「学生街の殺人」を読んで

 東野さんの特徴が現れる一作なのかなと思いました。二つの事象が同時並行で起こり、複雑に絡み合い、合理的につじつまが合い、真実が露呈する。まさにこのフローをきれいに踏んだ一作でした。
 信じぬくことが出来ていれば起こることがなった殺人と言うのはやるせなく、殺した側も報われないものだと感じました。真実の底の底にある真実を、深ぼっていく非常にボリュームがあり、読みごたえがありました。
 印象に残っている言葉があります。簡略化したものになるのですが、「罪の償いが先行していたがそれがやがて喜びに変わる。生きがいを求めるのではなく、与えられた局面を生きがいに転化するという道もある。」というものです。どうしてこの言葉で留まったかは正確にはわかりません。転職を終えた僕にとっては、まぶしすぎる言葉だったのかもしれません。ずっと登場人物の生い立ちに合わせて反芻していました。こんな生き方自分にはできるだろうかと。

 「学生街」と言う場所で、年齢、職業を問わない登場人物で織りなされるストーリーはもちろん、密室やアリバイ工作と言ったサスペンス要素、そして隠された真実の重さなど非常に読み応え溢れる作品になっていますので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


https://higashinokeigo.net/detail/004.html

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