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「管理栄養士は稼げない」を再考する

「管理栄養士は給料が低い」
「管理栄養士は稼げない」

管理栄養士にまつわる話題でよく出てくる話題です。確かに管理栄養士の給料は低い。僕は病院の管理栄養士として働いていましたが、残業代抜きだと月の手取りは17万円台でした。残業代を入れても19万円台がほとんど(残業時間は月平均10時間弱でした)。

ボーナスは病院が儲かっているか否かに左右されるのですが、あまり経営状態は良くなかったので、年間で2ヶ月程度でした…汗

世間一般的にみても、20代中盤で手取り17〜19万円って少ないと思います。

ちなみに管理栄養士の給料はこんな感じだそうです。

管理栄養士&栄養士の給料事情
リクナビNEXT 職業によって年収が違う!管理栄養士の資格を活かせる仕事って?

一般的な年収については参考としてこちらをどうぞ。

年収を平均値で見ることや、年収の額が額面なのか手取りなのか?など議論の余地はありますが、やはり管理栄養士は一般的な年収よりも50〜100万円ほど低いようです(20代で見た場合)。

なかなか悲しい現実ですが、受け入れなければなりません。


では、なぜ管理栄養士の給料が低いのでしょうか。

管理栄養士の給料ネタあるあるとして、「仕事はしんどいのに給料はこんなに少ない!」という主張です。

たしかに、管理栄養士の仕事ってもっと評価されるべきだと思います。仕事内容は多岐に渡り、創造的な仕事も多いです。僕自身が管理栄養士だからただそう思うだけかもしれませんが…。

でも、給料は低い。それはなぜなのか、僕なりに考えてみました。


僕なりの結論は、

管理栄養士の仕事は公益性が高いから。


どういうことか解説していきます。


そもそも公益性とは、

【公益性】
公共の利益に関わるさま。特定の個人や組織のみではなく広く社会一般の利益に関する様子。「公益性のある事業」などのように言う。
(Weblioより)

だそうです。


管理栄養士の職場って病院や施設、行政、栄養教諭、保育園、またはそれらの給食現場が主だと思いますが、公益性高くないですか?

つまり、"管理栄養士"という職業で見た場合、色んな人・多くの人の役に立っているということです。

また、一つの職域に限っても、特定の個人や組織を対象としつつも、何かと「広く社会一般の利益に関する」仕事内容だと思うんです(もちろん全ての仕事がそうだとは思いません)。


例えば病院の管理栄養士だと、栄養指導するのは一人の患者さんでも、その患者さんの生活習慣を変えて疾患を予防することで節約される医療費はかなりの額になります。
また、栄養指導を受けた患者さんが家族や友達に話をして、もしかしたらより多くの人の役に立っているかもしれません。

行政や栄養教諭はどちらかと言うと集団の栄養管理が主だと思うので言わずもがなです。

保育園では、ちょっとした管理栄養士の一言や関わりが、その子どもの一生の生活習慣の礎となるかもしれません。もしそうなれば、将来の社会にとって素晴らしい意味を持ちます。


このように、管理栄養士の仕事は公益性が高く、そもそも稼ぐこと(=私益を満たすこと)を目的としていないため、そのリターン(見返り)となる給料は高くならないのだと思います。

例として適切か分かりませんが、高級レストランでは、最高級の食材や珍しい食材を使って、良い腕の料理人が最高に美味しい料理を作り、最高の接客で非日常の時間を提供します。
「美味しい料理を食べたい」「非日常を味わいたい」という私益を満たしたい人がいるから、高級レストランは高い値段を設定してもお客さんが集まるのだと思います(もちろん食材費や人件費などの経費と利益を計算してのことだと思います)。

そしてお客さんが集まって有名になればもっと繁盛して儲かります。そのために、日々料理人たちも技術を磨いたり食材や調理の知識を身につけているのでしょう。

近い業種として比較しやすそうだっただけで、高級レストランをはじめとする外食産業を批判するつもりは微塵もありません。


管理栄養士の仕事には、基本的に高級レストランのような私益を満たす要素はかなり少ないため、個人的には「管理栄養士は稼げない」といった論調は的外れのように感じます。


一つ注意すべきは、「仕事量のわりに、管理栄養士は稼げない」という主旨の場合、単純にその職場がブラックなだけの場合があります。
他の人の職場環境を聞いてみたり、逆に自分の職場環境を話してみて、客観的に仕事量や職場環境を評価すると良いでしょう。


管理栄養士の仕事が辛くて辞めていく(辞めたい)方は常に一定数存在していると思います。給料はその原因の一つとなりうるでしょう。

しかし、始めに見たように、公益性が高い管理栄養士の仕事って、やっぱり素晴らしいと思うのです。

どの職域でも主役というよりは縁の下の力持ち的な役割ですが、決して欠かすことのできない存在です(縁の下の力持ちなので認知度が低いのだと思いますが…)。

これから日本は高齢化がどんどん進んで、介護(高齢者のケア)と健康寿命の延伸が重要なテーマとなってくると思います。

間違いなく、管理栄養士の活躍が必要不可欠です。そして、上記2つのテーマは、悲しいかな、公益性がめちゃくちゃ高いのです。


目の前の仕事が辛いと視野が狭くなってしまうのは仕方がないと思います。

ただ、少し余裕が出てきたときに、自分たちの仕事の意義(公益性、社会にどう役に立っているか)について考え、それをぜひ家族や友人たちに話してほしい。SNSで発信しても良いと思います(公益性について考える場合、もっと社会や政治など世の中全体に視野を広げる必要があるので、そのあたりの教養を身につけていく必要があるかもしれません)。

管理栄養士の内輪でマウントを取り合うのではなく(臨床が一番とかそんなのマジでどうでも良い)、世の中(家族や友人など近い人で構いません)に自分たちの仕事の意義をもっと話していきましょうよ。もっと自分たちの仕事に誇りを持ちましょうよ。

どういうきっかけであれ、多少なりとも「良いな」と思って管理栄養士になったのなら、その魅力を少しでも伝えていきましょうよ。「給料よりもやりがい」と言われる管理栄養士ですが、上等じゃないですか。目に見えないところで世の中の役に立ってるって、カッコいいじゃないですか。


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管理栄養士一人ひとりが、自分自身の仕事の意義について考え始めると、この業界や世の中が良くなっていくと思います。

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