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Case1:マジャリング・ホロ

 孤児院からかどわかされたホロは全裸に剥かれ、大の字で暗緑色のベッドに寝かされていた。手首足首には黒いゴム製のベルトが巻かれ、少女を磔の状態で固定している。

 ホロが連れ去られた先は辺境の地下深くに作られた実験施設で、入り口は自然に紛れる魔術と特異な技術によって隠蔽され、見つけることは叶わない。

「ん…………んんっ…………」

 ホロが苦しげに眉根を寄せて小さく呻いた。まつ毛に縁どられた目蓋が震え、薄く開く。

「んぅ……」

 目の焦点は定まっておらず、意識は朦朧としている。視界は白くぼやけて何も見えない。寝そべったベッドに括りつけられたままぼうっとした表情をさらすホロの前、白い両開きのドアがブシュッと音を立てて左右に開いた。

「ふあ、あ……?」

 圧縮空気の排出音を聞きとめ、ホロは水底から引き上げられるように目を覚ました。直後、天井に灯った眩い光に思わず目を逸らす。その時、首の動きに連動して肩が腕を引っ張り、腕が手枷に括られた手首を引いた。

「えっ……!?」

 腕を伝うガチリとした圧迫感にホロは目を見開き、そちらの方を見た。拘束された腕。反射的に起き上がろうとした彼女は、頭だけを持ち上げた格好で自分の裸体を視認し、カッと顔を赤らめる。

「え、え……? なに、これ……!?」

 ホロは困惑してバタバタと暴れるが、ベルトは手足をつかんで離さない。秘所を隠すこともままならず目を白黒させるホロの視界に、横から黒い影が入り込んだ。

「あら、ようやくお目覚め? お寝坊さんなのね」

「……!?」

 ホロの顔を覗き込むのは、緋色の髪を長く伸ばした妖艶な女であった。目を妖しく微笑ませており、紅を差した唇は瑞々しい。白衣を下から胸や腰が押し上げ、蠱惑的なプロポーションを隠しもしない。

 どきりと心臓を跳ねさせたホロは、上擦った声で問いかける。

「だ、誰……!?」

「自己紹介がまだだったわね」

 女は肌色の黒い光沢のある手袋を着けた手でホロの頬に触れる。嬲るように撫でられ、ホロは顔をそむけた。だが女の手はピタリと張りつき不躾に頬の愛撫を続ける。ホロは嫌悪の声を上げた。

「い、いやっ……!」

「あらあら、嫌われたわねえ」

 女は手をホロの頬から喉に滑らせ、下顎をつかんで自分に向かせた。ホロの顔は羞恥と恐怖、嫌悪がないまぜになった顔で頬を赤くさせたり青くさせたりしている。女は嗜虐的な笑みを浮かべて名乗る。

「私はエミル・ラージャ。今日からあなたのご主人さまで、ここが今日からあなたの家よ」

 ホロの背筋を悪寒が這いあがる。固まり、思わず息も止めてしまったホロの両目を興味深そうに観察したエミルは、ホロの顎から手を離した。

「で、も。一個だけ教えてくれたらすぐにでもここから出ていけるわ。あなたはしばらく、ここにいるのは嫌がるでしょうし。ああ、裸なのは気にしなくていいわ。あなたと私しかいないし、服も返すか仕立ててあげるから」

 ホロはくしゃっと顔を歪め、首を振りながら体を揺すり始めた。心臓を握った手を徐々に締め上げられていくような不安に襲われ、声も出せないまま涙目でもがく。エミルはホロの股に手を伸ばし、陰核をちょんと突いた。

「ひゃんっ!?」

「暴れないの」

 跳ね上がったホロの腹を手でベッドに押さえつけ、エミルはホロに顔を寄せた。キスできそうな距離で目を見つめられたホロは蛇に睨まれた蛙めいて凍り付く。香水の甘ったるい匂いが、全身にぞわっと痒みを呼び起こす。

「聞きたいのはひとつだけ。それだけ応えてくれたら帰してあげる。簡単でしょう?」

「…………な、なに…………?」

 秘部をつつかれた衝撃を加えられ、震えた声で返すホロ。恐怖と不安に揺らぐ瞳を楽しげに見つめると、エミルは言った。

「死と迷いの森の奥に隠された秘密の神殿。その場所が知りたいの。あの魔女が後生大事に隠してた神殿の在り処……あなたなら知ってるでしょう?」

 ホロは喉に空気が詰まるのを感じた。死と迷いの森は、ホロが育ての親たる魔女と暮らしていた場所だ。脳裏に老婆の優しい笑顔が浮かぶと同時、ホロはエミルをキッと睨みつけた。

「し、知らない……! 知らないから、放して……!」

「そう」

 エミルはつまらなそうに鼻を鳴らすと、ホロから顔を離す。そのままホロに背を向け、そこにあった機械のキーボードを叩き始めた。無言の数秒が続いたのち、ホロは手足を揺さぶりながら訴える。

「ねえ、放して! 答えたでしょ!? うちに帰して!」

「だーめ」

 エミルはホロに背を向けたまま、おどけたように肩を竦めた。

「嘘言ったって駄目よ? 私があなたのこと、どれだけ念入りに調べたと思ってるの。教えてくれないなら、今日からここがあなたのおうち。教えてくれるまで、あなたは私のモルモット。それとも、妹がいいかしら?」

