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カーフェリーで佐渡へ向かう #2

カーフェリに初めて乗ったのは2009年ニュージーランド。フェリーに乗ったこともなかったのにハイエースを乗せて渡る時は本当にドキドキした。それからは何度も新日本海フェリーを利用しているが、この佐渡汽船はローカル社風が非常に強い。
山の下埠頭とは違う小さな埠頭で、小さなラインに車を並べてすぐに出発した。飛行機も船の出発時のドキドキが大好きだ、新しい世界に行く気分になる。

おけさ丸


確かに小さい


往路はおけさ丸3代目。初代は昭和7年から米軍に襲撃を受けるまで運航していた。
予想通りバブリーな船内。

フェリーからの絶景

妙高山

この日は朝からキリッとした青空の日で信越の山々が午後までクリアに見える珍しい日だった。
船よりも景色が気になってしょうがない。ほとんどの時間をデッキで過ごした。

新潟港側には飯豊連峰、朝日連峰、越後の山々、米山、妙高山が見える。実際はもっと見えている、全部が白いラインで繋がっていた。

錯覚する佐渡島

2時間半かかるはずなのに、1時間ほど経つと左手に島が見える。どんどん近づいてくる,,,,「ナニコノシマ…?」
これは完全に太宰治に同感だ。ほとんど建物も見えない里山島がずっと左手に続く。「ああ佐渡島っぽい。なんでもう着くの」大混乱した。
しばらくすると前方からうっすらと巨大な大陸がみえてくる。しかも3月末にしてまだ雪山の連峰が見えてきたのだから驚きだった。

ひょいと前方の薄暗い海面をすかし眺めて、私は愕然がくぜんとした。実に、意外な発見をしたのだ。誇張では無く、恐怖の感をさえ覚えた。ぞっとしたのである。汽船の真直ぐに進み行く方向、はるか前方に、幽かすかに蒼あおく、大陸の影が見える。ー 満洲ではないかと思った。まさか、と直ぐに打ち消した。私の混乱は、クライマックスに達した。日本の内地ではないかと思った。それでは方角があべこべだ。朝鮮。まさか、とあわてて打ち消した。滅茶滅茶になった。能登半島。ー 私は、うんざりした。あの大陸が佐渡なのだ。大きすぎる。北海道とそんなに違わんじゃないかと思った。台湾とは、どうかしら等と真面目に考えた。あの大陸の影が佐渡だとすると、私の今迄の苦心の観察は全然まちがいだったというわけになる。あの雲煙模糊もこの大陸が佐渡だとすると、到着までには、まだ相当の間がある。

太宰治「佐渡」

ARナビアプリをかざして、間違いなくそれが佐渡だとわかった。左手にあるのも佐渡(小佐渡)だ。両津港は8の字のくびれ部分にあるのだ。
雪をかぶった連峰は私が縦走しようとしている大佐渡の山々だった。

山の標高は大したことはない、ほとんどは1000m以下で、最高峰の金北山は1171m、1000mを超える山なんて3つほどしかない。しかし海から見上げる雪山連峰は絶景だった。山頂から裾までの距離もないので、雪山が生えている感じだ。

がっかり両津港

車に乗り込んで両津港に到着した。いつもの流れでは、車を港のフェリーの前に停めて写真を撮りたい。ところがどこをぐるぐる回っても停めるところがない。
両津港に到着した人は、フェリー乗り場が1番の観光案内所で、いろんな情報やパンフレットをそこで手に入れる。
車で降り立ってしまうと、その機会さえ失うのだ。

15時に着いた。お腹がすいていたが、両津港周りを見回してすぐに察した。田舎に共通する【営業してない時間帯】なのだ。ホテルに向かう途中のローカルスーパーで惣菜を買って食べた。売り物を見ると野菜も雑貨も本島と変わらないが、惣菜だけはやたら高いと思った。佐渡の人件費は高いらしい。

ホテルの窓からも大佐渡の雪山が見えた。本島にいると高山からの裾山が奥深くて、かなり離れないとアルプスを一望することはできない。佐渡はあっさりしていた、港からも田んぼのど真ん中からも町からもいつも金北山が見えた。