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国試を終えたキミへ

2019年の3月はいつもより暖かい気がする。


社会人最初のホワイトデーは、職場の人へお返しするのが大変だった。男性管理栄養士は、モテる。


季節の変わり目だからか天気は変わりやすくなっている。この雨が降り終われば、やっと春本番という感じだ。


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卒業。新生活への準備。別れと出会いの季節。


一般的な会社勤めのサラリーマンは、予算の締めなどに追われているのだろうか。


日に日に陽射しがやわらかくなって行くなかで、日常はせわしなくも淡々と流れていく。

世の中は早く新年度と春の訪れを待ちわびているような、日本社会全体が少しだけ気分が上がっているような、そんな気がする。


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この時期、ぼくたち栄養士界隈の人間にとっては忘れられない一大イベントがある。

それは、国家試験だ。

この時期の受験や試験は日本の風物詩とも言える。

テレビCMでも受験に関連したものが流れてきて勝手に目と耳に飛び込んでくる。

自動的に「自分のころはどうだったか?」なんて、自分の短い人生における節目節目の受験のことを思い出してしまう。こんなエモいnoteを書きたくなったのはCMのせいにしよう。


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国試はまさに、4年の集大成と言える。

今年ぼくは、病院栄養士1年目として働いた。無性に、先輩として、顔も知らぬ後輩たちへ言葉をかけたくなった。

もしくは、3年前に国試を受けた自分へ。




4月から管理栄養士になるキミへ、このnoteを贈る。


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■学生生活はどうだったか。

4年間の学生生活はどうだっただろうか。振り返ってみてほしい。


サークルや部活が中心だったか?バイトをしてお金を貯めて旅行に行きまくったか?授業や実習、実験が忙しくてバイトする暇も遊ぶ暇もなかったか?一生の趣味はできたか?燃えるような恋をしたか?人の温もりは感じたか?同じ志を持った仲間と出会えたか?「あいつがいるから俺も(私も)頑張ろう」と思える人はできたか?人生の指針となる人に出会えたか?


上記のことが全てイエスである必要はない。イエスでないと「充実した大学生活だった」と言えないことも、ない。

むしろそんな人は稀だろう。


振り返ってみてほしい。大学で過ごした時間以外のことも全て。


キミは、この4年間で何を学んだか?


きっとたくさんのことを経験し学んだだろう。それをこれからの人生にしっかりと活かすんだ。「あの頃は楽しかった」と振り返るだけの学生生活ではなかっただろう?