 最後のキーをリズミカルに叩くと、ホロが磔にされたベッドが不気味な駆動音を上げた。ゴム製の枕越しに聞こえてくる重低音に、ホロは体をこわばらせる。

「な、なに……? なにをするの……!?」

「さっき言ったでしょう? あなたに素敵な服を仕立ててあげる。まずは採寸と感度のチェックね。ま、生娘の身体なんてたかが知れてるけど、一応ね」

 次の瞬間、ホロの首と両脇、両腰、両腿と両ふくらはぎの左右に穴が開いた。ベッドに開いたそこから飛び出したのは、機械の触手だ。蛇のようにのたくりながら先端から桃色の光を放ち、ホロの全身を舐めるように照らす。

 あられもない姿を得体のしれない機械に眺めまわされたホロは嫌々と首を振って悲鳴を上げた。

「いやあああああっ! やだっ、見ないで! 見ないでよぉっ!」

 羞恥のあまり泣き叫ぶホロを無視し、エミルはキーボードの上に出た文字列やホロの身体の簡易図をつぶさに見つめる。

「事前検査通りの健康体。お肌にも異常なし。発汗も想定の範囲内、と。採寸よし。それじゃあ感度の確認に移りましょうか。ホロちゃんはどこが弱いのかなぁ……?」

 笑みの形に唇を歪めたエミルがキーを押して触手たちに次の命令を下す。ホロの両脇付近から突き出た機械の触手が、ホロの両乳首に先端を押し当て桃色の電光を弾けさせた。

「っっっあぁぁぁっ!」

 ビクンと背をのけ反らせるホロ。触手は膨らみかけた乳房の先端に吸いつき、電光を断続的に光らせた。乳首が破裂するような感触を何度も流し込まれたホロは絹を裂くように叫ぶ。

「やだ、やだああああああああっ! 気持ち悪い! やめてぇぇぇっ!」

 甲高い声を上げたホロは、胸を右に左に反らして触手から逃れようとする。だが触手はその動きに追随し、執拗に乳首を攻めたてた。やがて胸を解放され、ベッドに沈み込んだホロの両腰左右から伸びた触手が、ホロの大陰唇を左右から挟み込み桃色の電流を流し込んだ。ホロが思い切りのけ反る。

「ひぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!?」

 ホロは暗緑色のシーツを握りしめ、激しく首を振る。陰核の芯に電気を流される衝撃と、胸の奥から首を伝って頬を焼きにかかる溶岩じみた羞恥。悶え苦しむホロの絶叫を気にもせず、エミルは画面を見る目を丸くした。

「いやぁぁぁあ! いやぁぁぁあああああああああっ!」

「あら……この歳にしては敏感すぎず、鈍すぎず。開発し甲斐のあるイイ躰だわぁ……。今はまだ初体験と恥ずかしさから来てるみたいだけど、この分ならじっくり調教して……」

 ぶつぶつ呟くエミルの背後で、機械触手が挟んでいたホロの秘部を放した。今度こそ背中からベッドに沈み込んだホロは閉じた目蓋の隙間から涙をにじませ、息も絶え絶えになりながら言う。

「はぁ、はぁっ…………。もうやめて……ゆるしてぇ……」

「じゃああなたの秘密、教えてくれる?」

 首だけでホロを振り返るエミル。ホロは幼い顔を沈痛に歪め、葛藤している。震える唇の間から食いしばった歯を覗かせる幼女に、エミルは凄絶な表情を作って己の機械に向き直った。

「はい、時間切れー。次は耳とうなじに行って見ましょう」

「待っ……!」

 ホロが制止するより速く、機械触手がホロの耳穴とうなじに触れて稲妻を発した。ビババババババババババという超自然の音色がホロの鼓膜を蹂躙し、うなじから痺れが後頭部へ突き抜ける。

「ふああああああああああああっ!」

「言う事聞かない子にはお仕置きしないとね。この際だし、気になるところ一気に全部調べちゃいましょうか。ちょっとショックかもしれないけど、頑張って耐えてちょうだいね?」

 エミルは既に聞こえぬと知りながらも言い放ち、キーボードを叩く。ホロの両脇、へそ、蟻の門渡り、肛門、内腿に触手が先端を押し付け、快楽電流をねじ込み始めた。

「ああああああっ! はあっ、あぁっ! あぁあぁあぁあぁあぁ!」

 胸をよじり、腰をくねらせ、もがきながら喘ぎ声を絞り出されるホロ。肌をなぶられる不快感、穴に指を差し込まれるような被侵入感が全身を蝕んでいく。頭の中をかき乱されたホロは悲痛な悲鳴を絞り出す。

 エミルはその様子を肩越しに見ながら、キーのひとつを指先で焦らすように撫でまわす。ホロの背中はぐっと反り、半開きになった口は下顎をがくがくと震わせながら涙めいてよだれを流す。エミルはキーを押した。

「っはあっ! あっ……」

 全身の触手が離れ、ホロはシーツに沈み込んだ。ひゅうひゅうと苦しげな息を吐きながら目を閉じた少女の顔を、エミルは観察するように覗き込む。

「うーん……イジワルし過ぎちゃったかしら?」

 ショックで失神したホロの頬を涙が伝う。指先でそれをすくって舐めとると、エミルは笑った。

「でも採寸程度で気を失ってたんじゃ保たないわよ? ま、どうせ最後は私好みにするんだけどね……」

生活費です(切実)