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栄養系学生におすすめの書籍〜学生のうちに読んでおくと良いことあるかもよ〜

管理栄養士のせいです。現在ぼくは、中規模の急性期病院働き始めて2年目になります。勉強の日々ですが、自己学習の媒体としてメインなのはやはり本です。

新卒で病院で働いていると、「もっと先にこういう本に出会いたかった」とか逆に「学生のときにこの本を読んどいて良かった」っていうことがあります。もちろん病院だけではないと思いますが。

そこで今回は、ぼくが学生時代(院生時代)に読んだ本や、働き出してから購入した本の中から、これから管理栄養士として働く・働きたい学生におすすめする本を紹介します。学生時代に読んでおくと、きっと働きだしてからでも役に立つと思います。もちろん、すでに管理栄養士として働いている方にもおすすめです。

どうしても臨床栄養よりになるのはご了承くださいm(_ _)m


①栄養疫学を学ぶならこの3冊

栄養疫学・EBN(Evidence Based Nutrition)の第一人者、佐々木敏先生の書籍はおすすめです。ぼくたち栄養士のバイブルである「日本人の食事摂取基準」の策定にも携わっている著名な先生です。そんな佐々木先生の書籍から3冊紹介します。

■『栄養データはこう読む!』/『データ栄養学のすすめ』

この2冊はすでに持っている方も多いかもしれません。姉妹書(『栄養データはこう読む!』は2015年、『データ栄養学のすすめ』は2018年)になっており、両方読むとより理解が深まると思います。どちらの書籍も、巷にあふれる健康法や食事法について科学的な視点から考察しており、この書籍に書いてある「知識」だけでなく、読み終わった後に得られる「データの見方」や「情報を目にしたときの考え方」が何物にも変え難いです。

例えば、ただ漫然と「コレステロールを上げないようにするにはこれに注意すれば良いのか」という知識を得るために読むのではなく、「こういう研究結果だからこういう結論なのか」という読み方を意識すると良いでしょう。

■『わかりやすいEBNと栄養疫学』

前述の2冊は読みやすい書き方(著者の語り口調で書かれている)であったり、内容も身近にあふれる話題でとっつきやすい書籍でした。ある種、読み物的なノリでも読める書籍です。その2冊に比べると、こちらの『わかりやすいEBNと栄養疫学』はどちらかというと教科書チックです。

EBNと栄養疫学を理解するために必要な知識(例えばエビデンスレベル、文献検索方法、研究デザイン、統計学など)の説明・解説が主になっています。CHAPTER 5の「栄養疫学入門」では、栄養疫学で注意すべき事項(食事調査方法、誤差、エネルギー調整など)について解説されており、世の中の栄養疫学に関する研究結果を読み解くのに役立ちます(研究結果だけに注目するのではなく、その研究がどのような方法で行われたか、に注目できるようになる)。

目次だけ見てもややとっつきにくい感はありますが、丁寧な解説と図表をふんだんに載せているため非常に理解しやすくなっています。また、あとから辞書的な使い方もできます。全て読み切るのに多少時間はかかりますが、時間をかける価値は十分あります。

  

②栄養食事療法必携

栄養士会の大御所、中村丁次先生の書籍、『食事療法必携』です。こちらはその名前の通り、様々な疾患に対しての食事療法が解説されています。新卒で病院で働く学生は、まず一通り読むだけでも実践に役立つ知識が得られると思います。もちろん、就職したあとも曖昧なことがあれば振り返ります。定価は3400円+税と少し高めですが、ぼくはAmazonの中古で800円ぐらいで購入しました。

最大の特徴としては、疾患ごとに栄養基準、調理・献立のポイント、適した・適さない食品が記載されていることです。これらの情報は、一般的な臨床栄養の教科書には載っていないか、載っていても数行なのですが、本著には十分かつ具体的に載っています。個人的には、「何もわからな〜い!」という人は、とりあえずこれさえ読めば初めての疾患でも栄養指導に臨めると思っています。

