手に生姜の匂いがついて夏

スーパーで生姜を買った。
薬味が好きで、チューブのものでは満足が行かないので面倒と分かっていながら買った。

近所のスーパーはレジ袋が有料化されてしまったためエコバッグを持参するが、旅先の記念に買ったそれは少しの野菜と少しのタンパク質でパンパンになり、工夫して詰めてくれる店員さんを毎回ひやひやと見守るはめになる。
生姜はエコバッグの隅にコロンと転がって入る。

そうめん、豆腐と夏らしい料理に似合う生姜は料理の度少しずつ欠けていく。
今日はピーマンの肉詰めのために少しすり下ろした。
いつか理科の教科書で見たアメーバのような形だった生姜は今では四肢をもがれすっかり生気を失った。

東京で働き始めて6年、在宅勤務になるまでろくに料理をしてこなかったので最近気づいた。
生姜の匂いは料理を食べ終わったあとも手に長く残る。

外にも出かけられない今年は生姜の匂いが夏の記憶になる。

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