■そもそもの動機は思い出せるか。

キミが大学受験で進路を選択した際の、そもそもの動機は思い出せるだろうか。

キミは「管理栄養士養成校」という、他の一般的な学部や学科に比べると専門性が高い進路を選択した。


動機はどうであれ、キミは国家試験を受けた。合格すれば国家資格を取得する。栄養の専門職・管理栄養士のスタートラインに立つ。


動機は人それぞれ違うだろうし、正解・不正解はない。

だけど「栄養学を学びたい」という志を持った当時の想いは、程度の差はあれど、ほぼみんなに共通しているはずだ。

どうかその想い・動機を忘れないでほしい。

この春から晴れて管理栄養士になるにあたって、一番最初の、根本の動機は、どんなときでもキミの支えになるはずだ(資格を使っても使わなくても)。




■疑問を忘れるな。

ぼく個人の経験に基づく意見になるので、主には(急性期)病院で働く人に向けたものになるが、管理栄養士として働く人には少なからず共通しているかもしれない。


はっきり言うと、医療現場は実に効率が悪い。

それは、インシデント防止であったり、医師の指示でないとほとんどの職種は業務を遂行できなかったりするからだ。

だから仕方がない部分もある。決められたルールの中でやっていくしかない。また、古臭い考え方ややり方が残っている職場も多い。

だが、それを鵜呑みにはするな。


他の上司や先輩が当たり前にやっていることでも効率が悪いことや馬鹿馬鹿しいことは間々ある。

「この業務になんの意味があるのか」と思うこともある。

明らかに効率が悪い業務や無意味な業務であっても、上司や先輩は違和感を持たずに平然とこなしているかもしれない。


しかし、キミが抱いた疑問は、間違いなくキミのモノだ。自分の気持ちを疑ってはならない。疑問に思ったことはしっかり自分の中に留めておくように。

いつか必ずキミの肥やしになる。


そして、良い意味で職場には染まらない方がいい。客観的な視点で物事を観察するのは、何においても大切なことだ。

上司が言うことが常に正しいともベストとも限らない。上司を信用しすぎると、あとで痛い目を見る。

特に、就職する最初の職場というのは特別な想いを抱きがちだ。他を知らないから「仕事・職場・上司とは、こういうものだ」と思ってしまいがちだ。



素直、正直、ハキハキとした返事、笑顔、一生懸命、積極性…

世の中のいわゆる「理想の新人像」を演じる必要はない。自分の理想ではない「誰かの理想」を演じても良い仕事はできない。




■人間関係は運だ。

キミが就職する職場がどんなところかは、入ってみないと分からない。

面接では優しそうな上司だったとしても、部下になった途端、理不尽な説教をする常習犯になるかもしれない。

姑みたいな嫌がらせをしてきたり嫌味を言ってくる古株のおばちゃんがいるかもしれない。

はたまた、優しく何でも教えてくれる親切な先輩ばかりの職場かもしれない。

ぬるま湯に浸かりきっている、向上心の欠片もない職場かもしれない。


人間関係は、運だ。

合う職場もあればとことん合わない職場もあると思う。

これは、完全に運だ。だから、人間関係が悪かったとしても「運が悪かっただけ」と思おう。


そして、もうだめだと思ったら、やめてしまっても良いと思う。次の「人間関係ガチャ」を引く勇気を持とう。




■方向転換もあり。

憧れの仕事に就けたとしても、やってみたら面白くなかった、ということもあるかもしれない。そのとき感じた自分の気持ちに正直になろう。

「せっかく資格をとったから」「親に勧められたから」などと自分の気持ち以外の理由を並べて仕事を続けても、人生の時間の無駄だろう。

他にやりたいことが見つかれば、そちらに飛び移っても良いと思う。人生の方向転換は、早いほうが良い。

栄養士は確かに素晴らしい仕事だが、世の中には数え切れない程の素晴らしい仕事が、ある。




■漫然と過ごしてしまっても良い。

「常に向上心を」「常に成長を」「早く一人前に」「休日は勉強会、学会へ」

一番の下っ端であるキミは、こう思っているかもしれない。入りたてのときはモチベーションも高い。


だけど、常に高いモチベーションを保つのは至難の技だ。仕事をこなすのに精一杯で、徐々に勉強する時間も気力も削がれていく。

次第に、漫然と「仕事をこなす」だけになってしまうかもしれない。


でも、それでも良い。真面目に熱く仕事をするのは大事かもしれないが、自分を追い込みすぎてしんどくなってはいけない。

心身ともに健康でないと、患者は救えない。



ただ、漫然と過ごす日々が長くなったと思ったら、自分と向き合ってみよう。

「自分はどうしたいのか」「あのときどうすれば良かったのか」「もっとできることはなかったか」「なぜ栄養士を目指したか」「誰かの役に立っているか」「自分はやりたいことができているか」…

自ずと自分は何をするべきかが、見えてくるだろう。




■最後に

なんだか、応援しているのかそうじゃないのか、よくわからないまとまりのない文章になってしまった。

ただ一年先輩なだけなのに、少し偉そうに語ってしまったかもしれない。


管理栄養士の仕事はとてもやりがいのある仕事だと思っている。直接人の役に立つことができ、笑顔を見ることができる。誰かの人生を左右させることもできる。

だけれども、「こんなことくそくらえ」「やってられるか」と思うようなことも、たまにある。

覚えておいて欲しいのは、「ユートピアは存在しない」ということだ。理想と現実のギャップは必ず生まれる。

社会は厳しい。特に医療の現場は、いろいろな意味で厳しい。


だが、それを乗り越えられなくても良いと思う。キミのやり方で、下をくぐっても良いし、横に避けても良いし、回れ右をしても良いし、軽々とジャンプして飛び越えてしまっても良い。


要は、キミ自身が自分らしくいられればそれで良いのだ。それが、キミ自身の価値を造り、オンリーワンの管理栄養士になれるだろう。

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