私の緊張と緩和_01
「最近、近所に強盗が入ったんですって。まだ捕まってないみたいだから、あなたも気をつけなさい。」
私は今走りながら、朝に母が私に言った言葉を思い出していた。
駅を通り過ぎたあたりから、私の後ろを追いかけてくる気配がする。
怖くてたまらない。周りには誰もいないからだ。
残業で夜遅くまで仕事が長引いてしまった。車一台も通っていない。
一体どうしたことだろう。
恐怖はさらに大きくなっていく。
理由は、携帯の電源が切れたからだ。こんな日に限って、朝から電話の音が鳴りっぱなし、充電する暇すら無かったのだ。
足音はどんどん大きくなっていく。
私は怒った。
「なんで私を追いかけてくるのよ。追いかけてこないでよ。」
すると、追いかけてくる影の息遣いが近づいて聞こえてくる。
「はっ、はっ」
私の心臓の鼓動はどんどん大きくなっていく。
私は悲しくなった。
なんで私が襲われているのだろう。
私はこんなところで死んでしまうの?
その時、追いかけてくる影の手が私の肩を叩いた。
「よっ!娘よ。お前も残業か?父さんと一緒だな。は、は、は!」
後ろを振り向くと笑顔の父が、軽快な口調で私に話しかけていた。
私は思う。
「もー勘違いさせないでよ!」
父は目を丸くした。その様子を私は、苦笑いをしながら見ていた。
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