弱点としては、疾患についての解説が明かに少なく本著だけでは病態理解は不十分(医学用語の解説も無し)、図解がないので(特に病態・解剖生理について)理解しにくい、情報がやや古い部分がある、です。

3つ目の情報については、 最新が第3版で発行されたのが2005年なので現在の考え方や基準と変わっている部分もあります。また、サルコペニアなど現在のトレンドは入っていません。最後の各種栄養素を多く含む主な食品の表も、当時の食品成分表から引用しているため、現在と変わっている部分もあると思います。残念ながらこれらは、新しい情報にアクセスして身につけなければいけません。


③栄養指導で使える知識をつける2冊

この2冊は、学生で購入するのは早いかもしれませんが、ヒマなときにパラパラめくって眺めたり、自炊するときやスーパーで買い物するときに読んで参考にすると、知らず知らずのうちに食品・食材の知識が身につくことでしょう。

個人的な意見ですが、栄養指導では食事アセスメントと情報提供が核となります。その両方を行うためには食品・食材のいろいろな知識が不可欠であり、管理栄養士のアイデンティティでもあるわけです。極端ですが、患者さんには「あなたにはこの栄養素が足りてないから、これをこのくらい食べないといけない」ということが最低限伝われば良いわけですからね。

■『腎臓病の食品早わかり』

栄養指導で大活躍するのが、女子栄養大出版の『腎臓病の食品早わかり』です。その名の通り、腎臓病で気をつけたい栄養素である、たんぱく質・塩分・カリウム・リンが、各食材ごとにすぐに分かるようになっています。写真付きなので、栄養指導でも本著を見せながら説明すると患者さんの理解も深まります(例えばサケ1切れにはどのくらいたんぱく質があるか)。また、たんぱく質については、「その食材何gがたんぱく質5g分に相当するか」も載っているので、腎臓病の献立を作成するときにも役立ちそうです。

主菜になるもの(魚、肉、卵など)、副菜になるもの(野菜、きのこなど)、果物、主食、乳製品、調味料をはじめ、基本的に普段口にするような食材・食品は載っています。また、菓子類や加工品・冷凍食品、外食メニューまで載っています。これらは、メーカーやお店によって若干の違いはあると思いますが、十分参考になると思いますし、外食・中食好きの患者さんには本著を見せながら話すと「こんなに塩分多いんだ」みたいにインパクトがあります。

栄養指導において、食品のたんぱく質量がパッと出てくるのはかなり強みになります。使用頻度が多い糖尿病交換表は、働き出せば次第に覚えていくので「どのくらいの食品でどのくらいのエネルギー量(カロリー)になるか」はだいたい分かります。しかし、卵とかならともかく、肉や魚のたんぱく質量まで覚えている人は比較的少ない印象です。腎臓病での栄養指導はもちろん、どのような症例でもサルコペニアやフレイルにも注意する重要性が叫ばれている中、「どのくらいのたんぱく質を摂れば良いか」を食品ベースで提案することが、管理栄養士には求められていくと思います。

ところで女子栄養大出版さんって、ほんとわかりやすい本出しますよね・・・

■『野菜と果物の品目ガイド』

こちらは栄養学の書籍ではなく、スーパーなど青果流通に携わる人向けの書籍です。店頭で野菜や果物を売るときのポイントとなる情報(例えば旬、鮮度の見分け方、保存方法、美味しい食べ方、下ごしらえのポイントなど)が、食材ごとに載っています。栄養指導だけではなく、献立や病態レシピを作成するときも活躍するでしょう。

保存方法など、栄養指導では直接使えないような情報もありますが、豆知識としてそういった情報提供ができると「さすが栄養士さん」と思ってもらえるかもです(あくまで想像ですが笑)。

野菜と果物の知識を高めたい方はぜひ購入してみてください。


背伸びして臨床栄養を先取りするなら

背伸びをして現場の臨床栄養を先取りするなら『レジデントノート 2018年11月号』がおすすめです。レジデントノートは本来、研修医の先生が主なターゲットの月刊誌です。その月によって、さまざまな特集が組まれています。2018年の11月号が「栄養療法 まずはここから!」という特集で、研修医の先生が栄養療法を学ぶ際の基本が詰まっています。

