか事前に調べてみると、文学だけでなくさまざまなジャンルが並んでいるようです。なかには、書店の棚で見かける出版社の名前も。これなら私でも楽しめるかもしれない。当店にも営業にお越しいただいている出版社の名前を見つけたから、ご挨拶もかねて伺おう。

 谷町線・天満橋駅をおりて、駅直結のビルに入ります。13時頃に会場に到着し、閉場時間までずっと会場をウロウロしていました。そのようすは傍から見れば、かなり不自然だったのではないかと今でもおもいます。それはなぜか。これは「文学フリマ初心者あるある」なのかもしれませんが、とくに目星をつけずに会場に突入してしまい、どこから手をつければいいのかわからず途方に暮れていたのです。知らないジャンルばかりだから尚更でした。

 とりあえずいったん落ち着こうと考え、会場を出ることに。すると、向かい側に「見本誌展示場」があるではないですか。入ってみると、テーブルにはところせましと見本が並んでいます。なるほど。ここなら誰にも邪魔されずに、自分のペースで好きなZINEを探すことができる。しかし、それ気づいたのは、閉場する1時間前のことでした。時間を無駄にしてしまった…。と言いつつも、1万円近くお金を使ってしまっています。

『女のくせに』は水野ゼミの本屋さんが復刊したもの。特装版を入手しました。
会場の近くにある「王将」で、買った本を振り返る。ビールがうまい。

 じつは一つだけ、ここは真っ先に伺おうと決めていたブースがありました。水野ゼミの本屋さんです。

水野ゼミの本屋

 水野ゼミの本屋は大阪工業大学・知的財産学部の学生さんが運営されています。じつは私も同大学のOBなのですが(学部まで一緒!)、これはぜひとも伺わねばと思ったのでした。
 水野ゼミではこれまでに、川上眉山・泉鏡花・中平文子の作品を復刊。西天満でシェア型本屋を運営し、イベントにも活発に取り組んでおられます。大阪で書店めぐりされる方は、ぜひお立ち寄りください。


「清風堂のおすすめ vol.2」終


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