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読書日記:ヴォート基礎生化学

高校の理系生物の代謝を教えるために勉強中です。

一応、Ⅰ.生化学の基礎は一通り、Ⅲ.酵素、Ⅳ.代謝を半分ぐらい、読んだ感想です。

生化学と分子生物学の違いがやっとわかった

なんとなく生化学が化学物質に興味があり、分子生物学が生物のしくみに興味がある、ぐらいの認識はしていましたが、結局生化学の勉強はきちんとしてきませんでした。(分子生物学はEssential細胞生物学やThe Cellを1/3ぐらいは読みました)

実際にヴォートを読んでみると、生化学では生命現象という神秘のベールを化学反応で解き明かそうと言う視点を感じました。異化代謝における化学反応1つとっても、反応前後の物質を特定することはもちろん、反応を触媒する酵素は何か、酵素の立体構造のどこで化学反応が起こるか(構造生物学の重要性が初めてわかった)、ギブスエネルギーの観点から反応は自発的に起こり得るものなのか、といった事柄について説明され、生物内での反応も化学反応の一つに過ぎないのだということを実感します。

生命は精巧なしくみでエネルギー変換している。しかし、それで生命活動をすべてまかなえるのは信じがたい。

主に代謝の勉強をしているからでしょうが、生命におけるエネルギーの変換は信じがたいほど精巧なプロセスを経由していることを知りました。

異化代謝においては取り入れた化学エネルギーを少しずつ放出して利用しやすいエネルギーに変えていきます。グルコースが二酸化炭素に完全に酸化されるまで全部で30以上の物質が経由されますが、これらの中間物質が(酵素の助けも借りながら)自発的に起こる反応で繋がれていることに自然の構成美を感じますし、そのうちのいくつかの反応については逆走もできるような微妙なバランスと調整システムが搭載されています。

こんな異化代謝という(重要で中心的ではあるが)1つだけのシステムを取り出しても、化学反応の法則に従うという強い制約の基で、こんなに精密なしくみがあることにまず驚く。それと同じ制約に従うしくみが他のすべての生命活動にもあるということは信じがたい。


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