見出し画像

漢字は正確に書くべき?

最近Xの中国語学習界隈の人たちを見ていると、度々「中国語の漢字と日本語の漢字の微妙な違い」を指摘するポストを目にします。

例えば、日本語の「きょしゅ」のきょはどう書くかというと。

となります。一方で中国語はというと、簡体字(ju3)はこれ。

どうでしょうか。ビミョーに違いますよね。具体的に言うと下の作りが日本語のばあいは「手」になっていますが、一方で簡体字の場合は単に二本の横棒に縦一本と少々そっけない感じ。

このように中国語と日本語で同じ漢字でも、細部で書き方が違うものはたくさんあります。

では「これらの書き方を手書きでも完璧にマスターすべき」なのでしょうか。

このあたりは学習者の皆さんでも意見が分かれるでしょうが、私は「それほど気にしなくてもいい」というスタンスです。なぜか。「書いて相手に伝わる漢字ならそれでいい」からです。例えば先ほどの「挙」にしても、中国語の文章で「挙」という漢字を書いたとしても、ほぼすべての中国語ネイティブは「举」という文章だと理解してくれるでしょう。

実際私が高校生だった時の、中国語の師匠(漢文の先生でもある)も日本語の文章を書く際、「」という文字をいつも「」と書いていました。あれを見て、私も「ああ、そんなにこだわらなくてもいいんだな」と思いましたね。

もちろん、日本語の文章の中に中国語の簡体字の漢字(从とか为とか)をまぜるのは相手に伝わらない可能性が高いので控えた方がいいと思うのですが、誤差の範囲内の漢字ならそんなに神経質になることはないです。要は一番重要なのは「相手に自分の思いが正確に伝わること」なのですから。

◇◇

しかし、別のことで一点注意しなければならないことがあります。それは「別の漢字にとられかねないような書き方はしない」ということ。これは特に中国語の文章を書くときに注意すべきことですね。

具体的に言うと、漢字には一本横線があるかないか、1つ点があるかないかで全く別の漢字になってしまうケースが多々あるのです。具体例を出しましょう。簡体字で私が今とっさに思いつくのは以下の漢字でしょうか。

再(zai4)     冉(ran3)

用(yong4)  甩(shuai3)

要(yao4)    耍(shua3)

回(hui2)     叵(po3)

夕(xi1)       歹(dai3)

繁体字はもっとやっかいです。細部にわたって気を付ける必要があるからです。

傅(chuan3) 傳(fu4)

辦(ban4)辯(bian4)

瓣(ban4)辨(bian4)

鍾(zhong1)鐘(zhong1)

◇◇

自分自身は翻訳者でもあるため、このあたりの「漢字の違い」というのは特に神経質になりがちですね。一文字違うだけで全く違う意味になってしまうことが多いですので。特に中文のニュース記事を読むときは「どの字なのか」に留意して間違えないよう視認しています。

ただ一般人の皆さんの場合は、それほど気にしなくてもいいと思います。問題なのは中国語の文章を「書く時」でしょう。

特に先に挙げた「用」と「甩」の違いなどは、真ん中の縦棒が少し長くなっただけでも別の漢字としてとらえられかねないものであり、神経質にならざるを得ません。

私自身は留学中、このような「変な漢字」に興味津々でした。授業の時間の合間を見つけて新華字典を開いて、「どの漢字と漢字がどう似ているのか」「どう違うのか」というのをつぶさに見て、新たな発見をするたびに漢字の奥深さに感心したものです。

それに加えて現職になってから、仕事の都合上中文のニュース記事を多く目にする中で、漢字の少しの違いにも「疑問」を持つようになりました。皆さんも「この漢字はこうであるはず」という固定観念をもたずに、「あれ?!」と思った字に遭遇した時は是非めんどくさがらずに中国語の字典(辞典よりも字典がいいと思います)を開いて見て、確かめてみることをお勧めします。





サポートしていただければ、よりやる気が出ます。よろしくお願いします。