【毎週ショートショート】Shape of love
【デジタルバレンタイン】のお題で、【SFチックな】ショートショート
ケビンが朝大通りを歩いていると、交差点沿いの洋菓子店が突如ブツリと消滅した。散歩から家に戻ってサンディにそれを話すと、彼女は淡々と述べた。
「政府が前に言ってたやつ。容量の削減の為、ですってね」
「仮想空間に必要なのは風味だけ。余計な形は要らないって事か……この街の形も、俺らの形もいつか無くなるのかな」
「そうかもね」彼女は寂しく笑う。
ケビン、とサンディは手を差し伸べる。と同時に彼女から7MBのデータが送られてきた。
「本当はケーキを贈りたかったのだけど、もうその形は世界から無くなってしまったから。でも私は日頃の感謝を貴方に手渡したい。こういうのは……形が無くなっても変わらないんだと思う」
彼女は微笑む。
「受け取ってもらえる?」
ケビンは頷き、彼女の手を握る。暖かい、というデータが彼に流れ込んだ。
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