現場で働いて1年半ほどになるぼくからするとすでに知っている内容が多い(院生の頃に学会で勉強していたことも大きい)ですが、学部卒の新人管理栄養士さんだとおそらく本著に書いてあることもあまり知らないのではないかと思い、おすすめしました。

特に経腸栄養静脈栄養の実際については、ほとんど養成校の授業ではちゃんと習わないと思うので、現場に出て入院患者さんの栄養管理をするようになったときの大きなハードルの一つですが、そこの基本的な点や合併症についても抑えてあります。

研修医向けだからと構える必要はありません。図表もしっかり使われており、かなり分かりやすく説明されています。栄養学が重要と言われはじめ、栄養の知識を持った医師も増えています(特に若手や研修医)。栄養のスペシャリストは管理栄養士です。医師に負けないようしっかり勉強しましょう(もちろん就職後も)。

ちなみに、①で紹介した佐々木先生も本著の「データ栄養学のススメ」というセクションを執筆しています。


⑤意識高い人向け “英語で”勉強したい人は

ちょっと煽るような感じになりましたが、意識が高い人の中には「英語で勉強したい!」という人もいるでしょう。そんな人におすすめなのが『はじめての栄養英語』『はじめての臨床栄養英語』です。

本著のタイトルにもあるように、「はじめて」英語で栄養を勉強する人におすすめです。難しい文法はほとんど使われておらず、受験英語の下地があれば比較的読みやすいと思います。「大学受験で必死に英語を勉強したのに、入学後にユルい語学の授業しか受けていなくて英語を忘れちゃった!」という人のリハビリにも、もってこいです。

本著で勉強するメリットは、英語と栄養を同時に学べることです。本自体は薄めですが、図表が散りばめられていたり、解剖生理も図解されていて内容はしっかりしています。普通に(臨床)栄養の勉強になります。

専門用語は調べる必要がありますが、それが本著を読む目的の一つと言っても過言ではないです。愚直に単語を調べましょう。

また、大学院では英語論文を読むことが必須なため、進学を希望している人は本著で英語に対しての抵抗感をなくしておくと良いと思います。臨床栄養分野であれば医学論文を読むことになりますが、疾患の名称をはじめ医学的な内容を英語で読むことになるため、背景知識や単語の下地がないはじめのころは、特に論文を読むのに時間がかかります。2冊目は、そんなニーズに応える最適な書籍だと思います。臨床栄養分野の人には、特に2冊目を早い段階で読むことをおすすめします。


まとめ

できるだけどの分野でも役立つような書籍を紹介したつもりですが、やっぱり臨床栄養に片寄っちゃいましたね。どうかお許しを。

現場で働く管理栄養士さん向けに、レジデントノートについて追記します。現場で働きだすと疾患や病態の知識も必要となりますが、その勉強をするのは教科書よりもレジデントノートの方が良いかもしれません。理由は、レジデントノートの方が分かりやすかったり現場で困ることを想定した内容になっているからです。管理栄養士が、医師や医学生が読む教科書を読もうとしても、それでは専門的すぎることもあるので。通常の月刊誌は2000円なので、気になる内容のものをピンポイントで購入して勉強すると良いと思います。増刊号もおすすめですが、5000円とお高めなので、購入するのに少し気合が必要です。笑

今回紹介した書籍だけではなく全ての書籍で当てはまると思いますが、一通り読んで終わりではなく、忘れた頃にまた読み返すと定着度が高まると思います。

今回紹介した書籍はだいたいが3000円前後で、飲み会1回分になるかどうかの金額です。勉強は最高の自己投資と言われています。もし無駄な飲み会や買い物・出費をしているなら、それらを抑えて1冊の本を買ってみませんか?きっと、数年後の自分に返ってくると思います。時間のある学生時代に、ぜひ自己投資を!

本の紹介を文章で書くと少々分かりづらいのが歯痒いですが、著作権の面から写真を載せることは控えないとなので、ぜひ書店で手に取っていただければと思います。

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